昭和・平成期の小説家
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
小説家。神戸市に生まれる。関西(かんせい)学院大学文学部哲学科卒業。在学中はヘーゲルを研究、のちサルトルに傾倒。また一方で能の世界に深い関心を抱き、その様式、芸術的精神を自身の文学世界に投影させる。夫の森川達也(たつや)らと『無神派文学』に拠(よ)り作家活動を始め、1963年(昭和38)『葬送の朝』(のち『八月の修羅(しゅら)』と改題)で文芸賞に佳作入選する。68年第一創作集『鏡のなかの闇(やみ)』で注目され、70年第二創作集『処刑が行なわれている』で田村俊子(としこ)賞を、83年には『鬼どもの夜は深い』で泉鏡花(きょうか)賞を受賞。ほかに『月の飛ぶ村』(1979)、『思いがけず風の蝶(ちょう)』(1980)などがある。混沌(こんとん)とした事象のなかに存在の原理を問い、『野守の鏡』(1980)、『崩壊告知』(1985)、『半満月など空にかかって』(1985)、『幽冥(ゆうめい)と情愛の契りして』(1986)、『女たちは古代へ翔ぶ』(1986)、『群ら雲の村の物語』(1987)、『その日の夏』(1987)、『その冬の死』(1989)、『小説清少納言(せいしょうなごん)』(1989)、『小説かげろうの日記』(1989)、『男たちのギリシア悲劇』(1990)、『その夜の終りに』(1990)など、村落共同体を舞台にし、あるいはギリシア悲劇に父権制への転換点をみ、女と敗戦、古典の物語小説化など、小説形式の可能性を探求し続けた異色の作家である。
[岡 宣子・橋詰静子]
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