上知(読み)ジョウチ

デジタル大辞泉 「上知」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ち〔ジヤウ‐〕【上知/上×智】

すぐれた知恵。また、すぐれた知恵をもつ人。⇔下愚かぐ
《〈ギリシャsophiā》真の知恵。キリスト教では神をおそれることをもって真の知恵とする。

あげ‐ち【上知/上地】

江戸時代幕府や藩が知行ちぎょう地を没収すること。また、その土地。あがり地。じょうち。

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精選版 日本国語大辞典 「上知」の意味・読み・例文・類語

じょう‐ちジャウ‥【上知・上智】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「しょうち」か )
  2. 知恵の最も優れて豊かなこと。また、その人。大知(たいち)。⇔下愚(かぐ)
    1. [初出の実例]「上智前則、諸瑜伽教法、下愚前便、縁覚声聞良因焉」(出典:中臣祓訓解(12C後))
    2. 「上根上智の眼にみゆる所、たけ・くらゐのきはまりたるしてにをきては相応至極なれば、是非なし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)五)
    3. 「生死不定の理は上智(シャウチ)・博識も弁ずべからずとや」(出典:浄瑠璃・平家女護島(1719)三)
    4. [その他の文献]〔顔氏家訓〕
  3. ( [ギリシア語] sophia の訳語 ) キリスト教で、神の知恵をいう。
    1. [初出の実例]「さらもんの上智も曇痴と見え」(出典:ぎやどぺかどる(1599)上)

じょう‐ちジャウ‥【上知・上地】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、幕府または領主に知行を返上すること。知行または所領を政府に上納すること。
    1. [初出の実例]「此度、江戸・大坂最寄為御取締、上知被仰付候」(出典:徳川禁令考‐前集・第四・巻三七・天保一四年(1843)閏九月七日)

あげ‐ち【上知】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、幕府が知行地を没収すること。また、その土地のこと。上地(あげち)と混同されて使われてきた。
    1. [初出の実例]「私領之上知御蔵入に成候」(出典:日本財政経済史料‐一・財政・雑・収税雑規・享保五年(1720)一二月)

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改訂新版 世界大百科事典 「上知」の意味・わかりやすい解説

上知 (あげち)

江戸時代,幕府が大名旗本から,また大名が家臣からその知行地を収公したこと,またその知行地をいう。知行主が罪を犯して没収されるという刑罰執行の形においてもなされたが,行政上の必要や純粋に知行地の割替えなどのためからも行われた。後2者の場合には別に代知を給付するのが通例であった。行政的な上知としては,1708年(宝永5)富士山噴火による降灰被害に見舞われた小田原藩領のうち5万6000石余を上知して幕領とし,関東郡代伊奈忠順の手で復旧普請を行ったもの,北方警備のために寛政・安政の両度,幕府が松前藩から蝦夷地を収公したもの,天保改革の際に江戸・大坂10里四方にある私領を上知して一円的な幕領を設定し,幕府支配の再編強化を策したもの(上知令)などが代表的な事例である。なお上知は上地とも書くが,これは百姓田地を行政的な必要や処罰的な理由によって収公する場合に用いられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「上知」の意味・わかりやすい解説

上知
あげち

江戸時代の大名旗本が,領知である知行地(→知行)を官に返すこと。天保14(1843)年6月,江戸幕府天保の改革に際し,江戸,大坂 10里四方(大坂は 5里四方ともいう)を上知して天領とし,代わりに,それに見合う土地を与えることにした。この法令を上知令という。これによって幕府は,全国に散在する直轄領を江戸,大坂の近くにまとめて統制しようとする意図であったが,和歌山藩などの諸大名や旗本の反対にあい,同 14年閏9月7日,早急に廃止させられた。この失敗は水野忠邦失脚のおもな原因となった。上知は「じょうち」とも読み,諸藩でもしばしば家臣の知行地の返納,没収にこの語を用い,ときに「上地」とも書いたが,「上知」が正しい。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「上知」の意味・わかりやすい解説

上知
あげち

大名・旗本などの領地を一部または全部取り上げること。取り上げられた領地を上(あが)り知(ち)という。とくに幕府の政策上の必要から上知せしめた場合には、それに見合うだけの封地を与えている。1769年(明和6)に西宮(にしのみや)を尼崎(あまがさき)藩から取り上げて幕領に編入した例や、松前藩から寛政(かんせい)、安政(あんせい)の両度にわたり蝦夷(えぞ)地の一部を上知させた例があげられる。とくに有名なものは天保(てんぽう)の改革中に行われた上知で、江戸、大坂最寄地(もよりち)の私領と長岡藩領の新潟が対象となったが、新潟のみに実施された。なお、明治維新後、廃藩置県までの間は上地と書くのが普通である。

[津田秀夫]

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百科事典マイペディア 「上知」の意味・わかりやすい解説

上知【あげち】

江戸時代,幕府が大名・旗本から,大名がその家臣から,それぞれ知行地を没収することを指し,没収された知行地も上知という。知行者の犯罪等により処罰として収公される場合と,行政上の必要性から実施される場合とがあり,後者の場合は通例として代知が与えられた。天保改革(てんぽうかいかく)の際の1843年,江戸・大阪周辺の私領を収公しようとした,いわゆる上知令(あげちれい)は後者の代表的な例である。なお百姓の田地が収公される場合は,上地と記されることが多い。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「上知」の解説

上知
あげち

「じょうち」とも。上地とも。江戸時代,幕府が大名領・旗本領を没収すること。また大名が自分の家臣の領地を没収する場合にも用いる。没収された土地は上り知とよんだ。処罰的な場合と行政的な場合があり,1843年(天保14)に幕府が江戸・大坂周辺の私領を,替地を与えて収公しようと試みて失敗した上知令は,行政的な例としてよく知られる。なお上地と書くときは,農民の土地を収公する上り田地を意味する場合が多い。

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普及版 字通 「上知」の読み・字形・画数・意味

【上知】じよう(じやう)ち

明達の人。〔論語、陽貨〕子曰く、唯だ上知と下愚とは移らず。

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