翻訳|squirrel
ネズミに似るが一般に四肢と尾が長く,尾に長毛が房状に生えた,齧歯(げつし)目リス科Sciuridaeの小哺乳類の総称。オーストラリア,ニュージーランド,マダガスカル,南アメリカ南部,南極を除く世界中に広く分布し,およそ50属250種があり,昼行性のリス亜科Sciurinaeと夜行性のムササビ亜科Petauristinaeに大別される。最小のものは中央アフリカのアフリカコリス(アフリカコビトリス)Myosciurus pumilio(英名African pygmy squirrel)で,体長6~7.5cm,尾長5~6cm,体重16.5gほどであり,最大は北半球に分布するマーモットMarmota(英名marmot)類で,体長60cm,尾長25cm,体重7.5kgに達するものがある。また,樹上生のリス類中最大のものはインドオオリスRatufa(英名giant squirrel)類で,体長46cm,尾もほぼ同長で,体重は3kgに達する。
体は細長く,四肢も長く,前足に4指,後足に5指がある。各指にはかぎづめがある。頭骨の後眼窩(こうがんか)突起がよく発達し,左右の目の間隔が広く,目は比較的大きい。下眼窩孔はきわめて小さく,あごを動かす咬筋(こうきん)を通さない。上下顎(じようかがく)とも前臼歯(ぜんきゆうし)があり,前臼歯,臼歯ともに根ができ,一生の間のび続けることはない。歯冠部は小さく,そしゃく力は齧歯類としては弱い。リス類の多くは昼行性で,木の実,果実,種子,木の芽,草などの植物質を主食とするが,東南アジアに分布するハナナガリスRhinosciurus laticaudatus(英名long-nosed squirrel)のように大型のアリ,シロアリ,甲虫,ミミズなどを主食とするものもある。
典型的なリスで,樹洞や木の枝の上に小枝や葉を集めて大きなボール状の巣をつくる。早朝から夕刻まで樹上で活発に行動するが,地上をもよく走る。長い房状の尾は樹上で体のバランスをとるのに役だつ。木から木へジャンプするときは四肢を大きく広げ,多少滑空する傾向がある。多くの種類があるが,日本には北海道にキタリスSciurus vulgarisの1亜種エゾリスS.v.orientalis,本州,四国,九州にホンドリス(ニホンリス)S.lisの2種が生息する。また,伊豆大島などでは台湾原産のタイワンリスCallosciurus caniceps thaiwanensisが野生化している。
ジリス,ハタリス,プレーリードッグ,マーモットなどの仲間で,地下のトンネル中に巣をつくり,木には登らないものが多い。前足には土を掘るのに適した強大なつめをもち,体はがんじょうで四肢,尾,耳介は短く小さい。食物を地下に大量に貯蔵し,食物運搬用のほお袋が発達する。寒い地方では冬眠する。日本にはこのグループに入る典型的な種は生息しないが,北海道のシマリス(エゾシマリス)Tamias sibiricusがこれにあたる。
ムササビ,モモンガの仲間で,前肢と後肢の間に飛膜が発達し,飛膜を広げて木から木へ滑空する。大きな目をもっており,日中は樹洞に潜み,日没ころより活動する。ほとんどがアジア南部にいて,北アメリカには2種,ヨーロッパには1種が分布するのみ。日本には大型で飛膜が後肢と尾の間にもあるムササビPetaurista leucogenys,小型で乳が4対のエゾモモンガPteromys volans orii,乳が5対のモモンガP.momongaがある。
なお,アフリカにウロコオリス類がある。これは習性が似ているためリスの名がついており,多くのものはムササビのように夜行性で飛膜をもつ。しかし,尾にうろこがあることなど形態の違いと,系統がはっきりしないことなどからウロコオリス科Anomaluridaeとして独立した科とされている。
執筆者:今泉 忠明
イタリアで活動したドイツ出身の画家。ホルシュタインのオルデンブルクOldenburgに生まれ,オランダ(ハールレム,アムステルダム),フランドル(アントウェルペン)で活動した後,1621年にベネチアに赴き,同地で早世した。風俗画,神話画,宗教画を手がける。ある種の庶民的主題や生々しくたくましい裸体表現は,アントウェルペン時代にヨルダーンスの影響を受けたことを暗示するが,イタリアでは16世紀ベネチア派の伝統を吸収して豊麗な色彩の中に形態が溶解するかのようなきわめて革新的な様式に到達,同時代のベネチア画壇を刺激し,ティエポロに代表される同地の18世紀絵画にまではるかな影響を及ぼしている。
執筆者:高橋 裕子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目リス科リス族に含まれる動物の総称。樹上にすむ昼行性の小形の哺乳類で、姿がネズミに似るためキネズミともよばれるが、体と四肢が比較的長く、目は大きく目だつ。尾は体とほぼ同じ長さがあり、長い房毛を密生するのが特徴。ユーラシア、アフリカ、南北アメリカの大部分など、オーストラリアを除く世界中の熱帯から寒帯の森林に広く分布する。代表的な種に、北アメリカのハイイロリス、東南アジアのミケリス、ヨーロッパのキタリスなどがあり、日本には北海道にキタリスの亜種であるエゾリス、本州、四国、九州に固有種のニホンリスの2種が生息する。いずれの種も地上に降りるが、樹上での行動を好み、木の枝から枝へ、数メートルのジャンプを繰り返しながら移動する。巣は木の洞の中、または枝上に小枝などの巣材を組んでつくられる。基本的には種子と果実を中心とし、芽、葉、キノコなども食べる植物食性であるが、ときに昆虫や鳥の卵などの動物質もとることがある。サル類とともに目の色覚が発達する数少ない哺乳動物として知られ、一般にじみな体色のものが多い哺乳類のなかにあって、鮮やかな体色の種を多く含む。近縁の動物群に、同じリス科であるが木に登ることが少なく、巣も地中につくる地上生のシマリス類、地下に複雑なトンネルをつくる地下生のジリス類などがある。いずれも樹上生のリスに比べて体がずんぐりして、尾が短い。広義にはこれらを含めてリスとよぶことがある。また、飛膜をもつムササビ、モモンガ類は同じリス科でしかも樹上生であるが、夜行性であり、リスとは時間的に森林を使い分けていることになる。
日本に生息する2種のリスはかつては同じ種として扱われていたことがあって、よく似ているが、エゾリスのほうがやや大形で、体長22~27センチメートル、尾長15~20センチメートル。体色は、背面が灰褐色かあるいは茶褐色。腹面は白色。尾の毛は先端まで黒みが強い。ニホンリスは、体長15~22センチメートル、尾長13~17センチメートル。体色は、背面が茶色で、夏毛では体側下部と四肢上部が鮮やかなオレンジ色を呈する。腹面は白色。尾の毛の先端が白い。ともに冬毛では、耳の先端に長さ3センチメートル以上のよく目だつ房毛を生じる。九州、四国を除いて各地の平地から海抜2400メートルぐらいまでの森林、雑木林に普通に生息するが、人を見ると木の幹の反対側に回り込むなど、巧みに身を隠すため目だたない。しかし、マツ、クルミ、ナラ、ハシバミなどの種子が実る季節には、これらの木を連日訪れ、長時間食事や貯蔵に費やすため、目にすることが多くなる。活動時間は早朝から昼ごろまでで、午後はあまり動かない。春から秋にかけて年に2~3回、1産2~6子を産む。子は赤裸で生まれ、体重8~12グラム。毛は10~13日で生え始め、30日で目が開く。巣を出始めるのは生後45日ぐらいからで、初め巣の近くを動き回るだけであるが、しだいに遠出するようになり、8週間ぐらいから独立するものも現れる。寿命は7~8年。なお、伊豆大島、鎌倉市近辺、東京の駒沢(こまざわ)公園などに台湾原産のタイワンリスが野生化しているが、体色は、背面が灰色または淡緑褐色、腹面が灰褐色であり、冬毛に耳の長い房毛を生じないので区別できる。
[今泉吉晴]
日本にはリスは魔物であると伝えている地方がある。1匹殺すと、そのあたりに無数のリスが現れる。魔術を心得ているという。リスが山伏(やまぶし)として登場し、占いをする伝説もある。北海道のアイヌ民族では、聖者アウェオイナの草履(ぞうり)が変成したといい、リスの髑髏(どくろ)を保持して、酒を供えて拝む。やはり魔的で、リスに唾(つば)をかけられると、不治の病にかかると伝え、リスをみつけたら射殺すという。サハリン島のニブヒ(ギリヤーク)人は、野原にいるハロフィン・ミルク(悪魔)はリスの姿をしているという。大声で鳴き、それを聞くと3人に1人は腰を抜かす。狩猟をつかさどる山の神も、リスの毛皮を着ているという。アイスランドのエッダの神話では、世界の中心にある巨大なトネリコの木イグドラシルの梢(こずえ)にいるワシのことばを木の根にいる怪蛇ニドーガに伝えるために、リスが絶えず上り下りしているという。リスをおしゃべりな動物とする伝えはモンゴルにもある。ヨーロッパには、魔除(まよ)けのために、祝祭の火でネコなどの動物を焼くが、ドイツでは復活祭の火祭りでリスを焼く。北アメリカ先住民の火の起源神話には、神から盗んだ火を動物がリレーする話があるが、ナバホ人の神話などでは、すばしっこいリスが活躍している。
[小島瓔]
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