作曲家・ピアノ奏者。神戸生まれ。作曲を平尾貴四男(きしお)(1907―1953)と池内友次郎(いけのうちともじろう)(1906―1991)に、ピアノを原智恵子(1914―2001)に師事。1949年(昭和24)にピアノ・ソナタで第19回日本音楽コンクール作曲部門(室内楽曲)第1位を17歳の若さで獲得する。1952年渡米、ジュリアード音楽学校に留学。1959年にニューヨークのニュー・スクールでジョン・ケージに師事、その後の一柳の作曲活動を左右することになる影響を受ける。1961年(昭和36)に帰国後、ケージをはじめとするアメリカの実験主義音楽を紹介するほか、『ピアノ音楽』第1~7番(1959~1961)、『弦楽器のために第1・第2』(1961)、『プラティヤハラ・イヴェント』(1963)など、図形楽譜を用いた実験主義的な自作を発表する。一柳による紹介を機に「ジョン・ケージ・ショック」とよばれるセンセーションを日本の作曲界に引き起こす。
『ピアノ・メディア』(1972)をはじめ、『タイム・シークエンス』(1976)、『二つの存在』(1980)、バイオリンとオーケストラのための『循環する風景』(1983。第32回尾高賞)など、1970年代以降の作品は通常の五線記譜法に戻るが、そこには、実験主義的な作品で提起された柔軟で多層的な時間構造が反映されている。バイオリンと笙(しょう)のための『月の変容』(1988)、箏(そう)とオーケストラのための『始源』(1989)など邦楽器のための作品も多数ある。フランス芸術文化勲章(1984)、紫綬(しじゅ)褒章(1999)、サントリー音楽賞(2001)などを受けた。著書に『音を聴く』『音楽という営み』がある。
[楢崎洋子]
2018年(平成30)に文化勲章受章。
[編集部 2018年11月19日]
『『音を聴く――音楽の明日を考える』(1984・岩波書店)』▽『『音楽という営み』(1998・NTT出版)』▽『岩城宏之・一柳慧他著『行動する作曲家たち――岩城宏之対談集』(1986・新潮社)』▽『水沢勉・矢萩喜従郎編『点在する中心――「創造」をめぐる10の対話』(1995・春秋社)』▽『日本芸術文化振興会、国立劇場調査養成部芸能調査室監修・編『現代の日本音楽第1集 一柳慧作品』(1999・春秋社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報
…事実,こうした呼び方もされることがある。たとえば落語やポピュラー音楽などの素材を重ねている一柳慧の電子音楽《Tokyo1969》はアッサンブラージュの音楽,《乙女の祈り》を引用し,それを断ち切る現代的なスタイルの音楽との交互の展開がみられる松平頼暁のコンボのための《オルタネーション》(1967)は,コラージュ音楽と呼ぶべきかもしれない。【秋山 邦晴】。…
…パフォーマンスを行うグループや場所は流動的であり,61年にジョージ・マチューナスGeorge Maciunasがパフォーマンスの専門誌を作るために考え出した〈フルクサスFluxus〉(雑誌は実現しなかった)は,やがて当時のパフォーマーを横断的に結びつける国際的な組織の名になったが,ラテン語で〈流れ〉を意味するfluxusと英語のflux us(われわれを融合する)とをかけたこの語は,当時のパフォーマーの流動的な関係にふさわしいものであった。このことは,ニューヨーク美術界の刺激を受けて活気づいていた〈読売アンデパンダン展〉(日本アンデパンダン展)出品作家たちの活動と,ケージに学んだ一柳慧(いちやなぎとし)や小野洋子らの媒介でしだいに日本にも形成されはじめたさまざまな芸術グループにもあてはまる。ともに1960年創立の〈グループ音楽〉(小杉武久,刀根康尚,塩見千枝子ほか),〈ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ〉(篠原有司男(うしお),吉村益信,風倉省作ほか),62年10月の車中パフォーマンス《山手線事件》や63年5月の街頭パフォーマンス《第一次ミキサー計画》のメンバーによる〈ハイレッド・センター〉(赤瀬川原平,中西夏之,高松次郎ほか)などは,互いに相互関係をもっただけではなく,〈暗黒舞踏〉の土方巽(ひじかたたつみ)や実験映画グループ〈ヴァン映画科学研究所〉(足立正生ほか)などとも,また海外の〈フルクサス〉とも横断的な関係をもった。…
※「一柳慧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新