ハルハ(その他表記)Khalkha

改訂新版 世界大百科事典 「ハルハ」の意味・わかりやすい解説

ハルハ (喀爾喀
)
Khalkha

モンゴル国の主要構成民族。起源はハルハ川を含むクレン・ボイル草原に居住した,ジャライル族を主体としたハルハ万戸にある。ダヤンハーンは16世紀初めに第5子アルジュ・ボラトと末子ゲレセンジェに,これを所領として与えた。アルジュの子孫は内ハルハとして内モンゴルにとどまり,南下して遼河およびそれ以西に広がり,今のバーリン(巴林),ジャルート(札魯特)などになった。一方,ゲレセンジェの子孫は外ハルハといい,ヘンテイ山脈方面のウリヤンハイ族が滅亡したとき,同地に西進し,また1552年アルタン・ハーンのオイラート族攻撃の結果ハンガイ山脈方面に広がり,現在のハルハの分布に近づいていった。16世紀末,東からツェツェン・ハン部,トシェート・ハン部,ザサクト・ハン部に分かれており,1725年サイン・ノヤン部がトシェート・ハン部から分かれて4部となった。またこの間,17世紀末にジュンガル部の圧迫の結果清朝に服属した。現在内モンゴル自治区にあるハルハ左翼旗とハルハ右翼旗は,外ハルハの一部が分裂して移動した結果できたものである。ハルハ族は20世紀初め独立を企て,1921年モンゴル民族の唯一の独立国モンゴル人民共和国を建てた。そして人口は急速に増え,革命直前の18年に約49万人であったのが,63年に約78万人となり(同国人口の約76%),80年には約120万人を超えていると推測される。また彼らの話すハルハ語モンゴル語の中部方言の一つであるが,今やモンゴル民族全体の共通語としての役割を担うにいたっている。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ハルハ」の解説

ハルハ
Khalkha 喀爾喀

モンゴルの部名。ダヤン・ハーンの2子がハルハ万戸に分封され,内・外ハルハと称した。内ハルハはシラムレン流域に南下し,17世紀初めに清に服属,一部は内モンゴルのバーリン,ジャルード両部となった。外ハルハは16世紀中頃には北モンゴル全域を支配し,セチェン・ハン,トシェート・ハン,ジャサクト・ハンなどの勢力に分かれた。1688年にジュンガルガルダンが侵入し,その後南下して,清に服属した。清は1725年に新設したサインノヤン部とともに,4部83旗に編成した。法典集『ハルハ・ジロム』は18世紀にトシェート・ハン部王公によって制定され,ハルハの活仏(かつぶつ)ジェブツンダムバ・フトクトの寺領で用いられた。現在モンゴル国住民の多数派を構成している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルハ」の意味・わかりやすい解説

ハルハ
はるは / 喀爾喀
Khalkha

モンゴルの部族名、また地名。清(しん)代にはおもに外モンゴル(モンゴル国のほぼ全域)をさした。ハルハとは、もとはモンゴリア東部に居住した部族の名称で、それは付近を流れるハルハ川に由来したものという。16世紀後半、オイラート部の勢力が外モンゴルから駆逐されると、ハルハ部の領域はその全体に広がった。ハルハは17世紀前半に勢力的に四分され、西にジャサクト・ハン部、アルタン・ハン国、東にトゥシェト・ハン部、チェチェン・ハン部があった。17世紀後半、ジャサクト・ハン部とトゥシェト・ハン部との間に紛争が起こると、その西にあったジュンガル王国のガルダンの介入を招き、1691年ハルハはあげて清朝に帰属した。ガルダンを駆逐したのち、清朝はハルハをジャサクト・ハン部、トゥシェト・ハン部、チェチェン・ハン部の3部、55旗に編成したが、1725年トゥシェト・ハン部からサイン・ノヤン部を分離させ4部とした。その後、旗の数は増加し、乾隆(けんりゅう)年間(1736~95)に86旗となった。

[森川哲雄]

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百科事典マイペディア 「ハルハ」の意味・わかりやすい解説

ハルハ

モンゴル諸族中最も多く,モンゴル国住民の約8割を占める民族。約120万人(1980)。言語は,アルタイ諸語中のモンゴル諸語のうちハルハ語(現在同国の公用語)を使用。牧畜民で,ラマ教(チベット仏教)を信じ,社会組織として外婚的氏族組織をもっていたが,ロシア革命後変質した。
→関連項目モンゴル相撲

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世界大百科事典(旧版)内のハルハの言及

【ノモンハン事件】より

…満州国とモンゴル人民共和国の国境ノモンハン付近でおこった日ソ両軍の大規模な武力衝突事件。ノモンハン一帯の国境問題は日ソ間に係争中で,日本側はハルハ川を,ソ連側はその北方のノモンハン付近をそれぞれ国境と主張していた。1939年関東軍は隷下部隊に〈満ソ国境紛争処理要綱〉を示達し,国境紛争ではソ連軍を徹底的に膺懲(ようちよう)せよとの方針を示した。…

※「ハルハ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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