不良土(読み)ふりょうど

改訂新版 世界大百科事典 「不良土」の意味・わかりやすい解説

不良土 (ふりょうど)

土壌本来の性質,あるいはその後の土壌管理によってもたらされた性質になんらかの欠陥があるために,作物生育が抑制されている土壌をいう。不良土には酸性土壌,不良火山灰土,泥炭土,重粘土,砂質または礫質土(れきしつど),微量要素欠乏土などがあるが,必ずしもこれらの土壌に限って用いられるものではなく,作物の生産性が低い低位生産畑と同意に解釈される場合もある。

 日本の不良土の分布は広く,畑地総面積の約半分に及んでいるが,不良土のなかでも不良火山灰土と酸性土壌の占める割合が圧倒的に多い。不良火山灰土とはシラスボラアカホヤなど火山性の特殊土壌のほか,火山灰土壌の作物生産に対する一般的な不良性質をさす場合がある。火山灰土壌の不良性は,主としてアロフェンとよばれる非晶質の粘土鉱物と,特異な腐植とから構成されているためである。多量の腐植に富み,アロフェンの置換容量も比較的大きく,孔隙量(こうげきりよう)も多い火山灰土壌の表土は,作物の生育環境としては一見好ましい土壌に思えるが,アロフェン中には陰性コロイドと結合していない遊離アルミニウムが多量存在し,植物根に直接害を与えるほか,有効態リン酸と塩基が著しく欠乏した酸性土壌となっていることが多い。不良火山灰土の生産力増強は置換性石灰を増大させ,土壌有機物の安定化と集積を促進し,有効態リン酸の増加をはかること,またシラス,ボラなど固結した火山砂礫層や軽石層をとりのぞくことがまず必要である。

 泥炭土は湖沼などに生育する水生植物の遺体が水底に沈積し,酸化分解をうけないで,もとの植物の組織が肉眼で認められる程度に腐植してできた泥炭を主体とする土壌のことで,北海道をはじめ各地に分布している。有機物が異常に集積しているので有害な還元性物質が生成し,植物根に害を与えるほか,土壌中にリン酸,カリウム,ケイ酸などの無機養分も不足し,生産性は低い。泥炭土の改良は排水をよくし,客土などによる無機養分の供給が必要である。重粘土は粘土含量が高く,粘質でしかも組織の堅密な土壌をいい,透水性は著しく不良で降水量が多いと停滞水を生じて過湿状態となる反面,乾燥時には干ばつを招きやすく,土壌が強く固結して耕耘(こううん)が困難になる。重粘土の不良性は粘土含量過多による土壌物理の不良にあるので,排水,酸性矯正,深耕,心土破砕,砂客土などで改良を行う。また,有機物施用効果も土壌改良に効果がある。砂質または礫質土は粘土および腐植含量に乏しく,粒子のあらい土壌で,通水性,透水性が過度で,夏季には干ばつを受けやすい。有機物の分解消耗が著しく,土壌自体の養分が少ないほか肥料成分の吸着保持力が弱い。改良には優良な粘土と腐植を増加させる方法がとられる。微量要素欠乏土は土壌自体に銅,亜鉛,ホウ素,マンガンモリブデン,鉄といった植物の微量必須要素の含有量が不足している土壌で,砂質土壌によくみられる。一般的な対応策としては土壌反応を適正にし,有機物施用による微量要素の補給を行う。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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