ワット
Watt, James
[生]1736.1.19. グリーノック
[没]1819.8.25/19. ヒースフィールド
スコットランドの技術者。 1755年ロンドンに出て機械工となるが,成功せず,帰郷。グラスゴー大学で器具製作者として構内で開業。大学からニューコメンの大気圧機関の模型の修理を依頼されたことから,蒸気機関の改良に専念することになり,火力機関の蒸気と燃料の消費を軽減させる分離凝縮器を発明,69年特許を取った。 75年バーミンガムに移り,M.ボールトンと共同で蒸気機関製造会社を設立し,蒸気機関の改良研究を続けた。 81年に往復運動を回転運動に変える遊星歯車装置の特許を取り,さらに膨張作動法,複動機関の特許を取った (1782) 。その後も平行運動機構 (84) ,遠心調速機 (88) と,次々と改良を重ね,蒸気機関の性能・用途を飛躍的に拡大させることによって,炭鉱の町コーンウォールを中心とするイギリス産業革命の一大推進力となった。彼の研究は専門科学の訓練を受けていなかったとはいえ,当時の熱学の最高水準の知識に裏づけられたすぐれたものであった。馬力という単位はワット機関の使用料を決めるために彼が創設したものである。
ワット
watt
仕事率,電力,放射束の SI組立単位。記号はW。 1Wは1秒間に 1Jの仕事をする仕事率,または電位差 1Vのもとで 1Aの電流が1秒間に運ぶ電力。また1秒間にある面を通過する 1Jの放射エネルギーつまり放射束でもある。単位名は J.ワットの名にちなむ。
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ワット
実用的な蒸気機関を完成させた英国の技術者,発明家。スコットランドの大工の子で,父の仕事場で働いたのちロンドンに出て機械職人となり,帰郷後グラスゴー大学構内に数学器械製造の仕事場を開く。ここでニューコメンの大気圧機関の模型の修理を託されたことから,蒸気機関改良の研究に入り,1765年に復水器の着想を得たが,実用化は困難をきわめ,1774年バーミンガムに移る。ここでボールトンの援助のもと蒸気機関の実用化試験に成功,1775年ボールトン・ワット商会を開いて蒸気機関の商業的生産に乗り出した。1782年には回転機関の特許を取得,その後も蒸気弁,調速機などの発明を重ね,汎用原動機としての蒸気機関を完成させた。蒸気機関のほかにも測量器械の改良その他多くの発明がある。
→関連項目ウィルキンソン|産業革命|馬力|ローバック|ワット(単位)
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ワット
James Watt
1736〜1819
イギリスの発明家
1765年ニューコメンの発明した蒸気機関の改良に成功。シリンダーと冷却器の分離,ピストンの往復運動を回転運動に変えることの成功により,出力は従来の2倍以上,石炭の消費量は約7分の1に減少し,あらゆる機械の動力として用いられ,産業革命の進展に大きな力となった。
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ワット【watt】
仕事率・電力の国際単位。記号は「W」。1Wは毎秒1ジュールの割合で仕事をするときの仕事率(1W=1J/s)。また、1Vの電圧で1Aの電流が、1秒間に消費される電力(1W=1V・A)をいう。1馬力の仕事率は約746Wである。◇名称は、イギリスの発明家ワットにちなむ。
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ワット
〘名〙 (watt ジェームズ=ワットの名にちなむ) 仕事率および電力の単位。記号W 一ワットは一秒間に一ジュールの仕事をする仕事率をいい、一ボルトの電位差のある二点間を一アンペアの電流が流れるときの仕事率に等しい。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
ワット
(James Watt ジェームズ━) イギリスの機械技術者。蒸気機関などの発明製造を行ない、イギリス産業革命において、多大な貢献をした。(一七三六‐一八一九)
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知恵蔵
「ワット」の解説
ワット
単位時間になされる仕事(すなわち工率、仕事率、電力、放射束など)の単位。固有の名称を持つSI組立単位で、英国の技術者の名にちなむ。1 Wは、毎秒1 Jの仕事がなされる工率、同じ割合でエネルギーが伝達・消費される電力、放射束などに当たる。
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デジタル大辞泉
「ワット」の意味・読み・例文・類語
ワット(James Watt)
[1736~1819]英国の機械技術者。ニューコメンの大気圧機関の改良から蒸気機関を発明、産業革命の発展に貢献した。複動機関・回転機関・遠心調速器・圧力計なども発明。
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ワット
ワット
watt
記号 W.1 s(秒)間に1 J(ジュール)の仕事をするという仕事率のMKSA単位系および国際単位系(SI単位).J. Wattの名前にちなむ.
1 W = 1 J s-1.
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ワット
電力の大きさの単位。電力の大きさは電流と電圧を掛け合わせたもので、1A(アンペア)と1V(ボルト)を掛け合わせると、1W(ワット)になる。
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ワット【watt】
仕事率(工率),電力あるいは放射束の単位で,記号はW。1W=1J/sである。すなわち,1Wは1秒間に1J(ジュール)のエネルギーの割合である。仕事率でいえば,体重50kgの人が3mの高さの階段を3秒間であがったとき,地球の重力の加速度を9.8m/s2とすると,使われたエネルギーは50kg×9.8m/s2×3m=1470Jである。これを3秒間で行ったから,その仕事率は1470J÷3s=490Wである。
ワット【James Watt】
1736‐1819
イギリスの技術者。スコットランドの港町グリーノックの生れ。父は船大工で,のちに船具などを商った。父はジェームズに家業を継がせるつもりであったらしく,職人の年季奉公へは出さず自分の仕事場で機械類の製作などを手伝わせた。17歳のとき,母の死と父の仕事上の困難のため一人立ちせざるをえなくなり,機械製造人になるためグラスゴーに出る。しかし,グラスゴーでは適当な親方が見つからず,当時優れた数学機械職人が集まっていたロンドンへいき,1年間だけ親方の下で学んだ。
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世界大百科事典内のワットの言及
【エネルギー】より
…MKS単位系では,仕事の単位は〈力の単位〉×〈長さの単位〉でN・mとなり,これをジュール(J)と呼ぶ。エネルギーの変化率は仕事率と同じくワット(W=J/s)で測られる。エネルギーの単位として原子物理学では電子が1Vの電位差で加速されたとき得るエネルギー,電子ボルト(eV)を用いることが多い。…
【電力】より
…毎秒当りのエネルギーを一般に仕事率というが,電気エネルギーの場合にはこれを電力と呼び単位をワット(記号W)で表す。すなわち1W=1J/sである。…
【カレドニア運河】より
…このため全長97kmのうち,人工の運河部分は35kmにすぎない。1773年にJ.ワットが調査を実施し,その後T.テルフォードが1803‐22年と1843‐47年の2期にかけて工事を完成した。最大32mの水位差を29の閘門で克服し,平均深度5.5mで600トンまでの船舶が通行できるが,現在は漁船の利用も減少し,遊覧船が航行するのみである。…
【工場】より
…さらに,水力の得やすい山間僻地にしか工場が設けられないという不便さがあった。工場をこれらの自然的制約から解放し,その能力を十分に発揮させたのはワットの複動式蒸気機関である。綿工業界において最初にこれを備え付けたのはアークライトの紡績工場で,1790年であった。…
【産業革命】より
…綿業は,紡績部門と織布部門とに大別されるが,両部門の技術革新が跛行的に進行し,互いに刺激を与え合ったことも,その急成長の一因であった。1785年にJ.ワットの蒸気機関が紡績に利用されるようになると,それまでの水力紡績機とは違って,工場の立地や生産の集中に対する制約がなくなり,ランカシャーを中心に,大工場の林立する綿工業都市が多数成立した。 軽工業である綿業の創業資金は比較的少額であったうえ,株式会社こそ法によって禁止されていたものの,〈パートナーシップ〉制などによって負担を分散することができたから,その創業者は社会のほとんどあらゆる階層から出現した。…
【蒸気機関】より
…これでは冷却されたシリンダー内にボイラーからの蒸気を送るため,シリンダーの温度を高めるのに多くの蒸気がむだに凝縮される。そこで65年J.ワットはまずこのむだをなくして蒸気の節約をはかるため,蒸気の凝縮をシリンダー外の別の容器,すなわち復水器において行わせるように改良した。しかしこれらの機関はむしろ大気圧を利用するものであって,蒸気の圧力を直接に利用するものではなかった。…
【石炭鉱業】より
…18世紀後半以来の産業革命が〈鉄と石炭の革命〉と呼ばれるひとつの理由がここにある。他方,J.ワットが改良・普及させた蒸気機関はそれ自体,その先駆となったニューコメン機関以来,主として炭坑を含む鉱山の排水用につくられたものであったが,おもに人力ないし馬に依存していた動力源を,決定的に石炭に転換させる役割を果たし,産業革命の原動力となった。このため,16世紀以来発展しつつあったイギリスの石炭鉱業は,産業革命の進行とともに驚異的な成長を遂げ,イギリスが世界帝国となっていった19世紀にも,鉄道の普及と蒸気船による海上交通の発達によってその需要が激増した。…
【ブラック】より
…優れた教師として名声を博す。潜熱と比熱の概念を提唱し(1756‐60),J.ワットに影響を与える。結石治療薬の研究中,石灰や炭酸マグネシウムの加熱による重量減少が空気とは異なる気体の放出によることを見いだし,これを固定空気(炭酸ガス)と命名した(1756)。…
【ボイラー】より
…これらは大気圧の蒸気を用いそれが凝縮するとき生ずる真空を利用するという方式であったから,その当時のボイラーは単なる銅製の球形に近い容器で湯をわかしていたにすぎない。J.ワットは,それまでの蒸気機関に大改造を加えほぼ後年の蒸気機関に近いものへ仕立て上げた。すなわち,蒸気機関のシリンダーとは独立に復水器を設ける一方,ボイラーを細長い形状とし構造的に強くかつ伝熱面が広くとれるように改良して,大気圧より高い圧力の蒸気をかなり大量に発生できるようにし,熱効率の改善と大型化への道を開いた。…
【ボールトン・ワット商会】より
…イギリス産業革命期に活躍した世界最初の蒸気機関製造会社。蒸気機関の発明者であるJ.ワットとバーミンガムの金属加工業者ボールトンMatthew Boulton(1728‐1809)との合名会社として1775年設立された。同商会は当初,蒸気機関の設計,設置,コンサルティング業務に専念し,シリンダーをはじめ部品の大部分は外注していた。…
【ルナ・ソサエティ】より
…その発端は1765年に締め金具の製造者ボールトンMatthew Boultonと医師E.ダーウィン(C.ダーウィンの祖父),教育者スモールWilliam Smallがアメリカ人フランクリンとともに催した月例談話会にある。これに陶器業者ウェッジウッド,蒸気機関の開発者ワット,化学工業の開拓者キアJames Keir,馬車の緩衝装置を発明したエッジワースRichard Edgeworth,それに気体化学の先駆者J.プリーストリーが加わり,相互啓発によって多数の新くふうや理論を生みだした。しかし彼らはフランス革命とアメリカ独立を支持し,奴隷解放を力説するなど,革新的政治姿勢を示したため,地元民の反発を買い,プリーストリー邸焼打ちなどの妨害を加えられ,19世紀初頭には自然消滅した。…
※「ワット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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