水素イオン濃度の変化に従い変色する弱酸または弱塩基の有機色素をいう。中和指示薬、水素イオン濃度指示薬、pH指示薬ともいう。デンマークのセーレンセンSøren Peter Lauritz Sørensen(1868―1939)によって初めて組織的に研究され、指示薬のあるものにセーレンセン指示薬の名が残されている。
[成澤芳男]
非解離型と解離型またはプロトン付加型の構造が異なるために可視光の光吸収特性が異なり、水溶液中の水素イオン濃度の違いにより異なる色を呈する。指示薬には非解離型の酸(HIn)と解離型(In-)の間で示す平衡
HInH++In-
の酸性指示薬と、非解離型の塩基(In)とプロトン付加型(HIn+)の間で示す平衡
In+H+HIn+
の塩基性指示薬がある。フェノールフタレイン、チモールブルーなどは前者に属し、メチルオレンジ、メチルレッドなどが後者に属する。 にはフェノールフタレインの酸解離平衡とメチルオレンジのプロトン付加の平衡を示す。
通常、指示薬は酸性指示薬であれば非解離型の酸から解離型へ、また塩基性指示薬であれば非解離型の塩基からプロトン付加型へ、あるいはそれぞれその逆へと構造が迅速に変化するので、変色も迅速におこる。しかし指示薬は溶液の酸性度が減少するにしたがって、酸性色から、酸性色とアルカリ性色の混合した領域を経てアルカリ性色に変化したり、その逆に溶液の酸性度が増加するにしたがって、アルカリ性色から酸性色に変化するので、指示薬が変色するpHに指示薬特有のpH領域がある。この領域を変色域という。
指示薬が示す強い特有の色は、溶液中の化学種がとる共鳴構造中に存在する発色団によると考えられている。発色団としてはアゾベンゼン型、キノイド型などがある。
いずれの場合もπ(パイ)電子による新しい共役系が生じるために光吸収の波長がより長波長側に移り変色する。なおフェノールフタレインは白色固体でアルコールに溶かして使用するが、指示薬としてはまれな例で無色の溶液となる。これは、中性および酸性における非解離型がその構造中に発色団をもたないためで、解離型はキノイド型構造をとり、この構造は隣のベンゼン環との間で共鳴構造をとるため赤色を示す。これは一色性指示薬の例である。メチルオレンジは非解離型の塩基はアゾ基(-N=N-)を有し、プロトン付加型はキノイド型構造を有するので、いずれも有色である。
[成澤芳男]
『日本化学会編『楽しい化学の実験室』(1993・東京化学同人)』▽『日本分析化学会編『定量分析』(1994・朝倉書店)』
pH指示薬,水素イオン指示薬,中和指示薬ともいう.水溶液中の pH の変化によって変色する試薬.試薬自身が弱酸あるいは弱塩基である.ルイス酸の形のものを酸性指示薬といい,フェノールフタレイン,チモールブルーなどがある.ルイス塩基の形のものを塩基性指示薬といい,メチルオレンジ,メチルレッドなどが属する.約200種類あるが主要なものを次に示す.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかしこれはむしろ例外であって,一般には反応がどこまで進行したかは外見上わかりにくい。そこで反応に伴う溶液のpHとか酸化還元電位といった適当な物理的性質の変化を装置を用いて測定すればよいのであるが,指示薬の色の変化などから知る方法は比較的簡単でもあり,酸塩基指示薬をはじめ多くの指示薬が古くからよく利用されている。 酸塩基指示薬のp‐ニトロフェノールを例にとると,アルカリ性溶液中では黄色の化学種(I-と略記)として存在するが,酸性になると水素イオンと結合して無色のHIに変化する。…
※「酸塩基指示薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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