上・登・昇(読み)のぼり

精選版 日本国語大辞典の解説

のぼり【上・登・昇】

〘名〙 (動詞「のぼる(上)」の連用形の名詞化)
① 低い所から高い所へ移動すること。また、上の方に進んで行く道。
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)「のぼりゃすなすなくだりゃちょこちょこ、のぼりつをりつ谷町すぢを」
② (内裏が北にあったところから) 京都で、北に向かって行くこと。
※大鏡(12C前)六「東洞院よりのぼりにまかるに」
③ 地方から都へ向かって行くこと。
※平家(13C前)三「この瀬にももれさせ給て、御のぼりも候はず」
④ 列車・バスなどが地方から中央へ、また、郊外から中心部へ向かうこと。また、その列車やバス。
※破戒(1906)〈島崎藤村〉一一「四番の上りは二十分も後れたので」

のぼ・る【上・登・昇】

〘自ラ五(四)〙
① 低い所から高い所へ移動する。また、移動して、ある物の上に乗る。
※古事記(712)下・歌謡「梯立(はしたて)の 倉梯山は 嶮(さが)しけど 妹と能煩礼(ノボレ)ば 嶮しくもあらず」
② 特に、霧や煙などが上に向かって動いたり、日や月が出て高い所に移り動いたりする。また、空中にあがる。
※万葉(8C後)七・一二四六「志賀の白水郎(あま)の塩焼く煙風をいたみ立ちは不上(のぼらず)山に棚引く」
③ 水上、水中から陸上へ移る。
※源氏(1001‐14頃)明石「この風いましばしやまざらましかば、しほのぼりて残る所なからまし」
④ 上流へ向かって進む。
※古事記(712)下・歌謡「つぎねふや 山城川を 川のぼり 我が能煩礼(ノボレ)ば」
⑤ 昔へさかのぼる。→上りての世
⑥ 地方から都へ向かって行く。また、品物が都に送られる。京都の中で、内裏のある北の方へ行くのもいう。
※万葉(8C後)二〇・四四七二「大君のみことかしこみ於保(おほ)の浦を背向(そがひ)に見つつ都へ能保流(ノホル)
⑦ 天皇、皇后など、貴人の御座所近くへ参上する。宮中に出仕する。
※伊勢物語(10C前)六五「この御曹司には、人の見るをも知らでのぼりゐければ」
⑧ 地位が進む。昇進する。また、高い位につく。あがる。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「国の親となりて、帝王のかみなき位にのぼるべき相おはします人の」
⑨ 古代、官吏登用試験の場に出る。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「たびたびのぼりたる学生のをのこども、ざえあるをのこども、てまどひをして」
⑩ (血が頭にのぼる意) のぼせてぼうっとなる。気持が高まる。夢中になる。また、ふだんの落ち着きを失う。逆上する。
(イ) 「気がのぼる」の表現の場合。
※落窪(10C後)一「むげにはづかしと思ひたりつるに、気ののぼりたらん」
(ロ) 「のぼる」の主語が表わされない場合。
※浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)三「隣のあげやにあそんでおりますは〈略〉のぼりかかってゐる天竺牢人共」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「かほを真赤にして大きにのぼったやうす」
⑪ 慢心する。得意になる。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「始は金銀ありまやの山と、高くのぼりし身なれ共」
⑫ 物事の度合がすすむ。また、値段が高くなる。あがる。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八「随って騰貴(ノボ)れば随って制(おさ)へ〈略〉尚々尚々(まだまだまだまだ)と持こたふる程に」
⑬ 数量が相当の程度に達する。
※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉四「一日の売上高八九円より十円に上ぼるとなり」
⑭ ことばとして表わされる。また、取り上げて示される。取り上げて扱われる。
※おとづれ(1897)〈国木田独歩〉上「斯る類の事の言葉に上ぼりしは例なきことなりける」
※永日小品(1909)〈夏目漱石〉過去の匂ひ「時々下の家族が噂に上(ノボ)る事があった」
⑮ ある事や現象が表面にでてくる。浮かぶ。現われる。
※解剖室(1907)〈三島霜川〉「柔(やはらか)な微笑が頬に上(ノボ)る」
※行人(1912‐13)〈夏目漱石〉塵労「手持無沙汰の感じが強く頭に上(ノボ)った」
[語誌](1)多義語ではあるが、その基本的な意味は、その過程や経路に重点がおかれた上方への移動であり、意味の変遷もあまりみられない。ただ⑩(ロ)、⑪は、現在方言等には残るが、共通語では「のぼせる」が普通。
(2)→「あがる(上)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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