マルス(読み)まるす(その他表記)Mars

翻訳|Mars

デジタル大辞泉 「マルス」の意味・読み・例文・類語

マルス(Mars)

ローマ神話で、戦いの神。ローマの建国者ロムルスレムスの父。ギリシャ神話アレスと同一視された。
火星のこと。マース

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精選版 日本国語大辞典 「マルス」の意味・読み・例文・類語

マルス

  1. ( [ラテン語] Mars )
  2. [ 一 ] ローマ神話の軍神ユピテル・クイリヌスとともに国家の三主神を形成し、ロムルス・レムスの父といわれる。ギリシア神話のアレスにあたる。マース。〔随筆林雑話(1799)〕
  3. [ 二 ] 火星。マース。〔紅毛雑話(1787)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルス」の意味・わかりやすい解説

マルス
まるす
Mars

古代ローマの古い軍神で、のちギリシア神話のアレスと同一視された。また、のちには火星のヨーロッパ名ともなった。ラティニィ人の間では古くはマウォルスMavorsといわれ、オスク人やサビニ人の間ではマメルスMamersとよばれた。マルスをめぐる古い伝説としては、オウィディウスの伝えるアンナ・ペレンナ祭の起源譚(たん)しか残されておらず、マルスとウェヌスの恋など多くの話はアレスに関するギリシア神話に基づく。

 軍神としてのマルスの崇拝は古く、ヌマ王によって設けられたその神官団サリイは、ローマ人に戦(いくさ)の時期の始まりと終わりを告げるため、毎年3月と10月に武装して踊り歩いた。また10月15日には「マルスの馬場(カンプス・マルテイウス)」で二頭立ての戦車競技が行われ、勝者の馬が彼に捧(ささ)げられた。そのほか2月と3月に戦車競技Equirriaが、3月にラッパ祭Tubilustriumが、10月に武具の祭りArmilustriumがそれぞれマルスをたたえて行われた。マルスはまたその戦闘力によって土地の保護者ともなった。農業をつかさどる神官団アルウァレスは、「荒ぶる神マルス」に祈願して害敵侵入に備えたのである。狼(おおかみ)がマルスの聖獣であることから、この神は狼に養われたふたごロムルスとレムスの父とみなされた。そしてロムルスの建国伝説の発展とともに、軍神はアウグストゥス時代においてローマ人の祖先として崇拝されるに至った。これは、同じくローマ建国の祖アエネアスの母ウェヌスが、その時代に国の重要な神になったことと並行している。

[小川正広]

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改訂新版 世界大百科事典 「マルス」の意味・わかりやすい解説

マルス
Mars

古代ローマの軍神。ギリシア神話のアレスと同一視された。ローマの旧暦ではのちの第3月が正月であったが,古人はこれをマルスに献じてマルティウスMartius月と呼んだ。英語のMarchなど,近代西欧語の3月名はここからきている。彼はユピテルに次ぐ国家の守護神としてあつく崇められ,開戦の際には,将軍がフォルムのレギア王宮)で彼の聖なる槍を振り,〈マルスよ,起きよ〉と叫ぶならわしであった。祭儀は,古代人の軍事行動の開始期の3月とその終止期の10月に集中しており,戦車競走,ラッパの祭,武具の潔めの祭などが行われた。また彼の神殿は,アウグストゥス帝が義父カエサルの暗殺の復讐を記念してみずからのフォルム内に造営したマルス・ウルトルMars Ultor(ウルトルは〈復讐者〉の意)のそれが,ローマの最も壮麗な神殿のひとつに数えられた。神話では,ローマの建国者ロムルスとその双生の兄弟レムスの父とされ,狼が聖獣,キツツキが聖鳥であった。
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百科事典マイペディア 「マルス」の意味・わかりやすい解説

マルス

ローマ神話の軍神。ギリシアのアレスと同一視される。ローマでは現在の3月(マルスの月=マルティウスMartius。英語Marchなどの語源)と10月に祭礼が行われ,農業の神ともされていたらしい。また,ロムルスとレムスの父とされ,聖獣はオオカミ,聖鳥はキツツキ。
→関連項目ベロナ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マルス」の意味・わかりやすい解説

マルス
Mars

ギリシア神話のアレスと同一視された古代ローマの軍神。ユピテル,クイリヌスとともに大フラメンの祭祀を受け,元来は三大主神格の一つであったと思われる。ローマ初代の王ロムルスとその双子の兄弟レムスは,マルスが,ウェスタの巫女にされていたアルバ・ロンガヌミトル王の娘レア・シルウィアと交わってもうけた子であったとされている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「マルス」の解説

マルス
Mars

ローマ神話の神。ギリシア神話のアレスにあたる。伝説では,ローマ建国の英雄ロムルスの父親で,戦争,農牧,予言をつかさどる。暦の3月(March)はこの神の名から出ている。

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旺文社世界史事典 三訂版 「マルス」の解説

マルス
Mars

ローマ神話の神
ギリシア神話のアレスと同一視される。軍神,農業・牧畜の神。ローマの暦はマルスの月(マルティウス=3月)から始まる。

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デジタル大辞泉プラス 「マルス」の解説

マルス

ジャパンラグビートップリーグに参加するラグビーチーム、NECグリーンロケッツの公式マスコット。ロケットがモチーフ。

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世界大百科事典(旧版)内のマルスの言及

【惑星】より

…このほか,マリナー9号は火星の二つの月,フォボスとデイモスを撮影,フォボスはいびつで凸凹な形をしており,一方,デイモスは比較的滑らかで丸い形をしていることがわかった。 マリナー9号とほぼ同じころ,ソ連はマルス2,3号の二つの探査機を火星に送った(Marsは火星の意)。両探査機とも火星周回部分と火星表面への着陸体からなっており,両周回探査機からはデータが送られてきたが,マルス2号の着陸探査機は通信途絶,マルス3号の着陸体は初めて火星表面に到達したもののテレビ画像は送られてこなかった。…

【アレス】より

…アテナイの最高法廷アレオパゴス(アレイオス・パゴス,〈アレスの丘〉の意)の名は,かつて彼がここで裁きを受けたことに由来するという。ローマ人は彼らの軍神マルスをアレスと同一視した。【水谷 智洋】。…

【雄】より

…しかし,進化の立場からみると,雄と雌の有性生殖によって遺伝子の組換えをおこし,さまざまな環境の変化に適応しうる多様な子孫をうみだすという意味で,雄はなくてはならない存在だといえる。C.vonリンネは,雄の生物学的記号として♂を採用したが,これは,占星術でローマの軍神マルスと結びつけられる火星のシンボルを転用したものである。【島田 義也】。…

【火星】より

…軌道半長径=1.52369天文単位離心率=0.0934 軌道傾斜=1゜.850太陽からの距離 最小=2.067×108km,平均=2.279×108km,最大=2.492×108km公転周期=686.98日 平均軌道速度=24.08km/s会合周期=779.9日 赤道半径=3397km体積=0.1506(地球=1) 質量=0.10745(地球=1)平均密度=3.93g/cm3自転周期=1.0260日 赤道傾斜角=25゜.19アルベド=0.16 極大光度=-2.8等赤道重力=0.38(地球=1) 脱出速度=5.02km/s火星は,そのやや不気味な赤色のゆえに,昔から戦いの神マルスの名を冠せられてきた。中国では,やはりその色から人心を惑わす星という意味で熒惑(けいわく∥けいこく)と呼んでいる。…

【ローマ神話】より

…しかし宗教性の点や,万物は神々による支配に服しているという洞察まで達した唯一の叡知を有する点では,すべての民族にまさる〉とあるように,ローマにも早くより独自の神崇拝が存在した。古くはユピテル,マルス,クイリヌスが三位一体をなして篤くまつられた。ユピテルは語源をギリシアのゼウスと等しくするインド・ゲルマン起源の天空神で,本来,日の明るさと気象とをつかさどる。…

※「マルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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