中国、唐代の詩の選集。編者は南宋(なんそう)の周弼(しゅうひつ)。七言絶句、七言律詩、五言律詩の三つの形式(三体)に限り、唐の167人の作、494首を収める。各形式を詩の構成や表現のスタイルによって、合計21の「格」に分類し、それぞれ「実接」「虚接」「前実後虚」などと名づけて解説を加える。その「虚実」の説は詩の表現の理論としてきわめて興味深い。後の明(みん)代にできた『唐詩選』が雄健悲壮な初唐、盛唐の詩をおもに選んでいるのに対し、許渾(きょこん)、杜牧(とぼく)など中唐、晩唐の詩を多く採録し、平淡閑雅または警抜華麗な感覚を重んずる。元(げん)の僧円至と裴庾(はいゆ)の注を付した三巻本(原題『増註唐賢絶句三体詩法』)がもっとも普及したが、二十巻本、清(しん)の高士奇注の六巻本もある。日本でも室町時代の五山の禅僧たちに始まって広く愛読され、刊本の種類が多く、注釈も僧素隠『三体詩抄』、宇都宮遯菴(とんあん)『三体詩詳解』、明治になって野口寧斎『三体詩評釈』などがある。
[村上哲見]
『村上哲見著『中国古典選29~32 三体詩1~4』(1978・朝日新聞社)』
中国,唐代の詩の選集。南宋の周弼(しゆうひつ)編。七言絶句,七言律詩,五言律詩の3形式(三体)に限り,167人の作品494首を収める。原名を《唐賢三体詩法》といい,作詩の教本として編集され,詩の構成や表現の特色などによって各形式を6~8,合計21類に分け(実接,虚接,前虚後実など),各類に解説を付する。それは宋代に詩論が盛んになったこと,また作詩が大衆化したことを示している。《唐詩選》が初唐・盛唐の詩を重んずるのに対し,許渾,杜牧など中唐・晩唐の詩を多く採る。元の僧円至と裴庾(はいゆ)の注を付した3巻本が普及したが,20巻本,清の高士奇注6巻本もある。日本でも室町時代以来広く愛読されて刊本の種類ははなはだ多く,注釈も五山の禅僧の講義録(抄物)を集成した《三体詩素隠抄》が江戸初期に出版され,その後,熊谷立閑《三体詩備考大成》,宇都宮遯菴《三体詩詳解》,明治になって野口寧斎の《三体詩評釈》などがある。
執筆者:村上 哲見
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…宋代には詩論・詩話の類,つまり作詩法の著述が流行し,それらが印刷されていたのである。日本にも伝えられて久しく読まれていた《三体詩》も,作詩法の教科書であった。 南宋のころ北方を占拠した金とそれにかわって全土を支配した元,二つの異民族の統治の下でも漢民族の文化は維持された。…
…同じ艶体の詩でも李より後輩の韓偓(かんあく)の《香奩(こうれん)集》のほうが江戸の末に相当な数の読者を有していた。 唐詩の選集について言えば,日本で最も広く読まれたのは宋の周弼(しゆうひつ)の《三体詩》と明の李攀竜(りはんりゆう)の《唐詩選》で,中・晩唐の詩は前者により,初唐と盛唐の詩は後者によって知られた(前者の翻刻の初版は1654年で,後者は少し遅れる)。前者は今体詩だけを収め唐詩の繊細優艶の面が強調されたことになる。…
※「三体詩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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