フリーラジカル(遊離基)が関与する反応。遊離基反応ともいう。一般に化学結合の開裂は,結合していた2個の原子に電子対が割り当てられる仕方に応じて,
均等開裂 A:B─→A・+・B
不均等開裂 A:B─→A:⁻+B⁺
の2種に分類される。前者はラジカル反応に,後者はイオン反応に対応する。ラジカル反応は自動酸化,光分解,ビニル重合体が生成する付加重合反応などにみられ,日常生活とのかかわりも大きい。ラジカルが高エネルギー種であるため,その発生や反応の制御が必ずしも容易ではない。しかし,いったんラジカルが生じると,その高い反応性のため第2の反応が起こってラジカルが再生され,連鎖反応となることが多い。
連鎖反応は以下の3段階からなる。(1)連鎖開始反応 ラジカルが生成する過程,(2)連鎖移動反応 ラジカルが中性分子と反応して新しい中性分子とラジカルを生じる過程,(3)連鎖停止過程 生成したラジカルどうしが反応する過程。
アルカンのラジカルハロゲン化の例を以下に示す。
(1)開始 Cl2─→2Cl・
(2)移動 Cl・+CH4─→HCl+CH3・
CH3・+Cl2─→CH3Cl+Cl・
(3)停止 2Cl・─→Cl2
2CH3・─→C2H6
CH3・+Cl・─→CH3Cl
反応を開始させるのにラジカルを容易に発生する化合物を用いることも多い。工業的に重要なラジカル重合に用いられるものは重合開始剤と呼ばれる。アゾイソブチロニトリルなどのアゾ化合物や過酸化ベンゾイルなどの過酸化物がよく用いられる。ラジカル重合過程はポリエチレンの場合,
R・+CH2=CH2─→RCH2C5H2
RCH2CH2+CH2=CH2─→RCH2CH2CH2CH2
R(CH2CH2)n-1CH2CH2+CH2=CH2─→R(CH2CH2)nCH2CH2
ここでR・は重合開始剤から生じたラジカルを表す。
執筆者:竹内 敬人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
遊離基の関与する反応.遊離基反応ともいう.化学反応は結合の切断とそれに伴う原子の再配列であるので,結合が非イオン的に切断して生じる遊離基の関与する反応は非常に多い.有機化合物の気相における熱反応はほとんどラジカル反応である.遊離基の素反応の例を炭化水素遊離基についてみると,次のような分類ができる.
(1) 水素原子引抜反応:
CH3・ + CH3CH3 → CH4 + CH3CH2・
(2) 付加反応:
CH3・ + CH2=CH2 → CH3CH2CH2・
(3) 再結合反応:
C2H5・ + C2H5・ → C4H10
(4) 不均化反応:
C2H5・ + C2H5・ → C2H6 + C2H4
(5) 熱分解反応:
C3H7・ → CH3・ + C2H4
(6) その他,特殊な例として次のようなメチレンの挿入反応もある.
CH2: + CH3CH3 → CH3CH2-CH2-H
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…たとえば反応, HCl+KOH―→KCl+H2Oでは,次の一連の変化, HCl―→H++Cl-,KOH―→K++OH-, H++OH-―→H2Oが起こっており,HClは酸,KOHが塩基で,この型の反応を中和反応という。 無機化合物ではイオンの関与する反応が多いが,有機化合物ではイオン反応もラジカル反応も起こる。これは反応に関与する化学結合の開裂のしかたによるもので,化学結合をつくる電子対が一方によって開裂する場合(ホモリシス)はイオン反応となり,電子対が一つずつの電子に分かれ開裂する場合(ヘテロリシス)はラジカル反応となる。…
※「ラジカル反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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