非楽音(鉄道の音、人の話し声、動物の鳴き声、自然界の音など)を録音し、機械的、電気的な処理を加えて変質、重複して構成された音楽。具体音楽と訳される。イタリア未来派のルイジ・ルッソロの騒音楽器やフランスのサティのタイプライター(『パラード』)、バレーズのサイレン(『イオニザシオン』)など、第二次世界大戦前にも試みられていたが、本格的な実践は1948年、ピエール・シェフェールのラジオ放送「騒音コンサート」が最初で、このときには『鉄道のエチュード』などが演奏された。
彼と並ぶ代表者ピエール・アンリは『一人の男のための交響曲』(シェフェールとの共作、1949~50)や『平均律マイクロフォン』(1950~51)などをつくった。シェフェールとアンリとの共作オペラ『オルフェ53』(1953)、バレーズの『砂漠』がこの分野を完成したといえる。ブーレーズ、クセナキス、ベリオ、黛敏郎(まゆずみとしろう)、柴田南雄(しばたみなお)、武満徹(たけみつとおる)らがさらに実験的作品を発表したが、シュトックハウゼンの電子音と少年の歌声の混成作品『少年の歌』(1955~56)以降、純然たるジャンルとしてのミュージック・コンクレートは定めがたくなり、電子音楽や従来の器楽音楽との融合のなかで生きているといえる。
[細川周平]
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