リチウムイオン電池(読み)りちうむいおんでんち

  • lithium ion battery
  • lithium ion cell

知恵蔵の解説

リチウムイオン電池とは、リチウムイオンによって充電や放電を行う二次電池である。二次電池とは充電を繰り返して何度でも使える電池のことで、これに対して使い捨て電池を一次電池という。リチウムイオン電池の電極には、リチウムイオンを可逆的に出し入れできる材料が使われる。正極(+極)の代表的な材料にはニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムの3種類がある。負極(-極)の材料としては炭素系素材、とくにグラファイト系素材が主流である。電極間でのリチウムイオンのやり取りを担うため、電池内部は有機溶媒の電解質で満たされている。最近ではゲル状の高分子電解質を利用したリチウムポリマー電池が開発されている。
リチウムイオン電池は、1980年代、携帯電話ノートパソコンなど携帯電子機器の開発に伴い、従来の鉛蓄電池やニカド電池より小型、軽量で高容量な二次電池のニーズが高まるなかで開発され、90年代に入って実用化された。現在実用化されている二次電池のなかで、リチウムイオン電池は、同じ大きさで約3倍の電圧が得られ、継ぎ足し充電にも耐え、自己放電も少ないという優位性があり、携帯電子機器の電源として適している。継ぎ足し充電ができるのは、放電しきらないで充電すると充電容量が減ってしまうメモリー効果がほとんどないためである。更には、高速充電が可能で、幅広い温度帯で安定して放電するといった特徴があり、電気自動車やハイブリッド自動車、米政府が導入するF35戦闘機や人工衛星にも使用されている。
一方、欠点としては満充電状態で保存すると急激に劣化し、充電容量が大幅に減ることで、携帯電話用の電池では劣化に伴い膨潤することがある。また、過充電や過放電により電極が激しく発熱し、破裂したり発火したりする危険性がある。これを防ぐため、リチウムイオン電池には、電圧などを厳密に管理する制御回路と過充放電を防ぐ保護機構が必要となる。
大型リチウムイオン電池を民間航空機として初めて搭載したボーイング787型機では、2013年1月、電池から発火する事故が相次ぎ、米国連邦航空局、日本の国土交通省始め各国の関連当局は、電池システムの改修が完了するまで同機の運航を禁止した。同機に搭載の電池は、京都に本社を置く株式会社GSユアサ製。ただし、同社の電池が事故の本質的原因かどうかは明らかになっていない(2013年1月末時点)。

(葛西奈津子  フリーランスライター  / 2013年)

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パソコンで困ったときに開く本の解説

充電式のバッテリーで使われている電池の一種です。それまでに使われていたニッカド(ニッケルカドミウム)電池やニッケル水素電池よりも軽く、たくさん電力を蓄えることができるという利点があります。モバイル・パソコンをはじめ、携帯電話などのバッテリーとして、現在最も普及しています。ただ、他の方式の電池よりも製造コストが高いのが難点です。

出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本パソコンで困ったときに開く本について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

充電して何度でも使える電池の一種。小型化や軽量化がしやすく電力が大きい。携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラなどの電源として普及し、最近は電気自動車のバッテリーとして注目されている。ただ発熱や発火事故も起きており、大規模な回収問題につながったこともある。

(2010-08-15 朝日新聞 朝刊 1経済)

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デジタル大辞泉の解説

lithium-ion battery蓄電池の一。正極コバルト酸リチウム負極炭素材を使用し、両極間をリチウムイオンが往来する電池。短時間の充電で長時間使用できる。カドミウムのような有害物質を含まず、エネルギー密度もニッカド電池に比べて大幅に高い。リチウムイオン二次電池。Li-ion電池。Liイオン電池。リチウムイオンバッテリーLIB

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

負極に黒鉛などの炭素材料,正極にコバルト酸リチウム LiCoO2などのリチウム金属酸化物,電解液に有機溶媒を用いた蓄電池(二次電池)。軽量かつ高電圧を特長とする。公称電圧は 3.7V。貯蔵エネルギー密度が高いため容易に小型化でき,スマートフォンやポータブルコンピュータをはじめとする携帯用情報機器にいまや不可欠となっている。また,大型のリチウムイオン電池は電気自動車や余剰電力の貯蔵などの用途に利用される。2019年,リチウムイオン電池の開発に貢献した,吉野彰,ジョン・グッドイナフ,スタンリー・ウィッティンガムにノーベル化学賞が授与された。

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化学辞典 第2版の解説

金属リチウムを負極に用いず,正極および負極の両者ともリチウムを含む化合物を用いた二次電池.1991年,日本ではじめて実用化された.この電池は軽量で,エネルギー密度が高いため,ノートパソコン,携帯電話などの携帯機器用の電源として幅広く用いられている.一般に使用されているリチウムイオン電池では,負極に黒鉛を代表とする炭素材料,正極にリチウムコバルト酸化物,電解液にリチウム塩を有機溶媒に溶解した有機電解液が使用され,平均放電電圧は3.6~3.7 V である負極の黒鉛を C6,リチウムコバルト酸化物をLiCoO2で表すと,自発反応である放電時の電極反応式は次のとおりとなる.

  負極 LixC6 → C6xLixe

  正極 Li1-xCoO2xLixe → LiCoO2

  全体 LixC6 + Li1-xCoO2 → C6 + LiCoO2

充電時にはこの逆の反応がほぼ可逆的に起こる.負極・正極のどちらも層状構造を有しており,その層間にあるリチウムイオンが放電時には負極から正極に移り,充電時には逆に正極から負極へ移動する.結晶構造を保ったまま電極のなかへリチウムイオンが取り込まれる反応をインターカレーション反応,電極からリチウムイオンが放出される反応をデインターカレーション反応という.リチウムイオン電池の動作原理はこのような可逆的なリチウムイオンのインターカレーション・デインターカレーション反応にもとづく.電解質として有機電解液のかわりにポリマー電解質を用いたポリマー電池が実用化されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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