不飽和ポリエステル樹脂(読み)ふほうわポリエステルじゅし(英語表記)unsaturated polyester resin

改訂新版 世界大百科事典 「不飽和ポリエステル樹脂」の意味・わかりやすい解説

不飽和ポリエステル樹脂 (ふほうわポリエステルじゅし)
unsaturated polyester resin

不飽和二塩基酸と2価のアルコールを重縮合させて不飽和ポリエステルをつくり,これにさらに不飽和結合をもつビニルモノマーをラジカル共重合させてつくられる熱硬化性樹脂をいう。無水マレイン酸エチレングリコールプロピレングリコールとを加熱重縮合させ,これにスチレンを共重合させたものが代表的なものである。不飽和ポリエステルをスチレンモノマーに溶解し,過酸化ベンゾイルを触媒として加え,さらに充てん材(炭酸カルシウムなど),ガラス繊維のような強化材,滑剤,着色剤などを加えて加熱重合させてつくる。

不飽和ポリエステル樹脂強化プラスチックとして用いられることが多いので,物性は強化材,充てん材の種類,量,強化のしかたによって異なる。また,不飽和ポリエステルの構造,スチレンとの組成比などによって物性は変化する。しかし,一般に透明で,強度が高く(とくに比重が小さいため比強度は鋼以上である),耐熱性,耐水性,耐薬品性にすぐれ,電気特性とくに耐アーク性が格段によい。おもな物性は表に示すとおりである。

 身のまわりでも,浴槽,洗面所,浄化槽,水タンク,屋根板などに使われているほか,漁船,ボートヨット船体がほとんど不飽和ポリエステル樹脂にかわっている。スキー板,釣りざおなどのレジャー用品,化学プラント用タンク,パイプ,自動車,航空機の部品,電気関係ではスイッチボックス,高圧絶縁材,そのほかハウジング類など多方面にわたって使用されている。

成形法としては次のようなものがある。(1)ハンドレイアップ法 ガラス繊維マットなどに樹脂を含浸させ,それを積み重ねて型にはめ,加圧・加熱して硬化させる。(2)スプレーアップ法 ガラス繊維を短く切断したロビングと樹脂を型の上に吹きつけ,次いで加圧・加熱して硬化させる。(3)プレミックス法 あらかじめ樹脂,充てん材,強化材を混合して成形材料をつくり,これを圧縮成形,トランスファー成形,射出成形によって成形品とする。(4)フィラメントワインディング法 ガラス繊維に樹脂を付着させ,回転している枠に巻きつけて加熱硬化させ,パイプなどの成形品とする。(5)SMC(sheet molding compound)法 ガラス繊維布に樹脂を含浸させ,薄いシート状とし,これを圧縮成形して成形品をつくる。
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化学辞典 第2版 「不飽和ポリエステル樹脂」の解説

不飽和ポリエステル樹脂
フホウワポリエステルジュシ
unsaturated polyester resin

不飽和ジカルボン酸とグリコールとの重縮合反応によって得た,比較的低分子量の不飽和ポリエステル,およびこれをビニルモノマーとの共重合で架橋させた熱硬化性樹脂.不飽和ジカルボン酸としては無水マレイン酸フマル酸などが用いられ,二重結合の量を調節するために無水フタル酸アジピン酸などが共縮合される.グリコールとしてはエチレングリコール,ジまたはトリエチレングリコール,プロピレングリコールなどが用いられる.一般に,エーテル結合をもつグリコールから得られる樹脂は,耐熱性,耐水性を低下させる.ビニルモノマー(スチレン,ビニルトルエン,クロロスチレン,酢酸ビニル,アクリル酸エステルなど)との共重合によって架橋させる際には,種々の有機過酸化物やジアゾ化合物などのラジカル重合開始剤および硬化促進剤が用いられる.硬化において副生成物の生成を伴わないので低圧成形可能である.ガラス繊維強化プラスチック(FRP)のほとんどはこの種の樹脂であり,そのほか塗料,積層材,注型用の樹脂として用いられる.

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百科事典マイペディア 「不飽和ポリエステル樹脂」の意味・わかりやすい解説

不飽和ポリエステル樹脂【ふほうわポリエステルじゅし】

不飽和二塩基酸(無水マレイン酸など)とグリコール(エチレングリコールなど)とのエステル化反応によって線状のポリエステルを得,これにビニル系単量体(スチレンなど)を反応させて三次元構造とした熱硬化性樹脂。注形品,塗料,化粧板等にも用いられるが,ガラス繊維を基材とした強化プラスチックは耐衝撃性,ヤング率の非常に高い構造材料として多用される。
→関連項目熱硬化性樹脂ポリエステル樹脂

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「不飽和ポリエステル樹脂」の意味・わかりやすい解説

不飽和ポリエステル樹脂
ふほうわポリエステルじゅし
unsaturated polyester resin

不飽和ジカルボン酸 (フマル酸,無水マレイン酸など) と二価アルコール (エチレングリコールなど) との重縮合により生成したポリエステル樹脂に,主としてスチレンなどのビニル化合物を加えてポリエステル中の不飽和結合とともに重合し,重合と同時に架橋して固化する熱硬化性樹脂である。特にガラス繊維を入れて補強したものは強度が大きく,強化プラスチックとして大量に用いられている。

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