翻訳|lacquer
塗料と同義語であるが,広義には,セルロース誘導体を主体とし,これに樹脂,可塑剤,顔料,溶剤等を加えて作られる揮発乾燥型塗料をいう。古くから最も広く用いられているのはニトロセルロース(硝化綿)を使用したニトロセルロースラッカーで,狭義のラッカーはこれをさす。ニトロセルロースは窒素含有量が11.7~11.2%のエステル可溶性のものが通常使用される。混合溶剤に溶解したときの粘度により,数段階に分けられる。樹脂類には天然樹脂または短油性の不乾性油アルキド樹脂が,可塑剤にはフタル酸エステル系,リン酸エステル系,エポキシ系,ポリエステル系が用いられる。
乾燥が非常に速く,塗膜は硬度,耐久性に優れる。1回塗りで得られる塗膜厚がやや薄い難点があるが,樹脂成分を多くして改善が図られている。スプレー塗装技術と組んで,大量,広範囲に使用される揮発乾燥型の代表的塗料である。
次にあげる5種類がある。(1)クリアラッカー 仕上用クリアラッカー(ラッカーエナメル塗装の際の仕上塗り)と木材用クリアラッカー(木材の透明塗装用)の2種類がある。(2)ラッカーエナメル 屋内用は木材および金属表面上塗りに,屋外用は自動車補修,金属製品の上塗りに用いられる。(3)下地類用 木材用としてはクリアラッカー塗膜の下塗りに使用するウッドシーラー(木目の目止め),中塗りに使用し,研磨性を与えるサンジングシーラー,金属表面の平たん化を目的とするパテ,サーフェーサーがある。(4)ハイソリッドラッカー アルキド樹脂成分を多くして,塗膜の光沢,肉持ちを与え,耐候性にすぐれるもの。(5)皮革ラッカー 皮革の塗装に適するように柔軟性と適度の強度を与えたもの。
なお,セルロース誘導体にアセチルセルロース,エチルセルロースを用いたラッカーもあるが,用途は限られている。
執筆者:大藪 権昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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古くはニトロセルロース(硝化綿)を天然樹脂系統のものとともに揮発性の溶剤に溶かしたもので、速乾性で不粘着、強固、耐水・耐油性に富んだ美しい塗膜を形成する。木材、金属、皮革などの塗装に使われていた。セルロース塗料ともいう。このものは揮発成分が多いので、厚塗りは何回も塗り重ねを必要とする欠点がある。最近ではニトロセルロースに樹脂として天然樹脂、加工樹脂(エステルガムなど)、合成樹脂(アルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂など)と可塑剤、軟化剤(ひまし油など)を加え、それに揮発性溶剤(シンナーなど)を加え、かつ顔料を添加しないので透明な塗膜を与えるものが多い。これをクリヤラッカーとよんでいる。ニトロセルロースのかわりにアセチルセルロース、アセチルブチルセルロースなどを用いることもある。
[垣内 弘]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
パイロキシリンラッカー(pyroxylin lacquer)の略称で,ニトロセルロースを樹脂類などともにエチルメチルケトンなど揮発性の溶剤に溶かしたもの.即乾性に富み,耐油性,耐久性もすぐれており,塗膜は光沢があるので,もっぱら塗装用として用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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