絶句(読み)ゼック(英語表記)jué jù

デジタル大辞泉 「絶句」の意味・読み・例文・類語

ぜっ‐く【絶句】

[名](スル)
話や演説の途中で言葉に詰まること。また、役者が台詞せりふを忘れてつかえること。「感情が高ぶって絶句する」
漢詩の詩体の一。起・承・転・結の4句からなり、1句が5字の五言絶句と7字の七言絶句とがあり、いずれも平仄ひょうそくと押韻のきまりがある。
[類語]漢詩律詩

ぜ‐く【絶句】

《「ぜっく」の促音の無表記》「ぜっく(絶句)2」に同じ。
「おのおの―など作りわたして」〈・松風〉

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精選版 日本国語大辞典 「絶句」の意味・読み・例文・類語

ぜっ‐く【絶句】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 漢詩の近体詩で、一首が起・承・転・結と呼ばれる四句からなるもの。一句の字数によって五言(ごごん)絶句、七言絶句という。古詩の最小単位である四句で断ちきったところからこの名があるとされ、唐代にいたってそれに近体詩の韻律をあてはめたもの。ぜく。
    1. [初出の実例]「読開元詔書、絶句」(出典:菅家文草(900頃)四)
    2. 「寒夜の即事を言(こと)ば明に五言の絶句(セック)にぞ作せ給ける」(出典:太平記(14C後)一二)
    3. [その他の文献]〔滄浪詩話‐詩体〕
  3. ( ━する ) 途中で、ことばがつまって出なくなること。芝居の台詞(せりふ)や演説・朗読などの際に、途中でつまってことばが出なくなること。
    1. [初出の実例]「午刻与松岩北野。神前安閑無事、不詩作。雖然予也口絶句。可笑」(出典:鹿苑日録‐永祿九年(1566)一〇月一二日)
    2. 「『師とも父とも敬愛する我駒井先生』と読み出すと、声が震へて、眼前に霧がかかって、暫し絶句した」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉三)

ぜ‐く【絶句】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ぜっく」の促音「っ」の無表記 ) =ぜっく(絶句)
    1. [初出の実例]「おのおの、絶句など作りわたして、月、花やかにさし出づるほどに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)

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改訂新版 世界大百科事典 「絶句」の意味・わかりやすい解説

絶句 (ぜっく)
jué jù

中国詩の詩体の一つ。4句で完成するもので,五言絶句,六言絶句,七言絶句の3種類がある。絶句ということばは,元来は古詩,もしくは古楽府(がふ)の長編の詩の中から連続する4句をとりあげて独立させ,その部分のみを朗誦する形にしたものであって,そうした絶句の例としては《玉台新詠》(梁の徐陵の撰)の中の〈古絶句四首〉を求めることができる。

 やがて唐代になると,始めから4句で完成する詩形として絶句が作られるようになった。当初の絶句は,古体・今体(平仄ひようそく)のくふうをはらったもの)に関係なく,4句で完成する詩形をいったのであるが,やがて今体詩(律詩)が流行するにともない,絶句も今体詩として作られるのが常識となり,平仄のくふうがはらわれるようになった。押韻は,七言の場合は第1,第2,第4句に,その他の場合は偶数句にふむのが基本であるが,まれには第1句も押韻する場合もある。絶句においては,句のきれあじが尊重され,起承転結のくふうが必然になる。平仄のくふうは,偶数文字の部分においてはかられ,次のような形体にすることが基本となる(六言絶句は例が少ないので省く)。

五言絶句

登鸛雀楼〉(鸛雀楼に登る)王之渙

(〇は平字,●は仄字,◎は韻字。仄起式の五絶。唐詩の五絶は,今体詩にならないものも多い)

七言絶句

楓橋夜泊張継



(仄起式。李白の七絶などは,古詩として作られているものもある)

 第1・第2句と同様の平仄の配列を,第3句・第4句に用いることも,拗体(おうたい)として許されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絶句」の意味・わかりやすい解説

絶句
ぜっく

中国古典詩の詩体の一つ。四句からなるもので、最小の詩体である。一句の字数が五字の「五言(ごごん)絶句」、七字の「七言(しちごん)絶句」の2種がある。六言のものもあるが、一般的にならなかった。絶句の名称は、律詩(りっし)(八句の詩)に半絶したもの、一句一絶の意など、諸説があって定まらない。五言絶句の源は、六朝(りくちょう)の晋(しん)・宋(そう)のころ、揚子江(ようすこう)の下流・中流地域に流行した「子夜歌(しやか)」「西曲歌」などの民歌である。

【子夜歌】
 落日出前門 日暮れに門先に出て
 瞻矚見子度 子(きみ)の来るのを望み見る
 冶容多姿鬢 あで姿なまめかしく
 芳香已盈路 良い匂い、路に満ちる
【西曲歌・襄陽楽】
 朝発襄陽城 朝襄陽のまちを出て
 暮至大隄宿 暮れに大隄で泊まる
 大隄諸女児 大隄の娘たちは
 花艶驚郎目 あでやかで郎(きみ)を驚かす

 上のように男女の愛情を軽妙な表現で歌ったものが多く、日本の端唄(はうた)、都々逸(どどいつ)のような趣(おもむき)をもつものである。これがやがて文人の注意をひき、斉(せい)・梁(りょう)以後盛んにつくられるようになった。民歌風のものからしだいに重み、深みを増したものとなり、唐に入って韻律の規格も整い、近体詩の一つとして形を定めた。

 また七言絶句は、七言の体のすべてがそうであるように、五言の発展に便乗した形で、六朝末から唐にかけて急激におこり、初唐の末には体が定まった。そして五言、七言ともに盛唐に至って最高潮に達したが、とりわけ七言絶句はもっとも普遍的な体として盛行した。絶句は最小の詩体であるだけに、着想、感覚、表現に研ぎ澄まされた鋭さが要求され、また言外の情という、文字の外に漂う余韻を重んずる。

【王維鹿柴(ろくさい)】
 空山不見人 空山人を見ず
 但聞人語響 但(た)だ人語の響きを聞く
 返景入深林 返景深林に入り
 復照青苔上 復(ま)た照らす青苔の上
わずか20字のなかに幽玄の世界がとらえられ、詩人の悠々たる心境が余韻となって漂う。絶句は一字一字が吟味され、一句一句が緊密に構成される。起承転結の構成法も、もっとも効果を発揮する方法として、自然に定まったものである。唐代の絶句の集成に、宋の洪邁(こうまい)の『万首唐人絶句』101巻(うち75巻が七言絶句)がある。

[石川忠久]

『高木正一著『近体詩』(『中国文化叢書4 文学概論』所収・1967・大修館書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絶句」の意味・わかりやすい解説

絶句
ぜっく
Jue-ju

中国,古典詩の詩体の一つ。最も短い形式で1首が4句から成るもの。この名称は六朝時代末期からあり,「断句」とも呼ばれているところから,古詩の最小単位である1解の4句で「絶ち切った」詩という意に考えられる。したがって元来は古詩としてつくられたものを意味したが,唐に入って近体詩の規則が定まるにつれ,その韻律に合せてつくられるようになり,今日ではむしろ1首4句の近体詩をさす。1句の字数によって五言絶句,七言絶句と呼ばれ,まれに六言絶句がある。各句は起句,承句,転句,結句から成り,起句でうたい起し承句でそれを承 (う) け,転句で一転して結句で結ぶという,最も標準的な1首中における役割をそれぞれが示す。平仄 (ひょうそく) で厳格に守らねばならないのは偶数番目の文字で,そのほか「下三手」 (1句の下3字がすべて平声) ,「孤平」 (平声1字が孤立し,上下に仄声の文字がくる) が比較的強い禁忌であるなど,すべて近体詩の規則と同じであるが,対句は必須の条件ではない。

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百科事典マイペディア 「絶句」の意味・わかりやすい解説

絶句【ぜっく】

中国の詩体の一つ。古詩,もしくは古楽府(こがふ)から4句を独立させたものが起源か。おもに五言と七言があり,おのおの起・承・転・結の4句からなる。五絶は承・結句に,七絶は起・承・結句に押韻(おういん)し,平仄(ひょうそく)を厳守し,平仄式に平起と仄起とがある。唐代の初めに今(近)体詩の詩型として完成。→起承転結律詩
→関連項目古詩定型

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普及版 字通 「絶句」の読み・字形・画数・意味

【絶句】ぜつく

四句の詩。

字通「絶」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の絶句の言及

【中国文学】より

…純粋の民謡では南朝の〈呉声歌曲〉と〈西曲歌〉などが伝わっている(呉歌西曲)。前者は呉(現,江蘇省南部)の地域の民謡で,〈子夜の歌〉など五言四句の短い形が多く,のちの〈絶句〉の起源になる。後者は今の湖北省地域の民謡で,七言の句を用いるものがある。…

※「絶句」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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