下ろし(読み)オロシ

デジタル大辞泉 「下ろし」の意味・読み・例文・類語

おろし【下ろし/降ろし】

下ろすこと。下へ移すこと。「雪―」
役職・地位を下げたり、辞めさせたりすること。「総理―が本格化」
新しい品の使い始め。「仕立て―」
(「卸し」とも書く)
大根わさびなどをすりくだいたもの。「もみじ―」
㋑「下ろし金」の略。
魚の身を、中骨に沿って包丁を入れ、二つまたは三つに切り離すこと。「三枚―」
舞事で、笛が特殊な演奏をする部分。
義太夫節で、序詞の終わりのひとくぎりに使われる、荘重にゆっくりと語る旋律型
神仏に供えた物のお下がり。また、貴人の飲食物の食べ残しや使い古しのお下がり。
「御仏供ぶくの―たべむと申すを」〈・八七〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「下ろし」の意味・読み・例文・類語

おろし【下・卸・颪】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「おろす(下)」の連用形の名詞化 )
  2. 高い所から下の方へ移すこと。おろすこと。「雪おろし」「神おろし」などのように、名詞に付けて造語要素として使う場合が多い。
  3. 神仏の供え物をとりさげたもの。また、貴人の飲食物の残りや使い古しの品物のおさがり。御分(おわけ)
    1. [初出の実例]「かめをもたせて〈略〉おほみきのおろしときこえにたてまつりたりけるを」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・八七四・詞書)
  4. 家来食糧を支給すること。
    1. [初出の実例]「升はかなふせ以おろしに可之候」(出典:宇川共有文書‐慶長一一年(1606)三月二七日)
  5. ( 颪 ) 山など高い所から下へ向かって風が吹くこと。また、その風。秋冬の頃、山腹の空気が冷えて吹きおろす風。おろしのかぜ。
    1. [初出の実例]「こひしくはみてもしのばんもみぢばを吹きなちらしそ山おろしのかぜ〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・二八五)
  6. 身分、地位などを低くすること。
    1. [初出の実例]「大夫おろし 上職にて出世したる傾城の、天職にくだれるをいふ。天神おろし 天職にて出世したる傾城の、囲職になりたるをいふ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
  7. 自然に出産する時期より前に、人為的に子を母体の外に出すこと。また、その子。子おろし。おろし子。
    1. [初出の実例]「百日。下子(ヲロシ) 三个月以前七日、四个月以後三十日」(出典:新羅社服忌令(1425))
  8. (大根やわさびを)すりくずすこと。すりくずしたもの。また、すりくずす器具。おろしがね。
    1. [初出の実例]「ダイコンノ voroxi(ヲロシ)」(出典:羅葡日辞書(1595))
  9. ゆったりとねり歩くこと。おろしあゆみ。
    1. [初出の実例]「かれが風俗仕出し、いかさま天職のおろしの様に見え」(出典:浮世草子・傾城仕送大臣(1703)三)
  10. 上下に上げ下ろしして開閉する戸。おろし戸。
    1. [初出の実例]「ヲツボネノ voroxiuo(ヲロシヲ) ホトホトト タタケバ」(出典:天草本平家(1592)四)
  11. 邦楽用語。
    1. (イ) 能や長唄囃子の打楽器の楽句の一つ。広義には、頭組(かしらぐみ)から地になだらかに移るために奏する楽句の総称。狭義には、その中の一つをいう。
    2. (ロ) 舞事(まいごと)の中の楽句の一つ。笛が特殊な演奏をする部分をいう。大、小の鼓(つづみ)も特有の演奏をする。
    3. (ハ) ( 声を低めてうたうところから ) 浄瑠璃で、序詞の終わりの一区切を語る節。荘重にゆっくりと語り、浄瑠璃本では節の出をの印で示す。特に大序のものを「大おろし」、おろしほど重くはないがよく似た節を「おろしかかり」という。
      1. [初出の実例]「上瑠璃本をとりなやみ〈略〉をろし、三重、いろ、うつり、はつは、そををとばかりにて、療治の事はおろそかに」(出典:浮世草子・元祿大平記(1702)二)
  12. 新しい品を使い始めること。また、その品。「したておろし」
    1. [初出の実例]「『おろしを又』〈略〉『屋根舟の新ぞうをさ』」(出典:洒落本・伊賀越増補合羽之龍(1779)和田志津广舟宿に奉公之段)
  13. ( 卸 ) 商品を問屋から小売商へ売り渡すこと。おろし売り。
    1. [初出の実例]「Oroshi(オロシ)ト コウリワ ネダンガ チガウ」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
  14. 海を渡って近くの島などに船で行き来すること。また、その船。
    1. [初出の実例]「されど源叔父が渡船(オロシ)の業は昔のままなり。浦人島人乗せて城下往来(ゆきき)すること、前に変らず」(出典:源おぢ(1897)〈国木田独歩〉上)

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