ラジカル反応(読み)ラジカルハンノウ(英語表記)free radical reaction

デジタル大辞泉 「ラジカル反応」の意味・読み・例文・類語

ラジカル‐はんのう〔‐ハンオウ〕【ラジカル反応】

化学反応で、その過程遊離基が関与するもの。光化学反応・熱化学反応で多くみられる。遊離基反応

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改訂新版 世界大百科事典 「ラジカル反応」の意味・わかりやすい解説

ラジカル反応 (ラジカルはんのう)
free radical reaction

フリーラジカル(遊離基)が関与する反応。遊離基反応ともいう。一般に化学結合の開裂は,結合していた2個の原子に電子対が割り当てられる仕方に応じて,

 均等開裂  A:B─→A・+・B

 不均等開裂 A:B─→A:⁻+B⁺

の2種に分類される。前者はラジカル反応に,後者イオン反応に対応する。ラジカル反応は自動酸化,光分解,ビニル重合体が生成する付加重合反応などにみられ,日常生活とのかかわりも大きい。ラジカルが高エネルギー種であるため,その発生や反応の制御が必ずしも容易ではない。しかし,いったんラジカルが生じると,その高い反応性のため第2の反応が起こってラジカルが再生され,連鎖反応となることが多い。

 連鎖反応は以下の3段階からなる。(1)連鎖開始反応 ラジカルが生成する過程,(2)連鎖移動反応 ラジカルが中性分子と反応して新しい中性分子とラジカルを生じる過程,(3)連鎖停止過程 生成したラジカルどうしが反応する過程。

 アルカンのラジカルハロゲン化の例を以下に示す。

(1)開始 Cl2─→2Cl・

(2)移動 Cl・+CH4─→HCl+CH3

    CH3・+Cl2─→CH3Cl+Cl・

(3)停止 2Cl・─→Cl2

    2CH3・─→C2H6

    CH3・+Cl・─→CH3Cl

反応を開始させるのにラジカルを容易に発生する化合物を用いることも多い。工業的に重要なラジカル重合に用いられるものは重合開始剤と呼ばれる。アゾイソブチロニトリルなどのアゾ化合物過酸化ベンゾイルなどの過酸化物がよく用いられる。ラジカル重合過程はポリエチレンの場合,

 R・+CH2=CH2─→RCH2C5H2

 RCH2CH2+CH2=CH2─→RCH2CH2CH2CH2

 R(CH2CH2n-1CH2CH2+CH2=CH2─→R(CH2CH2nCH2CH2

ここでR・は重合開始剤から生じたラジカルを表す。
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化学辞典 第2版 「ラジカル反応」の解説

ラジカル反応
ラジカルハンノウ
radical reaction

遊離基の関与する反応.遊離基反応ともいう.化学反応は結合の切断とそれに伴う原子の再配列であるので,結合が非イオン的に切断して生じる遊離基の関与する反応は非常に多い.有機化合物の気相における熱反応はほとんどラジカル反応である.遊離基の素反応の例を炭化水素遊離基についてみると,次のような分類ができる.

(1) 水素原子引抜反応:

    CH3・ + CH3CH3 → CH4 + CH3CH2

(2) 付加反応

    CH3・ + CH2=CH2 → CH3CH2CH2

(3) 再結合反応:

    C2H5・ + C2H5・ → C4H10

(4) 不均化反応:

    C2H5・ + C2H5・ → C2H6 + C2H4

(5) 熱分解反応:

    C3H7・ → CH3・ + C2H4

(6) その他,特殊な例として次のようなメチレン挿入反応もある.

    CH2: + CH3CH3 → CH3CH2-CH2-H

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「ラジカル反応」の意味・わかりやすい解説

ラジカル反応【ラジカルはんのう】

反応の過程に遊離基(フリーラジカル)の関与する反応。遊離基反応とも。たとえば  CH4+Cl2→CH3Cl+HClの反応は次のようにラジカル反応として進行する。  Cl2→2Cl・  Cl・+CH4→CH3・+HCl  CH3・+Cl2→CH3Cl+Cl・多くのラジカル反応は上例のように連鎖的に進行する。有機物の自動酸化やビニル化合物の重合反応はラジカル反応で,高分子生成など工業的にも広く利用されている。有機化合物の反応としてはラジカル反応のほかにイオン反応,分子反応がある。

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世界大百科事典(旧版)内のラジカル反応の言及

【化学反応】より

…たとえば反応, HCl+KOH―→KCl+H2Oでは,次の一連の変化, HCl―→H+Cl,KOH―→K+OH, H+OH―→H2Oが起こっており,HClは酸,KOHが塩基で,この型の反応を中和反応という。 無機化合物ではイオンの関与する反応が多いが,有機化合物ではイオン反応もラジカル反応も起こる。これは反応に関与する化学結合の開裂のしかたによるもので,化学結合をつくる電子対が一方によって開裂する場合(ホモリシス)はイオン反応となり,電子対が一つずつの電子に分かれ開裂する場合(ヘテロリシス)はラジカル反応となる。…

※「ラジカル反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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