レオミュール(読み)れおみゅーる(英語表記)René-Antoine Ferchault de Réaumur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レオミュール」の意味・わかりやすい解説

レオミュール
れおみゅーる
René-Antoine Ferchault de Réaumur
(1683―1757)

フランスの科学者技術者。ラ・ロシェル名門に生まれたが、生後1年余りで父を失い、母や親戚(しんせき)の手で育てられた。1703年パリに遊学、まず数学、ついで動物学に接し、それ以後実験的な諸科学、実用的な諸技術に幅広く携わることになる。博物学における彼の観察の鋭さと広さは、C・ダーウィンのそれに匹敵するといわれ、昆虫学、発生学での貢献は高く評価されている。一方、1708年にパリ科学アカデミーの会員になってからは、アカデミーの事業である『産業百科全書』の編集に熱中し、とくに鉄鋼ブリキ陶磁器に関し詳細な調査を進めた。その他の業績のうち著名なのは温度計の目盛りの考案であって、ガラス管内の液の氷点での体積を1000としたとき、それが増して1001になれば1度、1002なら2度……と表すことにした。その結果、アルコール沸点が80度となったが、誤伝されて水の沸点を80度とする目盛りに彼の名が付せられ、列氏度(記号)とよばれた。

[高田誠二]

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改訂新版 世界大百科事典 「レオミュール」の意味・わかりやすい解説

レオミュール
René-Antoine Ferchault de Réaumur
生没年:1683-1757

フランスの科学者。ラ・ロシェルの富裕な家に生まれパリで法学を学んだが,自然科学を愛好し,若い時は数学を志し,のち工学に転向した。当時フランスでは宰相J.B.コルベールのもとで重商主義政策がとられ,内外のすぐれた学者がアカデミー・デ・シアンスに組織されていたが,レオミュールもこれに参加。1720-22年に鋼鉄の生産に関する一連の論文を提出し,鋼の生産技法の改良に寄与したほか,陶器の製法,温度計(水の氷点から沸点までを80度に分ける烈氏温度計)の改良など実用的色彩の濃い仕事をした。さらに,動物学にも深い関心を示し,《昆虫誌》全6巻(1734-42)を発表したが,ここでは,昆虫,軟体動物,両生類爬虫類などが形態ではなく生態学的な特徴をもとにして分類され,特にミツバチやアリなど社会性昆虫の生態が詳しく記録されている。また,動物の発生に関する前成説,後成説論争にも深くかかわったほか,鳥の消化の過程に関する実験的研究も残している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レオミュール」の意味・わかりやすい解説

レオミュール
Réaumur, René-Antoine Ferchault de

[生]1683.2.28. ラロシェル
[没]1757.10.17. サンジュリアン
フランスの物理学者,博物学者。ルイ 14世の命 (1710) で,フランスの自然資源,産業資源の調査研究の任にあたり,これが動機となって多方面の研究を行なった。森林や化石の研究,陶磁器の化学成分の研究,鋼の製法,レオミュールの温度目盛り (列氏目盛り) の提唱,消化機能の研究などが知られているが,特に昆虫学の分野では当時の第一人者であった。主著『昆虫の生活に関する考察』 (34~42) 。

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百科事典マイペディア 「レオミュール」の意味・わかりやすい解説

レオミュール

フランスの自然学者,動物学者。初め法律を学び,のち工学に転向。製鋼・ガラス製造等の実用的技術の改良に従事したほか,水の氷点から沸点までを80度に分け列氏温度目盛を考案した。動物学でも昆虫や海生動物に関し多くの研究があり,《昆虫誌》全6巻(1734年―1742年)を刊行した。

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世界大百科事典(旧版)内のレオミュールの言及

【消化】より

…しかし彼は,消化液の作用も否定したわけではない。R.A.F.deレオミュールは金属製の籠に肉片や骨片をいれてトビに飲みこませ,破砕作用がなくても消化が起こることを実証した(1752)。大実験家L.スパランツァーニはこの方法を多種類の動物に広げ,自分自身も木製の小管を飲んで実験した。…

【鉄】より

…また,ベリマンT.O.Bergman(1735‐84)が化学分析によって鉄中の炭素を測定し,鋳鉄と鋼と鍛鉄の相違は炭素含有量の多少によることを明らかにした。 フランスではR.A.F.deレオミュールが浸炭鋼と可鍛鋳鉄の製造法を研究し,錬鉄に〈塩・硫黄物質(炭素)〉が入って浸炭鋼になり,鋳鉄から〈塩・硫黄物質〉が除去されて可鍛鋳鉄になることを証明し,前述のベリマンの研究に先行している。彼はまた職人に任せられていた技術・産業に学者の研究が重要であることを強調し,産業と技術を科学的に体系化することを意図した。…

【鋼】より

…また鍛鉄,鋼,鋳鉄の違いが炭素量の相違によるものであることは長い間理解されないままであった。鋼が焼入れによって硬化する原因,鍛鉄,鋼,鋳鉄の違いなどに初めて近代的な科学のメスを入れたのはフランスのR.A.F.deレオミュールである。彼は鉄が鋼に変化するときにフロギストンを得るという考えから脱して,鋼の硬化機構に関する最初の近代的理論を示した。…

※「レオミュール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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