いわゆるリンパ腺lymph glandのこと。鳥類の多くと哺乳類にみられる。リンパ組織lymphatic tissue(lymphoid tissue。各種のリンパ球を産生する組織)が集まってできた器官の一つで,輸出・輸入リンパ管を備える。形は楕円形のものが多く,米粒大からソラマメ大であり,全身に多数散在するが,ヒトでは腋窩(えきか),鼠径部(そけいぶ),頸部などにあり,化膿性疾患の際に,はれたリンパ節が外部から触れることができる。原始的な哺乳類である単孔類のハリモグラのリンパ管には,その一部が膨隆し,その中に血管を伴った径約0.1mmのリンパ組織があるが,これはリンパ節の一つの原型とみなされている。
リンパ節は被膜におおわれ,その直下に複数の輸入リンパ管(輸入管)に続くリンパ洞(辺縁洞)があり,これが直接に,あるいはリンパ節実質(リンパ組織)の中を細かく分かれてから,比較的広い終末洞につながり,これが1本の輸出リンパ管(輸出管)となってリンパ節外へ出る。リンパ洞内には,上流のリンパ組織およびそのリンパ節自体から動員されたリンパ球がリンパ液内に浮かんでいる。このほか,洞内にはマクロファージが互いに細胞質の突起で連なって網目状をなし,上流から運ばれてきた細菌などの異物を貪食して消化する。
輸出管に沿ってリンパ節内に入った動脈は,実質内で毛細血管にまで分岐したのち,急に太くなった細静脈から小静脈へと連なる。この部分の静脈の内皮細胞は比較的背が高く,高内皮静脈または後毛細管静脈と呼ばれる。血流に乗って運ばれてきたリンパ球は,この内皮細胞表面に接着したのち,内皮細胞間隙を通り,基底膜の間から実質に入る。
リンパ節の実質は皮質と髄索に大別され,局所的に濃淡の差はあるが,リンパ球が充満している。リンパ節構成細胞の95%以上はリンパ球であるが,その大半は皮質に集まる。皮質は,齧歯類(げつしるい)やヒトにおいて,辺縁洞直下すなわち皮質の最外周部に帯状にリンパ球密度の高い皮質周域が伸びている。ここには,さらにリンパ球密度の高い球状のリンパ球集団,一次小節がみられる。また,周囲を密なリンパ球集団(暗殻)でとり囲まれ,中央部が明るく見える(明中心)構造も,この皮質周域に主としてみられる。これを二次小節という。明中心へは通常1本の細動脈が入り,毛細血管網を作ったのち,周囲の細静脈に移行する。明中心の姿は構成するリンパ球と支柱細胞の状態によりさまざまである。
抗原などの異物の刺激をうけたリンパ節では,支柱細胞の接着斑desmosomeをもった樹枝状細胞とともにリンパ球が細胞周期の増殖期に入って大型化し,細胞分裂を活発に行う。このとき,一部のリンパ球は壊れて明中心内のマクロファージに貪食される。このようにリンパ球の増殖が活発な明中心をとくに胚中心germinal centerと呼ぶ。胚中心で増殖するリンパ球のほとんどすべてがB細胞であり,しばしばくびれた核をもっている。皮質周域,一次小節のリンパ球の大半は休止期B細胞である。皮質周域と髄索間に広がる部分(皮質の大半を占める)は副皮質または皮質深部と呼ばれ,ここには後毛細管静脈網が発達している。その周囲に副皮質のなかでもリンパ球密度の高い部位が小島状にみられることがあり,三次小節ともいわれる。この構造を含め,副皮質の後毛細管静脈周囲にはT細胞が大半を占め,リンパ節内ではT,B両細胞のすみわけがみられる。T細胞がここで増殖するときには,胚中心のような集塊的な構造をとらず,瀰漫(びまん)性に増殖する。髄索は,終末洞内皮にとり囲まれ,一方で副皮質に連続しており,小動脈が走り,また形質細胞が分布しているところである。リンパ節実質には血管およびリンパ球のほかに,マクロファージおよび支柱細胞としての接着斑のない樹枝状細胞がみられる。後者は,淡明で細長い核をもち,細胞質から突起が出て,互いに密な網目をつくっている。この細胞はマクロファージのように活発な貪食能をもっていないが,表面に抗原を抱えてこれをリンパ球に呈示する役目も果たしている。
抗原や胚中心に少数存在するT細胞とマクロファージの助けを借りて増殖したB細胞は,副皮質に至り,増殖を続けながら,終局的に形質細胞へ分化して髄索にとどまり,抗体を産生分泌する。T細胞は副皮質で増殖したのち,髄索から終末洞に入り,リンパ液の流れに乗る。
→リンパ球
執筆者:花岡 正男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
リンパ管が走行する途中に介在している結節状の小体で、俗にリンパ腺(せん)ともよばれる。扁平(へんぺい)な楕円体(だえんたい)形あるいは腎臓(じんぞう)形で、大きさは2ミリメートルから30ミリメートルほどと大小さまざまである。リンパ節へはその表面から数本のリンパ管(輸入リンパ管)が進入し、その進入部とは反対側の表面からは1~2本のリンパ管(輸出リンパ管)が出ていく。リンパ節の構造は細網組織(細網細胞と細網線維)からなり、網の目の中にはリンパ球が充満している。リンパ節の実質の表層部は皮質とよび、中心部を髄質とよぶ。皮質にはリンパ球が密在するが、とくにリンパ球が密集してところどころに球状の集団を形成している部位をリンパ小節という。リンパ節の髄質は、皮質から連続するリンパ組織であるが、索状の粗い網目構造となっている。これらの皮質と髄質のリンパ組織の周囲には多数の間隙(かんげき)が存在し、これをリンパ洞という。輸入リンパ管はこのリンパ洞に開いている。つまり、輸入リンパ管のリンパ液はリンパ洞に流れ込み、この中を流れて輸出リンパ管に集められる。リンパ節のリンパ組織とリンパ洞とは互いに交通している。
リンパ節内で、その表層(皮質)にあるリンパ小節の中にはBリンパ球が存在している。Bリンパ球は抗原によって反応し、抗体産生細胞となる。皮質の深層部にはTリンパ球が存在している。Tリンパ球は細胞性免疫に関与し、細胞性免疫を発現させる能力をもっている。このようにリンパ節は生体の防衛にあずかる重要な組織である。また、リンパ(リンパ液)はリンパ節のリンパ組織内を流れていく間に機械的に濾過(ろか)されるとともに、リンパ内に含まれている異物や有害な細菌などは大食細胞によって取り込まれ、リンパの浄化が行われる。
人体の代表的なリンパ節は頸部(けいぶ)リンパ節、腋窩(えきか)リンパ節、鼠径(そけい)リンパ節などで、これらのリンパ節は細菌感染時に腫脹(しゅちょう)肥大して、圧痛とともに皮下に触れることができる。なお、リンパ節は魚類、両生類、爬虫(はちゅう)類には存在しない。鳥類はリンパ節をつくらないがリンパ組織をもっている。
[嶋井和世]
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