ルーセル(読み)るーせる(英語表記)Albert Roussel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルーセル」の意味・わかりやすい解説

ルーセル(Raymond Roussel)
るーせる
Raymond Roussel
(1877―1933)

フランスの詩人、小説家。パリの裕福なブルジョア家庭に生まれる。初めピアノと作曲を志すが、17歳のときから詩に専心し、一時期「世界的名声」の強迫観念に襲われ、高名な心理学者で医学者ピエール・ジャネの治療を受ける。処女作の長編詩『替玉』(1897)は不評に終わり、うつ病状態に陥る。小説の代表作『アフリカの印象』Impressions d'Afrigue(1910)、『ロクス・ソルス』Locus Solus(1914)を自ら戯曲化、不評とスキャンダルでかえって有名になる。ほかに戯曲『額(ひたい)の星』(1924)、『太陽の埃(ほこり)』(1926)、長編詩『新・アフリカの印象』(1932)など。作品のいくつかは、きわめて特異な手法で書かれ、死後出版の『いかにして私はある種の本を書いたか』でそれを明らかにしている。言語と狂気とのかかわりの極限を示す彼の作品は、シュルレアリスム、ヌーボー・ロマンの一派から高く評価される。

豊崎光一

『ミシェル・フーコー著、豊崎光一訳『レーモン・ルーセル』(1975・法政大学出版局)』


ルーセル(Albert Roussel)
るーせる
Albert Roussel
(1869―1937)

フランスの作曲家。トゥールコアン生まれ。初め海軍士官としての生涯を歩み始めたが、1894年、軍職を去り、音楽家となる決心をする。オルガン奏者ジグー、ついでスコラ・カントルムでダンディに師事。1902~14年には母校で教鞭(きょうべん)をとり、門下バレーズ、サティらがいる。ダンディや印象主義の影響下に作品を書き始めるが、やがて対位法的書法やインドの旋法などを巧みに利用した堅固な形式感と独特のリズム感にあふれた独自の新古典主義的作風を確立した。ロワイヤンに没。主要作品には、オペラ『パドマーバティ』(1918)、バレエ音楽『蜘蛛(くも)の饗宴(きょうえん)』(1912)、同『バッカスとアリアーヌ』(1930)、同『エネアス』(1935)、四曲の交響曲、交響詩『喚起』(1911)、同『春の祭のために』(1920)、管弦楽曲『ヘ調の組曲』(1926)、同『小組曲』(1929)、弦楽オーケストラのための『シンフォニエッタ』(1934)、弦楽四重奏曲ニ長調(1932)、合唱曲『詩篇(しへん)第80編』(1928)などがある。

[寺田兼文]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルーセル」の意味・わかりやすい解説

ルーセル
Roussel, Raymond

[生]1877.1.20. パリ
[没]1933.7.14. パレルモ
フランスの小説家,劇作家。フランスきっての富豪の家に生れ,パリ音楽院に学ぶ。ベルヌを賛美し,ファンタジーとエキゾチシズムへの傾きをみせた。言葉の意味と音との間に介在するずれを利用し,純粋に言語上の操作によって驚異の世界を創造するという斬新な手法を追求,シュルレアリストの先駆者の一人に数えられる。不遇のうちに孤独な文学的実験に没頭,シチリア島で自殺した。主著,韻文小説『代役』 La Doublure (1897) ,小説『アフリカの印象』 Impressions d'Afrique (1910) ,『独白』 Locus solus (14) ,戯曲『額の星』L'Étoile au front (24) ,『太陽の埃』 La Poussière de soleils (26) ,エッセー『私はいかにして若干の作品を書いたか』 Comment j'ai écrit certains de mes livres (35) 。

ルーセル
Roussel, Albert (Charles Paul Marie)

[生]1869.4.5. トゥルコアン
[没]1937.8.23. ロアイヤン
フランスの作曲家。 18歳で海軍に入り,極東を航海し,25歳で退役。その後スコラ・カントールムで学び,V.ダンディに師事。 1902~14年同校の教授をつとめ E.サティ,E.バレーズら多くの弟子を育てた。世代的にはドビュッシーとラベルの中間であるが作風はやや保守的で晩年には新古典主義に近づいた。海軍時代の経験から得たエグゾチスム,リズムや拍節感の優位が特徴。主作品は大規模な合唱曲『喚起』 (1910~12) をはじめ交響曲4,交響詩『春の祭りに』 (21) ,オペラ『パドマーバティ』 (14~18,初演 23,パリ) ,バレエ音楽『蜘蛛の饗宴』 (12,初演 13) ,『ディオニュソスとアリアドネ』 (31) など。

ルーセル
Roussel, Ker Xavier

[生]1867.12.10. ロリレメッス
[没]1944.6.6. レタンラビュ
フランスの画家,版画家。アカデミー・ジュリアンで学んだ。ナビ派に属し,神話的主題の選択やその表現において独特な作品を生み出した。ビュイヤールとともに装飾画や舞台装飾にも従事。主要作品『パストラール』『海辺のビーナスとアモール』『ディアナ』。

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