三社託宣(読み)さんじゃたくせん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

三社託宣
さんじゃたくせん

伊勢神宮のアマテラスオオミカミ,春日神社春日大明神石清水八幡宮八幡大菩薩託宣を一幅に書き記したもの。正直,清浄,慈悲が説かれている。神儒仏三教を融合するとともに,皇室貴族武士信仰を1つにまとめている。室町時代末期から江戸時代まで広く庶民信仰の対象として普及した。吉田家の卜部 (うらべ) 兼倶の偽作とされるが根拠はない。

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百科事典マイペディアの解説

三社託宣【さんしゃたくせん】

伊勢・八幡(武家祖神)・春日公家の祖神)の三神の託宣を三尊形式にしるしたもの。護符貼札(はりふだ)のように礼拝用として室町時代から民間に流布され,伊勢神は正直を,八幡神は清浄を,春日神は慈悲を最要とすることをすすめ,三つの徳目は中世以降に伊勢神宮石清水(いわしみず)八幡宮春日大社で特に強調された。

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世界大百科事典 第2版の解説

さんしゃたくせん【三社託宣】

伊勢神宮(天照皇大神宮),石清水八幡宮(八幡大菩薩),春日大社(春日大明神)の三社の託宣,神のお告げを記したもの。中世後期からみられ,近世には広く庶民信仰として普及した。中央には天照大神宮,右に八幡大菩薩,左に春日大明神と記し,その下に託宣を載せて一軸の掛軸に仕立てたものが床の間に飾られ,信仰の対象とされた。託宣の内容は神道・儒教仏教の三教融合思想に基づき,正直・清浄・慈悲観を強調している。この正直・清浄・慈悲の三つの徳目は,中世以降,伊勢・石清水・春日の三社においてとくに強調された徳目であり,中世神道思想の基本的考え方はこれに由来している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

三社託宣
さんじゃたくせん

伊勢(いせ)神宮(天照皇太神宮(てんしょうこうたいじんぐう))・石清水八幡(いわしみずはちまん)宮・春日(かすが)大社三社の神のお告げ(託宣)という形式で、神道(しんとう)の教化的な教義としたもの。起源由来などは不詳。一説として、たとえば1658年(明暦4)板行の『三社託宣鈔(しょう)』には正応(しょうおう)年間(1288~93)に奈良東大寺庭前の池水に三社託宣の文字が明らかに現れた由を記す。その文字は次のとおり。


 掛軸で伝わるものは、皇太神宮を中心に左右にそれぞれ八幡と春日が配置されている。正直と清浄と慈悲の三つの徳目を神の示教としたもので、室町前期ごろから江戸末期にかけて吉田神道の発展とともに広く庶民信仰として普及し、三社託宣を書いた掛軸を床の間に飾って説教・礼拝することが流行した。三社はいずれも日本の象徴的神社であり、三徳は神儒仏三教の混融的思想の簡潔な表現で、わかりやすい点が一般に抵抗なく受容されたものとみられる。『続々群書類従』神祇(じんぎ)部に所収。

[小笠原春夫]

『河野省三著「三社託宣の信仰」(1935)』『河野国雄著「江戸時代に於ける三社託宣信仰の研究」(1937)』『永島福太郎著「三社託宣の源流」(1938)』『西田長男著「三社託宣に就ての管見」(1941)(以上『国学院雑誌』所収)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

さんしゃ‐たくせん【三社託宣】

〘名〙 (「託宣」は神が人に託して神意を告げ知らせること、神託の意)
① 伊勢神宮、石清水八幡宮、春日大社の三社の神託。〔運歩色葉(1548)〕
② 天照大神、八幡大菩薩、春日大明神のお告げと称するものを、一幅にして書きあらわしたもの。すなわち、天照大神は「計謀雖眼前利潤必当神明罰、正直雖一旦依怙終蒙日月之憐」、八幡大菩薩は「雖鉄丸心穢人物、雖銅焔心穢人処」、春日大明神は「雖千日注連邪見家、雖重服深厚慈悲家」と、それぞれ告げたという。室町時代に広く尊崇されたが、神道者の偽作であろうといわれる。
※東寺百合文書‐を・宝徳三年(1451)一〇月七日・上久世庄華蔵庵雑具以下目録「三社たくせん 一ふく」

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旺文社日本史事典 三訂版の解説

三社託宣
さんしゃたくせん

伊勢神宮・石清水八幡宮・春日神社の神名と託宣を一枚の画にして信仰の対象としたもの
3社の神徳である正直・清浄・慈悲の徳目を現す。室町時代,この画をかかげて拝礼する風が公家の間に盛んに行われた。

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世界大百科事典内の三社託宣の言及

【託宣】より

…諸社寺に伝わる託宣,神異,縁起などを編集した書物を託宣記といい,《八幡宇佐宮御託宣集》などがある。中世後期以降は,伊勢,石清水,春日の三社の託宣を掛軸に仕立て,床の間に飾って信仰の対象とする三社託宣が,広く庶民の間に流行した。神託【岡田 荘司】。…

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