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ロシア人 ロシアじんRussian

翻訳|Russian

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ロシア人
ロシアじん
Russian

ロシアの主要民族で,ロシアにおける人口約1億 3000万,旧ソ連邦諸国を含めると約1億 6000万に達する。そのほかアメリカ合衆国,カナダ,ヨーロッパ各地にも居住。ロシア語ウクライナ語,ベラルーシ語とともにスラブ語派の東スラブ語群を構成する。歴史的にはロシア人,ウクライナ人ベラルーシ人 (3者を東スラブ人と総称する) は,9~13世紀の古代ロシア人を共通の祖先とし,14~15世紀以降にそれぞれ独立の民族として発展してきたものと考えられている。 16~18世紀にロシア人の移住拡散が進行し,ロシア全土に及んだ。なかでも白海沿岸のポモル,リャザニ地方のメショラ,ドン川,クバニ川,テレク川,ウラル,シベリア地方のコサック,アルタイ地方の旧教徒,ザバイカリエ地方のセメイ,カザフスタンのフリーメーソン,シベリア極北地方のロシア人などは,それぞれ固有の伝統を保持し,特殊な集団を形成している。ロシア人は全体的に言語,衣食住,儀礼などから,北方・中部・南方ロシア人に分けられることがある。生業は麦類の栽培を主とする農業が中心で,家畜としてウマ,ウシ,ヒツジ,ヤギを飼育した。また各種の手工芸も盛んであった。村落は,北方では戸数の少い小集落,南方では戸数の多い大規模な村が一般的であった。家屋は丸太造が普通であった。社会組織としては独特な共同体が存在した。中部では共同体は定期的な土地の割替えを行なったが,北方の種々の共同体のなかには割替えを伴わないものもあった。共同体の一種にミールがあり,共同体内の諸問題はこのミールを介して処理された。こうした共同体の遺制として互助制度 (ポーモチ。ベラルーシ,ウクライナではトローカ) や共同労働 (アルチェリ) が最近まで行われていた。さらに日本における娘宿のような習慣 (ポシジェールキ) もあった。家族形態は小家族が主流であったが,北方には 15人以上の大家族や血縁者以外の者を含む家族共同体もみられ,19世紀末までは家長の権限は絶大であった。キリスト教以前の伝統的な信仰には,ダマボイと呼ばれる家神 (かまどの周辺や地下,屋根裏に宿って家や家族を守護する) を中心に,多くの精霊崇拝がみられた。ギリシア正教が全土に普及したのは 10世紀以降のことである。英雄叙事詩をはじめとする多様な口碑伝承も豊富であったが,1917年のロシア革命,ソ連邦国家時代を経てロシア人の社会は外面的にも内面的にも著しく変貌し,民族意識の新たな高揚がみられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

ロシアじん【ロシア人 Russkie】

広義にはかつてのロシア帝国の住民,あるいは東スラブ人,すなわち狭義のロシア人(別名大ロシア人),ウクライナ人(別名小ロシア人),ベラルーシ(白ロシア)人の総称として用いられることもあるが,一般には狭義に解してロシア語を母語とする民族を指す(大ロシア人あるいは小ロシア人という呼称は現在では用いられない)。ロシア人は旧ソ連邦における最大の民族で,1989年には旧ソ連邦の全人口2億8574万2500のうち50.8%にあたる1億4515万5500を数えた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ロシア人
ろしあじん
Русские Russkie

ロシア連邦の中核をなす民族。人口は旧ソ連領内に約1億4515万5000人(1989)で、その99.9%がロシア語を母語とする。本来の居住地はウラル山脈以西のヨーロッパ・ロシアであるが、16世紀以降のシベリア入植によって現在はシベリアの人口の90%以上を占めるに至っている。ロシア以外ではソ連崩壊後に独立したCIS(独立国家共同体)諸国、ヨーロッパ各地、アメリカ合衆国、カナダ、中国(俄羅斯族(おろすぞく))などにも常住している。ロシア語はインド・ヨーロッパ語族スラブ語群東スラブ語に属し、ウクライナ(小ロシア)語、白ロシア(ベロルシア)語と同じグループを形成する。形質的には他のスラブ諸族と同様に東ヨーロッパ人種に属し、中位の身長で、髪や目の色は明るいが、周辺の人々との混血も進んでいる。
 ロシア人はウクライナ人、白ロシア人らとともに13世紀ごろまで古ロシア人を構成しており、8世紀ごろよりノルマン人の進出によってノブゴロド、キエフを中心に国家を建設した。このころロシアの古形であるルーシРусь/Rus’という名称が生まれたが、その語源に定説はない。現在のロシア人は14、15世紀のモンゴル、タタールへの抵抗とモスクワを中心とした統一国家建設のなかで形成された。モスクワ大公国の独立以降領土は拡大の一途をたどり、19世紀には南は黒海、カスピ海沿岸から、北は北極海まで、西はポーランドから東は極東、アラスカにまで及んだ。その間ロシア人はコサックを先頭に各地に入植し、その地の先住民に対して、生業形態、物質文化、精神文化などに大きな影響を残した。ロシア人は古来家父長的大家族制(ミールмир/mir)を基礎にして村落をつくり、農耕を営んできたが、モスクワ大公国がロシア帝国として発展するとともに、多くの農民が農奴化された。それは国家の上層部が農民を掌握するための施策であったが、他方で国の膨張とは裏腹に社会の発展を阻害する結果になった。19世紀末に産業革命が起きたものの、それまでの社会的ひずみがあまりにも大きく、第一次世界大戦中に起きた革命は社会主義革命に発展し、1917年に世界で初めての社会主義国家が樹立された。
 ロシア人はことばと若干の文化要素の違いで北部と南部に大きく分けられ、それぞれ住居、服装などに特徴がある。さらにモスクワ周辺からオカ川、ボルガ川中流域が中部として両者の中間形態をなしている。住居は、北部では背の高い切妻型の屋根をした木造家屋が主流であるのに対し、南部では背が低く、ピラミッド型の屋根の家屋が多い。壁に粘土を塗ったり、れんが造にすることもある。農家の敷地には、家屋と付属の菜園があり、さらに穀物乾燥場と浴場(サウナ式の蒸し風呂(ぶろ))が建てられるのが一般的である。集落は南部に行くほど大きくなる傾向がある。服装は、北部、中部では農婦の着けるサラファンが、南部ではポニョーバという毛織物のスカートが特徴的である。未婚の女性は髪にリボンを着けるが、既婚者は頭巾(ずきん)(キーチカなど)で髪を隠す。男性の伝統衣装はルバシカとよばれる上衣が中心であった。食事はライムギの黒パンなどが主食で、特徴的な料理にサリャンカ、ボルシチ、ピロシキなどがある。
 宗教は、10世紀にキエフ大公国のウラジーミル大公が改宗して以来、ギリシア正教(ロシア正教、東方正教会)が普及している。現在、大部分が17世紀にモスクワ総主教ニコンによって改革された信仰に従っているが、それに反発したものは分離派(ラスコーリニキ)とよばれ、シベリア、中央アジアなど周辺地域で旧来の信仰を守っている。ロシア人はキリスト教普及以前には雷神ペルーンを中心にした多神教的な宗教をもっていたが、その一部はキリスト教のなかに取り入れられ、融合した。民間伝承では家霊(ドモボイ)、水霊(ボジャノイ、ルサールカ)、森霊(レーシー)、魔女、吸血鬼などが盛んに登場し、民衆の素朴な信仰を端的に表している。
 ロシアの民間芸術も概して素朴なものであるが、それだけに人の心を打つものが多い。木工芸や銀細工、ミニアチュールなどの工芸品や民謡、ブイリーナ(古い英雄伝説を独特の節をつけて歌ったもの)、チャストゥーシュカ(風刺をきかせた歌)などは、近現代のロシアの文学、美術、音楽、演劇などに大きな影響を与えている。[佐々木史郎]
『森安達也編『民族の世界史 10 スラヴ民族と東欧ロシア』(1986・山川出版社) ▽大木伸一編訳『ロシアの民俗学』(1985・岩崎美術社) ▽ヘドリック・スミス著、高田正純訳『ロシア人』上下(1985・時事通信社) ▽ヘドリック・スミス著、飯田健一監訳『新・ロシア人』上下(1991・日本放送出版協会) ▽中村喜和著『遠景のロシア――歴史と民俗の旅』(1996・彩流社) ▽五十嵐徳子著『現代ロシア人の意識構造』(1999・大阪大学出版会)』

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世界大百科事典内のロシア人の言及

【ロシア】より

…1917年の革命以前の国名であるロシア帝国の領域には旧ソ連のほとんどすべての領土のほかに,ポーランドとフィンランドが含まれていた。旧ロシア帝国もソ連もきわめて多くの民族から成り立っているという点で共通しているが,一貫して最も中心的な立場にあるのがロシア人である。
[名称の由来]
 ロシアという言葉が文献に表れるのは15世紀末,それが国家の名称として公式に用いられるのは18世紀初めからであって,それ以前はルーシRus’という古形が使われた。…

※「ロシア人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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