精選版 日本国語大辞典 「レース」の意味・読み・例文・類語
レース
レース
レース
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
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糸を操作することによって透かし模様をつくりだしたもの。その技術とくふうによって模様は複雑、多様になる。また布地に透かし模様でつくった刺しゅうもレースとよぶ。
[田村彰三]
エジプトやインカの遺跡から、糸を巻いたボビン(糸巻)や精巧なレース織が発見され、欧州各地からスプラング(渡した糸をねじってつくるレース)が発掘されている事実から、古い伝統と歴史をもっていることがわかる。15世紀ごろには修道院の尼僧の日課としてつくられ、繊細で華麗なレース類が考えられた。網地をつくり模様の箇所を埋めるフィレ・レース、ドロンワーク、カットワークなどが生まれたのもこのころである。16世紀ごろになると、豪華な刺しゅうから清楚(せいそ)な衣装へと関心が変わり、布地を四角や丸角に切り取って糸を渡してかがる「レチセラ」、さらに布地に制約されない「プントインアリア」から、ニードルポイント・レースへと発展した。
フランスのルイ王朝では、豪華なレースが宮廷衣装として不可欠のものとなり、男性もレースを使用するなど、大量のものが要求され、各地で独得のレースがレース職人によってつくられた。また、婦人のたしなみとしてレース作りが広まり、現在のレースの諸技法はこのころに確立されたといっていい。やがてフランス革命が起こり、レースの需要は激減してレース職人は失業するが、手作りのレースは婦人の趣味として続けられた。
[田村彰三]
わが国のレースは奈良時代ごろから羅(ら)、絽(ろ)、紗(しゃ)などの織物類が装束や着尺としてつくられ、寺院の飾り結び、馬具の七宝結びなど、わずかに使用されている。
現在のいわゆるレース類は、明治の文明開化に伴い外国から伝来したもので、鹿鳴館(ろくめいかん)時代の欧風衣服の使用、洋服の普及とともに、レース編みは婦人の教養として普及した。糸、羊毛などの輸入とともに技術書も輸入され、日本人好みの繊細さが、やがて手内職として全国的に普及、レースを逆に輸出するまでになった。第二次世界大戦後、衣服としての編物、レースが必要となり、新しい糸、素材の開発に伴い、それにあわせた各技法のレースが流行するようになっている。
[田村彰三]
縫針を使うもので、厚手の紙または固めの布に模様を描き、輪郭線に糸を沿わせて別糸で留める。その糸を土台にして、模様の空間を種々のかがりで埋める。模様の間や縁との間に糸を渡し、その糸を芯(しん)にしてかがってつないだり(ブリッジ)、地埋めかがりで埋めて(グランド)から、模様の輪郭に別糸をのせ、ボタンホールステッチをして立体的にし、最後に紙または布にとじつけた別糸を切り離して仕上げる。
[田村彰三]
厚手の紙に描いた模様にあわせて、機械製のブレード(幅0.5~1.0センチ)をとじつけ、ブレードの合わせ目をつなぎ、模様の空間をかがって埋め、とじつけた糸を切って土台からはずして仕上げる。
[田村彰三]
糸を交差させたり、組み合わせてつくるレースで、糸をボビンに巻いて操作するのでボビン・レースといわれ、また台(ピロー)にピンで留めながらつくるので、ピロー・レースともいわれる。たくさんの糸を使う場合でも、操作する糸は4本を単位にする。動作は渡す(クロス)、ねじる(ツイスト)の二つだけだが、ピンの打ち方、進め方で形や模様がつくられる。
[田村彰三]
糸を指先で結び合わせてつくる。1本の糸を芯糸にして2回ずつ結ぶ巻き結び(横巻き結び、斜め巻き結び)、2本の糸を交互に芯糸にして結ぶくさり結び、4本の糸の2本を芯糸にして残り2本で交互に結ぶ平結びなどが基本で、その応用や素材の変化、色彩などによって平面のもの、立体のものなどがある。
[田村彰三]
長さ6~7センチメートルの舟型の板をあわせたシャトル(シャットル)に糸を巻き、指先で糸をくぐらせてシャトルの糸を芯糸にした結び目を連続させてつくる。シャトルの糸を輪にして結ぶリング編と、別糸を使って結ぶ2本どり編(ブリッジ編)があり、それを組み合わせて模様をつくる。
[田村彰三]
網針に糸を巻き、目板(ループの大きさを計る板)に糸を巻いて、前段ループに結び目をつくる。目数の増減、ループの大きさなどで模様や形をつくる。また、つくった網を土台にして、刺しゅうで模様を入れる。
[田村彰三]
円形、四角形などに糸を渡しておき、その糸を土台にして別糸で結んだりかがったりして模様をつくる。
〔1〕ニッティング・レース(棒針編みレース) 棒針で連続したループを編成し、他の棒針でそれぞれのループから新しく糸のループを引き出して、段を重ねて編み地を形成する。前段のループからいくつかのループも引き出す「増目」、前段の数ループを、一つのループにまとめてつくる「減目」、新しくループを作る「かけ目」などによって、透けた模様をつくる。
〔2〕クンスト・ストリッケン・レース ドイツ語で芸術編みのことで、ドイツをはじめヨーロッパ各地でつくられた。昔は細糸で、おもに中心から外側に向けて増減目、かけ目などで、花模様、幾何模様が編まれた。
〔3〕クロッシェ・レース(かぎ針編みレース) 糸を輪の状態にしておき、かぎ針またはレース編みで次のループを引き出して、一目ずつ編成しながら編み地を形成する。鎖編み、細編み、中長編、長編のほか、いろいろの技法がある。それらを組み合わせた模様編み地、「方眼編み」「ネット編み」「パインアップル編み」「七宝編み」などがある。ほかにも、おもに中心から編み始め、つなぎあわせる「モチーフ編み」がある。
〔4〕ブリューゲル・レース かぎ針編みで、テープ状に編みながら、図柄にしたがって曲げたり、間をつないでつくる。ゆるやかなカーブがつくられるので、ボーゲン・レース(スキーのあと)ともいわれている。
〔5〕ヘアピン・レース 髪のピンを使ったので、この名称がある。一定の幅に棒を立て、糸を巻きつけながらその中心で編んで両側にループのあるテープができる。
〔6〕アイリッシュクロッシェ・レース イギリスのアイルランド地方でよくつくられていたので、この名前がある。バラ、ブドウ、クローバーなどの草花をモチーフにして、芯糸を入れて浮き上がるように立体的につくる。台布に、編んだモチーフと縁を裏返しにしてとじつけ、その間をピコット付きのネット編みなどで地埋めをして、台布から外してつくる。
〔7〕アフガン・レース 棒棒編みとかぎ針編みの両方の編み方を使う編み方で、棒針の先がかぎ針状になったアフガン針を使う。往きは棒針と同じようにループをつくり、後戻りでかぎ針と同じ一目ずつ目を形成しながら戻る。増減目かけ目によって、透かし模様をつくる。
[田村彰三]
機械製の六角形のメッシュ(チュール)に刺しゅうしてつくるレース。網の目が三方向になるので、それを生かしてターニングステッチ、ボタンホールステッチ、バックステッチなどが使われる。
[田村彰三]
織機を使ってつくるレース。経(たて)糸をねじっておき、緯(よこ)糸を通してつくる。
[田村彰三]
1589年、イギリスのウイリアム・リーの靴下編機、1808年同国ジョン・ヒスコートのボビンネット機、1828年スイスのパイルマンの刺しゅうレース機などが発明され、手作りレースに近い質感をもたせる模様レースが、動力機械によって量産されるようになった。現在では、ボビン・レース機による撚(より)組織のリバー・レース、チュール・レース、また組紐(くみひも)機によるトーション・レース、メリヤス機によるラッセル・レース、刺しゅう機による刺しゅうレースと、ビニロン生地(きじ)に刺しゅうしておき、あとで生地を溶解して刺しゅう糸だけを残すケミカル・レースなどがつくられる。
[田村彰三]
『日本繊維意匠センター編・刊『レースの歴史とデザイン』(1979)』
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