広義には消費財一般を課税対象とする間接税の一種。一般消費税の課税標準は消費一般であるが、物税であり、個人の担税力をきめ細かく考慮して制定された税ではない。個人所得税のように各納税者について消費額(所得額-貯蓄額)を総合して課税される人税の総合消費税expenditure taxとは異なるから、注意を要する。生活必需品を免税扱いにしたり軽減税率を適用することにより、ある程度まで間接的に担税力への考慮は払われるが、それ以外は一律に比例税率で課されるのが一般的である。
日本においていう一般消費税は、1978年(昭和53)大平内閣のもとで導入が計られ断念された税をさす。赤字国債の急増、高齢化社会の到来、所得の平準化とサラリーマンの重税感などの状況に対応するために、政府税制調査会の一般消費税特別部会において、5%の単一税率の一般消費税が提案されたが、世論の猛反対をうけ導入は断念された。その後、所得、消費、資産の間で均衡の取れた安定的な税制の必要性を訴えた竹下内閣によって、1988年12月に消費税の導入を含む「税制改革6法案」が成立し、1989年(平成1)4月から施行された。
租税の類型においては消費型の付加価値税と同じであり、減価償却を除いた国民純生産(NNP)よりも狭い課税標準である消費(=NNP-投資額)に対して課税される。ヨーロッパ連合(EU)の付加価値税の前身ともいえる取引高税は、取引段階ごとに売上高に課税されたため、税にさらに税が課される形で取引段階の増加とともに税負担が累積的に増大するという欠点をもっていた。消費一般に対する税が多段階で課税せねばならないというわけではないが、EU型の付加価値税と同じく、日本で構想された一般消費税も多段階課税方式を採用しており、前段階から仕入れた中間財の価値は控除して各段階で生じた付加価値のみを課税標準とし、税が幾重にも累積的に増大していくという取引高税の欠点は除かれている。「一般消費税」とよばれるのは、多段階課税をするにもかかわらず、税負担は次々と前方に転嫁されて、結局は価格の一部として消費者が負担することが期待されていることと、生産的消費(投資)に対応する生産財を免税とすることにより、消費財生産における付加価値のみを課税対象としているからである。最終消費という単一の取引段階に課税する小売税も別の形態の一般消費税であり、多段階の取引段階で生ずる付加価値の合計額は最終消費額に一致する。
一般消費税の課税標準は消費であり、消費一般に対して一定税率で課税されるから、課税標準の消費に対しては比例税であり逆進税ではないが、しばしば所得に対する税額の比率で税の逆進性を定義するから、一般消費税は所得に対しては逆進税であるとされる。一般消費税の短所の一つとして、税負担の逆進性があげられるから、将来消費税率がEU諸国なみに20%くらいにまで引き上げられることになった場合には、逆進性の緩和が重要な課題となる。
しかし、逆進性は、生活必需品を課税対象から外すことにより、かなり緩和できる。また、導入時にインフレを引き起こすという批判もあり、経済状態をよく考えて導入する必要も指摘されている。
[林 正寿]
…狭義には取引高あるいは売上高を課税標準とし,通常は比例税率で課される税金を指す。一般売上税,一般取引税ともいう。この取引高という課税標準は,各生産段階で付加された価値だけでなく前段階から仕入れた中間財の価値も含んでいるから,国民総生産(GNP)の数倍にもなるほどに大きいので,低い税率でも巨額の税収を上げることができるという長所がある。他方,各段階での課税標準には前段階で支払われた税額が含まれているから,課税は何重にもなされることになる。…
…関税には輸出税,輸入税,通過税があり,かつては国税収入の高い割合を占めていたが,近年はこの割合が大幅に低下しており,85年度にはわずか1.6%を占めるにすぎない。 1975年以降の大幅な財政赤字に対処するための措置として,クローズアップされてきたのが一般消費税である。これはいくつかの例外を除いて,消費全体が課税対象となる点では総合消費税と同じであるが,総合消費税が所得税のように人税であるのに対して,一般消費税は物税であり,直接的に消費者に課税されるのではなく,流通段階最後の小売段階で課されるか,あるいは生産から流通をとおり最終的に消費者にいたるまでの各段階で課税される。…
…直接税は間接税と比べ,納税者によって負担として意識される程度が高く,公共サービスを負担との関係において選択するためには望ましいが,それだけに租税に対する抵抗が強いから必要な税収を十分に確保できないおそれがある。日本でも70年代半ば以降導入が論議され,89年4月より実施された一般消費税も,多分に財源調達のためという目的が強い。また直接税は納税者の負担能力に合わせて細かく調整ができるのであるが,所得の補足率の問題に代表されるような税務行政上の深刻な制約条件がある。…
…また,付加価値税を課するさいに,たんなる迂回生産にしかすぎない投資を課税標準に含めるべきかどうかが問題であり,消費のみを課税標準にとるならば消費型の付加価値税となる。一般消費税というのは,基本的には消費一般を課税標準とする多段階売上税をさすものである。 日本では,付加価値税は府県のための地方税としてシャウプ勧告において提案され,1950年に地方税法にとり入れられたが,納税者の反対が強かったため実施延期を重ね,ついに54年に廃止となった。…
※「一般消費税」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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