ローバック(読み)ろーばっく(英語表記)John Roebuck

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローバック」の意味・わかりやすい解説

ローバック
ろーばっく
John Roebuck
(1718―1794)

イギリスの発明家、工業家。シェフィールドの金属業者の息子に生まれる。初めはエジンバラで、ついでライデンで学び1742年に医学博士となる。バーミンガムで医師として開業したが、医療よりも化学を好み、化学コンサルタントなどの仕事に移る。微粉の金銀を回収・精錬する方法を発明し、1746年までにサミュエル・ガーベットSamuel Garbett(1717―1803)とともに貴金属精錬業を設立、すぐに鉛室による硫酸製造法を発明、実施した。ローバックの目的は、貴金属精錬のための硝酸の中間原料としての硫酸を供給することであったが、漂白業での需要が大きくなり、1749年に漂白業の集中しているエジンバラの近くのプレストンパンズに第二の工場を建設した。彼らの事業は拡大し、さらに1759年にはスコットランドカロン製鉄所を建設した。この製鉄所はスミートンの製作した送風機を設置するなど当時の最新鋭工場であり、大砲など軍需品の生産で大きく発展した。ローバックはさらに炭鉱や製塩工場にも手を伸ばしたが、これらは成功せず、それまでに蓄積した資本を使い尽くす結果となった。

[加藤邦興]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ローバック」の意味・わかりやすい解説

ローバック
John Roebuck
生没年:1718-94

イギリスの化学者,工業家。シェフィールドの生れ。エジンバラ大学で医学を学び,そこでJ.ブラックの講義を聴き化学に興味をもつようになった。1742年ライデン大学で医学の学位をとり,バーミンガムで開業したが,医療よりも化学の実験に多くの時間をさいた。46年鉛室を用いて硫酸を製造する〈鉛室法〉を発明し,硫酸の製造法に革命をもたらす。その後,製鉄業関心を向け,59年製鉄所を建設し製鉄法に種々の改良を試みて成功した。ついで製鉄所へ石炭を供給するのに炭坑を借り受けたが,大量の出水にあい,その排水のためJ.ワット蒸気機関に注目し,その改良に経済的援助をした。しかしこれは炭坑の排水には不十分なものであった。この炭坑事業の苦境にアルカリ製造業の失敗などが加わり,破産した。その後は炭坑の管理などをしながら余生を送った。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ローバック」の意味・わかりやすい解説

ローバック

英国の化学技師。エディンバラ大学およびライデン大学に学ぶ。医者を開業したが化学の研究に熱中,1746年鉛室法による硫酸製造法を発明し,1749年硫酸工場を建設。1760年製鉄工場を建設し製鉄法に改良を加えた。また炭鉱を経営し,炭坑の排水の問題からワットの蒸気機関に関心を示し,彼を後援した。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のローバックの言及

【産業革命】より

…しかし,ダービーの発明以来,その需要は急増し,1800年の生産量は1100万tを超えた。T.ニューコメンの大気圧機関を改良したワットの蒸気機関も,本来は炭坑の排水用に使われたものだが,1769年に認められたワットの特許を商品化するのに力を貸したスコットランドのJ.ローバック,バーミンガムのM.ボールトンがいずれも製鉄業者であったことは,鉄と石炭と蒸気機関の密接な関係を象徴している。 1781年にこれもワットがクランクの装置を発明し,往復運動を回転運動に転換することが可能となり,紡績機や機関車などに蒸気機関が利用される道が開かれた。…

※「ローバック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android