フランスの中等教育機関の名称。古代ギリシアでアテナイ郊外の聖なる森の中を逍遥して青年の教育にあたった哲学者アリストテレスの学校リュケイオンにちなむ。フランス革命期にコンドルセは,イエズス会に握られた守旧的な大学にとって代わる高等教育機関の名称にリセの名を与えた。リセの名称は,1802年5月の法律によって,革命末期の中央学校に代わって登場した中等教育機関に与えられ,今日に至っている。1808年以降はナポレオン学制のなかで,リセは学校制度の中枢的存在となり,ブルジョア子弟に古典人文教養を授ける国立の中等教育機関の名称となり,公立・私立のそれはコレージュと称された。王政復古期,七月王政期には逆に,国立の中等教育機関がコレージュ,公立・私立のそれがリセと称されたが,1848年の二月革命以降は旧称に戻り20世紀に至る。1975年のアビ文部大臣による教育改革で,リセは4ヵ年の前期中等教育(コレージュと称す)に接続する5ヵ年の後期中等教育に対する名称となっている。19世紀を通して,リセは教育内容の中心に古典を据え,産業革命以降社会的要請となっていた自然科学の教育を拒否していたが,1902年のリボA.Ribotらによる改革で,古典科と近代科の両科をとり入れることとなった。リセへの教育機会を国民に開放すること,歴史的につくられた複線型学校制度を単線型に変え,民衆の初等教育とリセの接続をはかることは,19世紀末から20世紀にかけての教育課題であった。
執筆者:古沢 常雄
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ナポレオン学制(1802)以来、エリートに大学準備教育を行うフランス国立中等学校。付属初等課程を含む9年制学校であり、その修了者には試験により国家学位の一つであるバカロレア資格が授与される。バカロレア資格所有者は、全国のどの大学のどの学部に登録することもできる。近年のたび重なる学制改革により、リセは3年制の後期中等教育機関となって大衆化され、日本の高等学校に相当するものになったが、バカロレア資格取得への近道であることに変わりはない。
[桑原敏明]
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…ジロンド派に属し革命後の教育計画をたてようとしたコンドルセは,教育の自律性確保のため,教育を宗教的権威から独立させると同時に行政的権力からも独立させようと試み,教育行政権を学者・知識人の互選による国立学術院にゆだねるとの構想をたてた。学校は小学校,中学校,アンスティテュinstitut(社会の指導層の養成機関),リセlycée(大学),国立学術院(学術研究のほか,公教育の監督・指導を担当)から成るとし,無償とするほか,貧困家庭の子どもの優れた者のために奨学制度を構想した。これらの構想は,革命政府の下では実現されなかったが,教育を権利としてとらえ,学校教育の世俗性や無償をめざすことは,その後,近代教育の原則として認められるようになった。…
…次いで多いのが商業・経営系の70校,学生数1万7278,修了資格取得者数4961で,フランス経済の変遷とみごとに対応している。 入学条件は学校によって異なるが,1年次の場合は通常,高等学校(リセ)を卒業後,各学区(アカデミー)ごとに実施されるバカローレアbaccalauréatとよばれる大学入学資格試験に合格した上で,さらに,各校が単独またはグループを形成して実施する選抜試験(コンクール)が課される点で一般の大学と異なる。志願者は,多くの場合,バカローレアに合格したあと当該学区の大学に登録する一方,高等学校に設けられた準備学級classe préparatoireで通常2年以上(例外的に1年)学習したのち,志望校の選抜試験を受験する。…
…16世紀からイエズス会が大学のコレージュに対抗して数多く設立したコレージュでは教育の内容に変化を生ずるが,監視機能は強まった。フランス革命期にすべて廃校となるが,19世紀に入って国立のリセlycéeと並び,市町村立の中等学校として位置づけられ今日にいたる。【宮沢 康人】。…
※「リセ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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