メチルバイオレット

デジタル大辞泉 「メチルバイオレット」の意味・読み・例文・類語

メチルバイオレット(〈ドイツ〉Methylviolett)

紫色塩基性染料の一。結晶光沢のある緑色。水・エチルアルコールに溶け、紫色となる。繊維のほか紙・皮革木材などの染色や、インク・タイプライターリボンなどに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「メチルバイオレット」の意味・読み・例文・類語

メチル‐バイオレット

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] methyl violet ) 塩基性紫色染料。化学式は C24H28ClN3 金属光沢をもつ緑色塊状で、水に溶けやすい。日光に弱いが、鮮明で安価なので多量に使用される。繊維、紙、皮革、木材などの染色のほか、インク、レーキ顔料化学実験指示薬とされる。
    1. [初出の実例]「濡らして冬の日に出して置いただけで、乾く迄に褪めてしまう様な紫粉(メチルバイオレット)や青竹(マラカイトグリーン)などが」(出典:最新実用衣服と整容法(1928)〈青木良吉〉)

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化学辞典 第2版 「メチルバイオレット」の解説

メチルバイオレット
メチルバイオレット
Methyl Violet

パラローザニリン塩酸塩N位が多メチル化されたカチオン性の紫色染料.五メチル置換体が主成分で,四および六メチル置換体がまじる.】五メチル置換体:C24H28N3(358.5).塩化物と塩酸塩の混合物として得られる.青紫色の粉末.分解点137 ℃.水,エタノールに可溶.酸塩基指示薬(pH 0.1~2.0).0.2 mol L-1 HFに溶かした0.1% 溶液は,As,Cr,Aumax 600 nm,ε 115000,トリクロロエチレン中),I,Hg,Re,Tl,Ta(λmax 605 nm,ε 75000,ベンゼン)の抽出-光学的定量に用いられる.【】六メチル置換体塩化物:C25H30ClN3(407.99).C.I.Basic Violet 3,メチルバイオレット10Bともいう.N,N-ジメチルアニリンホスゲンとを加熱して合成する.緑紫色の粉末.分解点215 ℃.水,エタノール,クロロホルムに可溶.中和指示薬,各種金属や過酸化水素の光学定量,生体染色木綿のタンニン媒染,羊毛,絹用塩基性染料に用いられる.遮光した気密容器に保存する.

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改訂新版 世界大百科事典 「メチルバイオレット」の意味・わかりやすい解説

メチルバイオレット
methyl violet



トリフェニルメタン系塩基性染料で,美麗な紫色を呈する。フェノール,ジメチルアニリン,硫酸銅食塩,水の混合物を空気を通じながら反応させて製造する。水,エチルアルコールに溶解して紫色を呈する。塩基性染料の特色で,色は美麗・濃色であるが,耐光堅牢度が著しく低い。印刷インキ,筆記用インキ,タイプライターリボン,紙,皮,雑貨の染色,酸塩基指示薬や金属(タンタル,亜鉛)の検出に用いられるほか,レーキ顔料の原料など繊維染色以外の各種用途が大きい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「メチルバイオレット」の意味・わかりやすい解説

メチルバイオレット
めちるばいおれっと
methyl violet

ジメチルアニリンを酸化して得られる紫赤―紫青色の塩基性染料。メチル基の数の異なる成分の混合物である。メチル基の数により色調が異なるため、酸化の条件により成分組成が異なり、色調が異なる。成分にはメチル基のないパラローザニリン(赤)から6個のメチル基をもつクリスタルバイオレット(紫青)まである。

[飛田満彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メチルバイオレット」の意味・わかりやすい解説

メチルバイオレット
methyl violet

青紫色のトリフェニルメタン系塩基性染料の一種。鮮明な色調を有し,少量で濃色に染まるのが特徴。ジメチルアニリン,フェノール,硫酸銅,塩化ナトリウム,少量の水の混合物を加熱し,空気を通じて,酸化縮合させる特殊な合成法で作る。濃色で美しく,かつ安価なため,多量に使われる。木綿,レーヨン,スフ,絹,紙,雑貨の染色,インキ,顔料,クレヨン,タイプリボンの製造にも使われる。

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百科事典マイペディア 「メチルバイオレット」の意味・わかりやすい解説

メチルバイオレット

パラローザニリン系の塩基性染料。結晶は光輝ある緑色塊状。水,アルコールに溶け紫色を示す。絹の紫染のほか,インキ,鉛筆,タイプライターリボンなど雑貨の着色に用途が広い。N,N-ジメチルアニリンなどから合成。(図)

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