リンドグレン石(読み)りんどぐれんせき(英語表記)lindgrenite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンドグレン石」の意味・わかりやすい解説

リンドグレン石
りんどぐれんせき
lindgrenite

含水モリブデン酸第二銅の鉱物。類似鉱物なし。なお含水モリブデン酸第二銅の鉱物は、ほかにゼニクス石szenicsite(化学式Cu3[(OH)4|MoO4])が知られるのみである。自形b軸に扁平(へんぺい)、c軸方向に伸びた平行四辺形の輪郭をもち、これが皮膜状集合をなす。長板状から針状になることもある。接触交代鉱床、気成鉱脈鉱床、斑岩銅(はんがんどう)鉱鉱床など、黄銅鉱輝水鉛鉱の両方が共存するような鉱床の酸化帯に産する。日本では奈良県御所(ごせ)市三盛(さんせい)鉱山閉山)から報告されている。

 共存鉱物は輝水鉛鉱、アントラー鉱ブロシャン銅鉱、灰水鉛石powellite(Ca[MoO4])、石英など。同定はやや黄色味のある緑色。これが比較的緑色が純粋に近いブロシャン銅鉱などと存在していたら、本鉱の可能性がある。また輝水鉛鉱あるいは灰水鉛石の存在を紫外線で確認することも必要である。石英と共存する場合、深所生成の鉱床であるだけに石英の粒度は大きい。鉄分が多い二次鉱物の集合では、モリブデン酸が先にFe3+と結合するため、鉄水鉛華ferrimolybdite(Fe3+2[MoO4]3・7H2O)が生成しやすく、そうなると本鉱の出現の可能性は下がる。命名スウェーデン生まれのアメリカ人鉱床学者ワルドマー・リンドグレンWaldemar Lindgren(1860―1939)にちなむ。

加藤 昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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