モンゴル相撲(読み)モンゴルズモウ

デジタル大辞泉 「モンゴル相撲」の意味・読み・例文・類語

モンゴル‐ずもう〔‐ずまふ〕【モンゴル相撲】

モンゴル格闘技ブフ」のこと。

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百科事典マイペディア 「モンゴル相撲」の意味・わかりやすい解説

モンゴル相撲【モンゴルずもう】

モンゴル系の人びとが行う伝統的な格闘技。地域によって相撲をとる時の服装やルールが異なる。大きく分けると三つの系譜がある。(1)中国内モンゴル自治区系,(2)オイラート系,(3)ハルハ系。(1)の内モンゴル自治区系の服装は,革製の鋲(びょう)付きベストと,幅の広いゆったりとしたズボンを身につけ,両方の掌(てのひら)が同時に地面につくと負けとなり,腰から下を手でつかまえることを禁じている。(2)のおもにモンゴル国の西部に住むオイラート系の諸集団では,上半身は裸で,短いズボンだけを身につけ,お互いに組み合った状態から相撲を始め,相手背中を地面につけて一定時間押さえ込む。(3)のモンゴルの人口の70%を占めるハルハ系の人びとの相撲(ハルハ相撲)では,胸が大きく開いている長袖のベスト(ゾドグ)と短いパンツ(ショーダグ),それにブーツ(ゴタル)と帽子(ジャンジン・マルガイ)を身につけるのが盛装である。ゴタルには滑り止めの革紐(かわひも)を巻きつけ,ジャンジン・マルガイには後ろにザラーと呼ばれる優勝回数を表すリボンをつける。試合は,いわゆる立ち合いはなく,組み手の駆け引きから開始される。〈土俵〉はないので,技を仕掛けてはそれをかわすことを繰り返す。試合は長時間に及ぶことが多く,決勝戦などの力が伯仲した試合になると4時間を超えることもある。肘(ひじ),膝(ひざ),額が地面につくと負けとなり,掌は地面についてもよい。技は複合技などを含むと400以上あるといわれており,〈投げる〉〈持ち上げる〉〈足をとる〉などが主な技である。掌が地面についてもよいというルールがあるので,〈足の裏をとる〉という技や,両手を地面につけ,両足で相手のからだを挟みつけて倒すという技は,このハルハ系相撲独特のものである。一般にモンゴル相撲と呼んでいるのは,このハルハ系の相撲のことである。→相撲

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モンゴル相撲」の意味・わかりやすい解説

モンゴル相撲
モンゴルずもう

モンゴル伝統の徒手格闘技。ブフと呼ばれ,国技としてたいへんな人気を集める。約 2500年の歴史をもち,かつてチンギス・ハン(成吉思汗)も愛好したといわれる。日本の相撲と技の共通点も多く,その源流という説もある。民族色豊かなゾドク (ベスト) ,ショーダク (パンツ) ,ゴダル (ブーツ) を身に着けて対戦する。相撲のような立ち合いの激突はなく,柔道のように組み合って始める。土俵もなく,地面に相手の膝や肘,頭,背中などを先に押しつけた方が勝ち。寄り切りのような技もない。手のひらが着いてもよく,あくまで「投げる」「倒す」が基本で,勝負は数時間に及ぶこともある。相手の足や腰をつかんでのダイナミックで多彩な投げ技,足技が駆使され,決まり手は 500種類をこえる。毎年7月に国中で開かれる祭典ナーダムには欠かせぬ主要競技となっている。なかでも首都ウラーンバートルのナーダムは国の王者決定戦で,強豪がひしめき盛り上がる。優勝者は国民的英雄となる。選手は入場の際と勝利のあとに,タカの姿を象徴した踊りを舞い,遊牧民族の勇壮さが漂う。 1997年にブフ・リーグが発足し,有力企業の支援でクラブが急増。セミプロ選手も出現するなど商業化も進んでいる。優勝2回でアバルガ (日本の横綱に相当) という称号が送られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「モンゴル相撲」の意味・わかりやすい解説

モンゴル相撲 (モンゴルずもう)

モンゴルの伝統的競技の一つ。色彩豊かなブーツをはき,体にぴったりと合った上衣とパンツをつける。上衣をつかみ合ってひじ,ひざ,背中を地につけた者が勝者となる。おもな技に相手を投げる,押し倒す,引き回すなどがある。日本の相撲とよく似ているが,土俵がないので勝負は長引く傾向にある。元朝時代の13世紀ごろにはあったとされ,祝いや祭りで行われた。今では毎年7月11日の革命記念式典に中央大会があり,優勝者にはアルスラン,連続優勝者にはアバルガの称号が与えられる。
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世界の祭り・イベントガイド 「モンゴル相撲」の解説

モンゴルずもう【モンゴル相撲】

モンゴルの国技で、民族の祭典ナーダムで行われる3つの競技の一つ。神事の性格もそなえた格闘技で、中世には兵士の鍛錬として行われた。現代ではプロのリーグもある。土俵やリングはなく、伝統的に草原で行われてきた。頭、背中、肘、膝、尻などが地面につくと負けとなる。手のひらはついてもよい。試合前、および勝ったときには、鳥のように舞う踊りをする。日本の相撲の起源とする説もある。◇モンゴル語では「ブフ」という。

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