江戸中期の故実家。とくに武家故実の研究に一時期を画した。幕臣。通称平蔵、名は貞丈(「ていじょう」とも)、安斎、銀卿(ぎんけい)と号す。伊勢氏は室町幕府以来、小笠原(おがさわら)、今川両氏と並んで武家諸礼式、故実を家職とし、その伝統を伊勢流と称した。貞丈の父貞益(さだます)は家禄(かろく)の1000石を継ぎ、1717年(享保2)には8代将軍徳川吉宗(よしむね)の命により家伝の書52部・63巻を台覧に備えたが、25年、33歳の若さで死去し、その跡を継いだ兄貞陳(さだのぶ)もまた13歳で夭折(ようせつ)し、一家断絶の悲運にみまわれた。翌26年8月に至り、特旨により10歳の貞丈が家名を継ぐことを許されたが、家禄は大幅に削減されて、わずか300石を給せられた。
こうした宗家の動揺・減知は、すでに元禄(げんろく)(1688~1704)前後から小笠原流に圧せられた伊勢流の退勢に拍車をかけたが、それだけに年少気鋭の貞丈にかける一門の期待は大きかった。貞丈は博覧強記、家伝の豊富な書籍を読破し、よく公武の故実に通じ、1745年(延享2)御小姓組(おこしょうぐみ)番士に列し、家名をあげた。その後も研究に専念し、その著述は武家の制度、典章、弓馬、武器武具、服飾などの分野に及び、実に300部を数える。そのうち『貞丈雑記』『安斎随筆』『安斎雑考』『安斎小説』『武器考証』『軍器考百首』『軍用記』『四季草』『座右書』『伊勢弓馬叢書(そうしょ)』『伊勢平蔵家訓』などが著名である。
[渡邉一郎]
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(白山芳太郎)
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1717.12.28~84.5.28/6.5
江戸中期の幕臣・有職故実家。通称平蔵,号は安斎。幕府の寄合・御小姓組番士。伊勢家は室町幕府政所執事の家柄で礼法に精通し,江戸幕府にも仕えた。兄貞陳が夭折して断絶したが,弟の貞丈が再興。とくに武家故実に詳しく第一人者とされる。著書「貞丈(ていじょう)雑記」「安斎随筆」「軍用記」「武器考証」など多数。
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… 室町時代までは,〈包み〉の礼法は将軍家を中心とする上流階層にしか行われなかったが,江戸時代中期になると和紙が全国各地で大量に生産されるようになり,武士に限らず一般庶民の間でも広く用いられるようになった。先に述べた伊勢氏の中興の祖といわれる伊勢貞丈(さだたけ)(安斎)は江戸中期,宝暦年間に《包結図説(ほうけつずせつ)》を著したが,これは〈包の部〉と〈結の部〉の2部からなり,その前者において,包む中味や用途に従った各種の礼法が定められた。また内容物の端を包紙の上か下から少し出して,なかの物をわかるようにしたり,小さい物を包み込んでしまう場合には包紙の上に品物の名前と数量とを書くべく示されている。…
…伊勢貞丈(さだたけ)の著した有職故実書。16巻。…
※「伊勢貞丈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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