三枝和子(読み)サエグサカズコ

デジタル大辞泉 「三枝和子」の意味・読み・例文・類語

さえぐさ‐かずこ【三枝和子】

[1929~2003]小説家兵庫の生まれ。日本ペンクラブ女性作家委員会初代委員長。「鬼どもの夜は深い」で泉鏡花文学賞受賞。他に「処刑が行なわれている」「薬子の京」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三枝和子」の意味・わかりやすい解説

三枝和子
さえぐさかずこ
(1929―2003)

小説家。神戸市に生まれる。関西(かんせい)学院大学文学部哲学科卒業。在学中はヘーゲルを研究、のちサルトルに傾倒。また一方で能の世界に深い関心を抱き、その様式、芸術的精神を自身の文学世界に投影させる。夫の森川達也(たつや)らと『無神派文学』に拠(よ)り作家活動を始め、1963年(昭和38)『葬送の朝』(のち『八月修羅(しゅら)』と改題)で文芸賞佳作入選する。68年第一創作集『鏡のなかの闇(やみ)』で注目され、70年第二創作集『処刑が行なわれている』で田村俊子(としこ)賞を、83年には『鬼どもの夜は深い』で泉鏡花(きょうか)賞を受賞。ほかに『月の飛ぶ村』(1979)、『思いがけず風の蝶(ちょう)』(1980)などがある。混沌(こんとん)とした事象のなかに存在の原理を問い、『野守の鏡』(1980)、『崩壊告知』(1985)、『半満月など空にかかって』(1985)、『幽冥(ゆうめい)と情愛の契りして』(1986)、『女たちは古代へ翔ぶ』(1986)、『群ら雲の村の物語』(1987)、『その日の夏』(1987)、『その冬の死』(1989)、『小説清少納言(せいしょうなごん)』(1989)、『小説かげろうの日記』(1989)、『男たちのギリシア悲劇』(1990)、『その夜の終りに』(1990)など、村落共同体を舞台にし、あるいはギリシア悲劇に父権制への転換点をみ、女と敗戦、古典の物語小説化など、小説形式の可能性を探求し続けた異色の作家である。

[岡 宣子・橋詰静子]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三枝和子」の解説

三枝和子 さえぐさ-かずこ

1929-2003 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和4年3月31日生まれ。森川達也の妻。昭和38年「葬送の朝」で注目される。反リアリズムの立場にたち,「審美」を発表の場に,実験的な表現手法を駆使して作品をかく。44年「処刑が行なわれている」で田村俊子賞,58年「鬼どもの夜は深い」で泉鏡花文学賞。日本ペンクラブ女性作家委員会の初代委員長。平成15年4月24日死去。74歳。兵庫県出身。関西学院大卒。作品はほかに「小説小野小町」「薬子の京」など。

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百科事典マイペディア 「三枝和子」の意味・わかりやすい解説

三枝和子【さえぐさかずこ】

小説家。兵庫県生れ。関西大学大学院中退。京都で教員をしながら創作活動に入る。反リアリズム的手法の小説を通じて,男性社会と女性原理をめぐる問題を追求した。代表作は《処刑が行われている》(1969年,田村俊子賞),《八月の修羅》,《鬼どもの夜は深い》(1983年,泉鏡花賞)など。夫は評論家森川達也。

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