翻訳|readiness
学習が効果的に行われるためには、学習者の側に、身体的にも心理的にも学習にふさわしい素地が用意されていなければならない。このような知能、知識、技能、体力、興味などの学習に必要な準備状態を総称してレディネスとよぶ。レディネスが学習者の側にできていないと、その学習は無効に終わるか、少なくとも非能率的にならざるをえない。
レディネスは成熟と経験によって形成されるが、とりわけ成熟の要因が大きく作用するので、学習におけるレディネスを重視するとき、とかく成熟待ちの学習指導に片寄りやすい。確かにレディネスは学習の前提条件であるが、同時に学習によって形成される場合も少なくない。そのうえ、レディネスさえ成立すれば、その後はどんな年齢でも効率的に学習が行われるわけではなく、子供の発達過程にはそれぞれ学習するにふさわしい時期が存在するわけで、学習のこの最適期を逃すと、学習効率が低下し、ときには徒労に終わってしまうことさえある。そこで、レディネスの概念のなかに、その学習可能性と学習適時性という視点を取り入れる必要性が強調されるようになってきた。
なおE・L・ソーンダイクは、レディネスを、刺激と反応とを結合させる準備の整った神経伝導単位の状態とみなし、準備の整った状態のときに学習すれば快を感じるが、この状態にあるのに学習しないなら、または準備のない状態なのに強いて学習させられるなら、不快を感じることになると述べている。
[滝沢武久]
特定の学習に必要な条件が学習者の側に整っている状態をさして用いられる。レディネスの要因は二つに大別される。一つは個々人の一般的発達水準であり,もう一つはその課題を学習するための前提となる知識や技能がすでに習得されているか否か,という要因である。1930年ごろから使われだした概念であるが,当初は人間の精神発達は主として神経系の成熟によるという理論を背景につくられたものであった。そのため,この概念の提起は子どもの発達水準を無視して早期から知識や技能を詰め込む傾向を戒める効果をもったが,同時に成熟待ちという消極的な教育の傾向も生んだ。その後,レディネスの存在を大枠において認めつつも,これを固定的・先見的に考えず,学習課題の分析を十分に行い,課題提示の順序などについてくふうを重ねることによって,積極的にレディネスをつくり出すという考え方に基づく努力もなされるようになった。
執筆者:茂木 俊彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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