改訂新版 世界大百科事典 「モリアオガエル」の意味・わかりやすい解説
モリアオガエル (森青蛙)
Japanese foamnest tree-frog
Rhacophorus arboreus
アオガエル科の風変りな産卵習性をもつカエル。本州,四国および九州の一部,佐渡島に分布し,低山地から山地にかけての森林にすみ,樹上生で四肢の各指には吸盤が発達する。体長約5~9cmで雌のほうが大きい。体背面は緑色で濃淡に変化し,赤褐色の斑紋が散在する個体が多い地域もある。産卵期は4~7月ころで地方によって異なり,期間は比較的長く,場所は木に囲まれた池沼,水田,湿原などの止水。夜間,雄の鳴声に誘われて雌もともに水に入り,やがて水辺に張り出した枝に雌雄が登り始める。抱接した雌雄にさらに数匹の雄が抱きつき,雌が放出する粘液を協力して後肢でかき混ぜる。枝に付着した直径10~15cmほどの白い泡状の巣ができると,その中に300~500個ほどを産卵し,巣は表面が乾く。孵化(ふか)した幼生は水中に落ちて育つが,水中には敵も多い。場所により国の天然記念物。
→アオガエル
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報