リスクコミュニケーション(読み)りすくこみゅにけーしょん(英語表記)risk communication

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リスクコミュニケーション
りすくこみゅにけーしょん
risk communication

ある特定のリスクについての情報を、利害関係をもつ人ので共有し、相互意思疎通を図ること。リスコミと略す。対象となるリスクとしては、人の健康や生態系に被害や損失を与える可能性のある、化学物質やアレルギー物質、原子力分野、地震などの自然災害があげられる。リスクコミュニケーションは、実際には、消費者や住民、事業者、専門家、行政担当者などの関係者の間で、意見交換会、パブリックコメントによる意見聴取、ホームページを通した情報発信などによって行われる。関係者間で対話を行うなどの交流を図りながら合意形成に至る手段の一つとして、食品安全行政や環境問題などでとくに注目されている。

 自然災害である地震におけるリスクコミュニケーションの場合には、ある地域で想定された巨大地震に対し、地域の関係者がそれぞれの立場から、リスクを最小限にとどめ、可能なかぎり人や物の被害を少なくするために情報交換を行う。具体的には、発生場所の予測をはじめ、地震の規模に応じた住宅や道路の安全確保、避難方法などの対策やその費用の算出、警報や避難勧告のあり方に対する意見を交換し、事前の対策を進めていく。このような対策に関しては、地震発生直後の緊急時やその後の回復期にどのような対応をすべきかといった視点からも話し合われなければならない。

 リスクコミュニケーションは1980年代から欧米で使われるようになった概念で、日本では1996年度(平成8)版環境白書の「不確実性を伴う環境問題への対応―環境リスク」のなかで、環境リスクへの対応策の一つとしてこの名称がはじめて登場した。

[編集部]

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知恵蔵の解説

リスクコミュニケーション

化学物質や原子力など健康への影響が心配される事柄について、原因者の事業者と住民が情報を共有し、意思疎通を図って対策を進め、リスクの低減に取り組むこと。日本ではPRTRに基づき、一定量以上の化学物質を扱っている工場・事業者が毎年、環境中への排出量を国に報告、国民は国に請求すれば個別企業の化学物質などの排出量を知ることができる。環境NGOがこれをデータベース化し、企業や住民を交えた意見交換会を全国で展開。一部の大企業の工場は住民説明会を開き、化学物質の排出量や危険性、環境保全の取り組みを説明している。住民の不安を和らげると共に、企業も削減に努力し、相互理解が進むメリットがある。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

リスク‐コミュニケーション(risk communication)

あるリスクについて、関係する当事者全員が情報を共有し、意見や情報の交換を通じて意思の疎通と相互理解を図ること。リスコミ。

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