リチャーズ(その他表記)Ivor Armstrong Richards

デジタル大辞泉 「リチャーズ」の意味・読み・例文・類語

リチャーズ(Ivor Armstrong Richards)

[1893~1979]英国の文芸評論家。心理学的分析と意味論文芸批評に採り入れ、新批評の確立に貢献した。エンプソンの師。著「意味の意味」「文学批評の原理」など。

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精選版 日本国語大辞典 「リチャーズ」の意味・読み・例文・類語

リチャーズ

  1. ( Theodore William Richards セオドア=ウィリアム━ ) アメリカ物理化学者。重量分析法を改良し、多数の元素の原子量を精密に測定した。一九一四年ノーベル化学賞受賞。(一八六八‐一九二八

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改訂新版 世界大百科事典 「リチャーズ」の意味・わかりやすい解説

リチャーズ
Ivor Armstrong Richards
生没年:1893-1979

イギリス文学理論家,批評家。ケンブリッジ大学で心理学を専攻。卒業後,母校の英文科の講師となる(その教室からF.R. リービス,W. エンプソンが巣立った)。文学批評の理論を科学的に精緻化すべく,心理学,意味論,伝達理論に至るまで徹底して追求した。彼の根底には現代文化を水準低下からいかに守るかという危機意識があるとともに,T.S.エリオットらに代表される反ロマン主義的,主知的な文学風土を推進しようとする意志があった。目前に置かれた作者名もその題名も知らされないテキストと対決して,それを精細に読み抜き分析する〈実践批評〉は,著書《実践批評》(1929)として結晶し,この批評方法はその後ケンブリッジはもとよりイギリスの大学のプログラムにとり入れられている。また,より包括的な衝動を含みこんだ作品ほどよしとし,それを根拠づけた《文学批評の原理》(1924)は,1920年代から30年代にかけての批評革命の聖書的存在であった。ほかに《科学と詩》(1925),C.K.オグデンとの共著で意味論に道を開いた《意味の意味》(1923)などがあり,アメリカの〈ニュー・クリティシズム〉の誕生に大きな影響を与えた。しかし,彼自身は文学批評よりもオグデンベーシック・イングリッシュに興味をもち,この方面に専心したが,44年アメリカのハーバード大学に移ってのち,とくに晩年R.ヤコブソンとの交友から再び文学理論をレトリックの面から検討,精錬した。著書はほかに《修辞の哲学》(1937。邦訳《修辞学原論》)など。晩年には詩作もある。
執筆者:


リチャーズ
Theodore William Richards
生没年:1868-1928

アメリカの化学者。ペンシルベニア州の生れ。1888年,ハーバード大学のクックJosiah Parsons Cooke(1827-94)のもとで水の組成の研究により学位を得た。1年間の海外留学ののち,ハーバード大学の分析化学の助手となり,1901年教授となった。重量分析法にさまざまな改良を加えて多数の元素の原子量を精密に測定し,当時まで採用されていたスタスJean Servais Stas(1813-91)の値を訂正した。この功績により,14年アメリカ人として最初のノーベル化学賞を受けた。また,放射性鉛の原子量測定によって同位元素の存在を確証した。このほか,圧縮率や電池の熱力学などを研究し,アメリカに物理化学を導入して多くの弟子を育てた。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リチャーズ」の意味・わかりやすい解説

リチャーズ(Ivor Armstrong Richards)
りちゃーず
Ivor Armstrong Richards
(1893―1979)

イギリスの批評家。チェシャー県に生まれる。ケンブリッジ大学に学び、母校の教壇で講じたのち、1943年からハーバード大学教授(1963年以後名誉教授)。心理学を基礎にした『文芸批評の原理』(1924)や『実践批評』(1929)によって現代批評を先導し、ことにニュー・クリティシズム(新批評)に多大の影響を与えた。心理学者オグデンCharles Kay Ogden(1889―1957)との共著『意味の意味』(1923)も貴重な業績であるが、のちオグデンの主唱するベーシック・イングリッシュBasic Englishにも関心が向かう。著書はほかに『科学と詩』(1925)、『修辞学原論』(1937)、『ベーシック・イングリッシュとその活用』(1943)など。詩集もある。

[岡本靖正 2018年8月21日]

『石橋幸太郎訳『意味の意味』(1969/新装版・2008・新泉社)』『岩崎宗治訳『文芸批評の原理』(1970・八潮出版社)』


リチャーズ(Dickinson Woodruff Richards, Jr.)
りちゃーず
Dickinson Woodruff Richards, Jr.
(1895―1973)

アメリカの内科医、心臓カテーテル法進歩の貢献者。ニュー・ジャージー州に生まれ、1917年エール大学(文学)を卒業した。第一次世界大戦に従軍したあと、コロンビア大学で医学を学び、1923年に卒業した。1931年からベルビュウ病院で、フランスクールナンと共同で、右心の生理学的・病理学的研究を行った。彼らは、ドイツのフォルスマンの開発した心臓カテーテル法により、右心房の血液ガスの恒常値計測、心拍出量の正確な測定、一定時間の心臓カテーテル挿入の無害性などを発表した。リチャーズは1945年コロンビア大学教授、ベルビュウ病院研究所長となり、1956年クールナン、フォルスマンとともにノーベル医学生理学賞を受けた。

[古川 明]


リチャーズ(Theodore William Richards)
りちゃーず
Theodore William Richards
(1868―1928)

アメリカの化学者。画家と詩人の両親の下で早くから才能を発揮し、18歳でハーバード大学を卒業、20歳で学位を得た。1901年、33歳で母校の化学教授に就任した。彼の代表的な業績は、原子重量の精密測定で、1860年代にベルギーの化学者スタスによって求められていた実験値を全面的に改正した。またスタスは水素との重量比が整数値からずれる元素を発見していたが、リチャーズはウラン鉱に含まれる鉛と普通の鉛との重量の違いを発見(1913)、同年ソディが予測したアイソトープの存在を実証した。これらの業績により1914年ノーベル化学賞を受賞した。

[高山 進]


リチャーズ(Linda Richards)
りちゃーず
Linda Richards
(1841―1930)

アメリカ最初の有資格看護師。アメリカの看護師の母ともいわれる。1886年(明治19)来日し、京都看病婦学校、同志社病院で教師兼看護師長として4年9か月在職し、日本への近代看護の導入と定着化に大きな功績を残した。帰国後はアメリカ各地の多くの病院の総看護師長、看護学校校長を歴任した。

[山根信子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リチャーズ」の意味・わかりやすい解説

リチャーズ
Richards, Ivor Armstrong

[生]1893.2.26. チェシャー,サンドバッチ
[没]1979.9.7. ケンブリッジ
イギリスの批評家,詩人。基礎英語の創始者の一人。ケンブリッジ大学に学び,母校および北京,ハーバード各大学で教え,日本にも数度来訪した。心理学による言語研究を基礎とする意味論,文学論によって各方面に新風を吹込んだ。 C.K.オグデンとの共著『意味の意味』 The Meaning of Meaning (1923) ,『文芸批評の諸原理』 The Principles of Literary Criticism (24) とその姉妹編『実践的批評』 Practical Criticism (29) が代表作。『科学と詩』 Science and Poetry (26) ,『コールリッジの想像力説』 Coleridge on Imagination (34) ,『修辞の哲学』 The Philosophy of Rhetoric (37) も重要。

リチャーズ
Richards, Dickinson Woodruff

[生]1895.10.30. ニュージャージーオレンジ
[没]1973.2.23. コネティカット,レークビル
アメリカの医師。エール,コロンビア両大学を卒業。 1928年コロンビア医科大学助教授,47~61年同大学教授,61年から名誉教授。 45~61年,ニューヨークのベルビュー病院医学部長。 32年から同僚の A.クールナンとともに,ドイツの医師 W.フォルスマンの発明した心臓カテーテル法をさらに発展させて心臓内の血圧測定に成功し,かつ心臓内部の状況を知る手段を確立し,肺と心臓の総括的研究を行い,小児の先天的心臓病の手術法を完成させるなど,胸部外科の発展に大きく貢献した。心臓カテーテル法の研究で,フォルスマン,クールナンとともに,56年ノーベル生理学・医学賞受賞。

リチャーズ
Richards, Theodore William

[生]1868.1.31. ペンシルバニア,ジャーマンタウン
[没]1928.4.2. マサチューセッツ,ケンブリッジ
アメリカの化学者。ハーバード大学で学び,1888年学位取得後,ドイツに留学。帰国 (1894) 後,母校のスタッフに迎えられ,化学教授となった (1901) 。約 60の元素について,化学的方法によって原子量を精密に測定。 1913年,各種の鉱物からとった鉛の原子量にわずかの違いがあることを示し,同位体の存在を確証した。 14年にアメリカ人としては初めてのノーベル化学賞を受賞した。

リチャーズ
Richards, William

[生]1793.8.22. マサチューセッツ,プレーンフィールド
[没]1847.11.7. ホノルル
アメリカの宣教師。 1822年ハワイへ渡り,会衆派教会の宣教師となった。 38年ハワイ王の顧問,通訳となり,ハワイ経済,政治組織の改善に貢献。 42年ハワイの独立をアメリカに承認させ,次いでハワイの特別使節としてロンドンにおもむき,イギリス,フランスの承認獲得に成功。

リチャーズ
Richards, Linda

[生]1841
[没]1930
アメリカ合衆国最初の有資格看護師。 1873年正規の看護教育を受けた看護師となる。アメリカの看護師の先駆者であるとともに,1886年から4年半日本に滞在して,近代看護の基礎を築いた。

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百科事典マイペディア 「リチャーズ」の意味・わかりやすい解説

リチャーズ

英国の文芸批評家。ケンブリッジ学派の一人。心理学と意味論の角度から批評理論に画期的な貢献をなした。特に《文芸批評の原理》(1924年),《実践的批評》(1929年)が重要。ほかに《科学と詩》(1926年),《修辞の哲学》(1936年)があり,オグデンCharles Kay Ogden〔1889-1957〕との共著《意味の意味》(1923年)などによってアメリカの〈ニュー・クリティシズム〉の先駆ともなった。1930年以後オグデンとともに一種の国際語であるBasic English(850の基礎語彙(ごい)による英語)の提唱者として活躍。
→関連項目マリー

リチャーズ

米国の医学者。コロンビア大学教授を経て,ベルビュー病院第一内科主任。クールナンと協同で心臓カテーテル法を実施し,心臓病の診断に効果をあげた。1956年ノーベル生理医学賞。

リチャーズ

米国の化学者。ハーバード大学で学び,1901年同大学教授。多数の元素の原子量の精密測定に対し,1914年ノーベル化学賞。ほかに熱化学,熱力学,高圧化学などの研究もある。

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化学辞典 第2版 「リチャーズ」の解説

リチャーズ
リチャーズ
Richards, Theodore William

アメリカの化学者.1886年18歳の若さでハーバード大学化学科を卒業し,1888年水素と酸素の原子量比の研究で同大学から博士号を取得.翌年から母校で定量分析を教え,1901年同大学教授となる.1895年ドイツに留学してF.W. Ostward(オストワルト),H.W. Nernst(ネルンスト)に物理化学を学び,帰国後,ハーバード大学ではじめて物理化学を講じた.代表的な業績は原子量の精密測定で,鉛の同位体,酸素,銀,塩素,臭素,ヨウ素,カリウム,ナトリウム,窒素,硫黄など多数の元素の原子量の再検討と校正を行った.その業績により,1914年アメリカ人としてはじめてノーベル化学賞を受賞した.

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「リチャーズ」の解説

リチャーズ Richards, Linda A.J.

1841-1930 アメリカの看護婦。
1841年7月27日生まれ。イギリスのエジンバラ大病院付属看護婦学校にまなび,ナイチンゲールと知りあう。明治19年(1886)来日し,新島襄(じょう)が設立した京都看病婦学校でおしえる。宣教医J.ベリーとともに日本に近代看護法を導入して看護婦の養成につくした。23年帰国。1930年4月17日死去。88歳。ニューヨーク州出身。

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世界大百科事典(旧版)内のリチャーズの言及

【ニュー・クリティシズム】より

…〈新批評〉とも訳す。20年代のT.S.エリオットやI.A.リチャーズらによる新しい文学意識にもとづき,文学作品(とくに詩)の精密・客観的な評価をめざした。J.C.ランサム,A.テートらの率いるアメリカの〈南部批評家〉がその母体とみなされるが,イギリス側ではケンブリッジ大学でリチャーズの教えを受けたW.エンプソンをその数に入れることもある。…

※「リチャーズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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