モレロス(その他表記)Morelos

改訂新版 世界大百科事典 「モレロス」の意味・わかりやすい解説

モレロス[州]
Morelos

メキシコ中央部の州。面積4894km2トラスカラに次いで小さな州。人口161万2899(2005)。州都クエルナバカ。ネオボルカニカ山脈のアフスコ山南麓に広がり,平たん地は少ない。標高800~5400m。気候は標高により差異が大きく,アフスコ,ポポカテペトル火山麓の北部は寒冷で,南部は熱帯湿潤であるが,中央部は比較的温暖。年降水量は1000mm以下。主要な産業はバルサス川支流域の農業で,米,トウモロコシ,コーヒー,サトウキビ,果実が主要な農産物。とくにサトウキビはH.コルテスによって新大陸のこの地に初めて導入され,この国を代表するサカテペックの製糖工場の起源となる。観光業も主要な産業で,クエルナバカがその中心。メキシコ市に近いことから,近年メキシコ市民の別荘地帯として開発が進んでいる。行政的には1869年に独立州となり,その名称はメキシコ独立の英雄J.M.モレロスにちなんでつけられた。
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モレロス
José María Morelos y Pavón
生没年:1765-1815

メキシコ独立戦争の指導者。M.イダルゴ院長をしていたバヤドリード神学校に入学して司祭となり,独立戦争中はイダルゴ右腕として働き,彼の亡き後は反乱軍を指導した。A.deイトゥルビデと交戦したこともあり,1814年には自由主義思想に立脚したアパツィンガンApatzingán憲法を作成した。しかし,1815年に逮捕され銃殺。独立戦争はこの時期から停滞し,21年にようやく達成された。彼をたたえ,生誕地バヤドリードはモレリアと改名された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「モレロス」の意味・わかりやすい解説

モレロス
もれろす
José María Morelos
(1765―1815)

メキシコ独立運動の指導者、メキシコ自由主義の先駆者。バリャドリード(現モレリア)の大工の子に生まれる。下級聖職者となり、1810年恩師イダルゴ神父の率いる独立運動に加わり、メキシコ南西部の指導者に任ぜられた。11年イダルゴが処刑されたのちもゲリラ戦を続け、12年から13年にはオアハカアカプルコを占領するなど、南西部の大部分を支配下に置いた。13年9月チルパンシンゴで憲法制定会議を開き、全メキシコ人の平等と三権分立に基づく民主共和国としての独立を決定し、11月にはメキシコの独立を宣言した。12月バリャドリードを包囲したモレロス軍は、イトゥルビデ将軍の率いる王党派軍に大敗し、以後敗北を重ねた。14年10月にはアパツィンガンでメキシコ最初の憲法を制定したが大勢は変わらず、翌15年末捕虜になり処刑された。しかし、生き残った多くの部下たち(ビクトリアゲレーロなど)は、1821年の独立以後、国家の指導者として活躍。

野田 隆]

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世界大百科事典(旧版)内のモレロスの言及

【サパタ】より

…農地改革運動のシンボル的存在となった伝説的英雄。メキシコ市に隣接する伝統的な糖業地帯モレロス州の大農園(アシエンダ)に囲まれた小村アネネクイルコの小農の子に生まれた。モレロス州は19世紀末から20世紀初頭にかけて糖業の近代化と砂糖ブームにより急激な変化を経験したが,その結果大農園と周辺の村との間で土地や水利権をめぐる紛争が続発した。…

【チルパンシンゴ】より

…南シエラ・マドレ山脈のふもと,ペタキヤス川流域に位置し,コーヒー,タバコ,サトウキビ等を産する農業地帯の中核都市。1813年,独立運動を主導したJ.M.モレロスが,第1回メキシコ議会を招集した地として歴史的に知られる。メキシコ市から約300km,アカプルコまで150kmに位置する。…

※「モレロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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