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ワシ eagles

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ワシ
eagles

タカ目,ハヤブサ目のうち比較的大型の種の総称。小型種,中型種はタカとして区別されているが明確な境界はない。この分け方と名称は分類学的なものではなく,あくまでも日本における古くからの慣習に従ったものである。それゆえ,大型の種がすべて eagleという英名で呼ばれているわけではない。ヘビクイワシや果実が主食のヤシハゲワシ Gypohierax angolensis のように特異な種もいるが,一般に体の特徴や行動もタカと大きく変わらない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ワシ
わし / 鷲
eagle

鳥綱タカ目に属する鳥のうち、大形で強力な種に対する呼称であるが、分類学的にまとまったグループをさす名称ではない。ワシとよばれる仲間には、ヘビクイワシ、ウミワシ類、ハゲワシ類、カンムリワシ類、オウギワシ類、イヌワシ類などがある。しかし、カンムリワシ類はトビより小さい種も含み、他のワシよりもタカに近い。一方、クマタカ類にはタカと名のつくものが多いが、ワシと同じ大きさのものまであり、英名ではhawk eagle(タカワシの意)とよばれるようにイヌワシ類の仲間と考えられる。ワシ類は、生活様式もさまざまで、開けた草原や岩石地帯にすむもの、大きな森林にすむもの、海岸や湖沼の近くにすむものなどがあり、獲物も哺乳類(ほにゅうるい)、鳥類、爬虫類(はちゅうるい)、魚類に及び、動物の死体を主食とするものもある。翼は広くて長く、ゆっくりした羽ばたきをときどき交えて悠々と輪を描いて飛ぶことが多く、イヌワシ類は獲物をみつけると猛スピードで急降下してとらえる。大木や岩棚の上に枯れ枝で大きな巣をつくる。一つの巣を何年も続けて使うこともあるが、一つがいがいくつかの巣場所をもち、これを交代で使う場合もある。
 ヘビクイワシは冠羽と長い足をもった特殊な種で、アフリカの草原にすみ、ヘビやトカゲを食べる。ウミワシ類には約10種があり、海岸や湖の近くにすみ、魚類を主食としている。ハゲワシ類はアフリカ、インドを中心に約14種があり、翼開張約2.8メートルに達する大きな種もある。哺乳類の死体に群がる。カンムリワシ類は比較的小形で、12種がある。ヘビを主食とするものが多く、指のつかむ力が強い。オウギワシ類には、南アメリカに分布する巨大で力の強いオウギワシ、フィリピンに分布するサルクイワシを含めた4種があり、森林にすみ、樹上性のサルやナマケモノを食べる。ヤマワシ類には、真正ワシともいわれるイヌワシ属Aguila9種と、クマタカ類が含まれる。イヌワシ属は草原や岩石地にすみ、真の森林性の種はいない。動作は敏活で、哺乳類や鳥類を襲ってとらえる。このほかワシの仲間には、アフリカ産のダルマワシやゴマバラワシ、インドから東南アジアに分布するカザノワシなどの特殊な種がいる。
 日本ではクロハゲワシ(迷鳥)、オジロワシ、オオワシ、カンムリワシ、イヌワシ、カタジロワシ(迷鳥)、カラフトワシ(迷鳥)の7種が記録されているが、いずれもその数は少なく、迷鳥以外は、国の天然記念物に指定されている。[高野伸二]

民俗

ワシはその飛翔(ひしょう)力と雄姿から鳥の王者とされ、古代文明地帯ばかりではなく、広く信仰や尊崇の対象になっている。古代ギリシアではゼウスの聖鳥として知られるが、ゼウスはワシに化してトロヤ王の子ガニメデスをさらい、酒をくむ童にした。星座のわし座とみずがめ座の由来譚(ゆらいたん)である。古代インドの『リグ・ベーダ』では、酒の原料になる神聖な植物ソーマは、天の高所からワシによってインドラの信者にもたらされたという。古代オリエントのキタナ神話では、ヘビに襲われて傷ついたワシは、助けてくれたエタナの妻が難産で死に瀕(ひん)した際に、薬の木のある天に向かってエタナの妻を連れて飛ぶが、天のイシュタル神のところに着く前に、力尽きて落ちたと伝える。ワシが人間を運ぶという史伝的な物語は少なくない。日本では、ワシにさらわれた赤子の物語がある。『日本霊異記(にほんりょういき)』の皇極天皇(こうぎょくてんのう)2年(643)に、但馬国(たじまのくに)(兵庫県北部)の赤子が丹後国(たんごのくに)(京都府北部)でワシの巣から救い出され、その父に巡り会ったという。歴史的には、東大寺の開基良弁僧正(ろうべんそうじょう)の生い立ちとして著名である。すでに『宝物集』にみえ、『東大寺要録』でもこれを認め、東大寺境内にはその際の良弁杉もあった。
 ワシの羽根や綿毛を頭飾りや儀礼に用いる習俗は、北米先住民に発達している。しかし、類似のものは各地にあり、チロール地方では帽子の飾りにワシの羽根をつける。そのほか、ワシは古代から王権の標章とされ、神聖ローマ帝国などの双頭のワシ、十字軍のイヌワシなど、紋章・軍旗に用いられた。新しくはアメリカ合衆国のハクトウワシの標章もある。日本では、ワシの信仰はあまり明確ではない。『古語拾遺(こごしゅうい)』などに、朝廷の祭祀(さいし)にあずかった斎部(いんべ)氏の祖を天日鷲命(あめのひわしのみこと)と伝えるが、この神がワシの神格であったという証拠はない。[小島瓔

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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