丸山ワクチン(読み)まるやまわくちん(英語表記)Maruyama vaccine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「丸山ワクチン」の意味・わかりやすい解説

丸山ワクチン
まるやまわくちん
Maruyama vaccine

ヒト型結核菌から製造したワクチンで、発見者である日本医科大学の丸山千里(ちさと)(1901―1992)の名をとってよばれる。皮膚科医の丸山は独自のワクチン療法によって、1944年(昭和19)以来、皮膚結核、ついでハンセン病の治療を行ってきたが、1964年(昭和39)に結核やハンセン病の患者にがんが少ないことに気づき、1966年以来これをがんの治療に応用し、その有効性を報告した。このワクチンはヒト型結核菌の水性抽出物で、多糖体と核酸主成分とする。

 丸山ワクチンは抗悪性腫瘍(しゅよう)剤としては承認されないまま期限付きでがん治療に有償治験として使用されていたが、厚生省(現、厚生労働省)は1998年(平成10)3月、この治療の期限を無期限延長することを認めた。また、濃度が丸山ワクチンの数十倍である「アンサー20(商品名)」が承認され、放射線療法による白血球減少症の治療に用いられている。

[幸保文治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「丸山ワクチン」の意味・わかりやすい解説

丸山ワクチン
まるやまワクチン

日本医大名誉教授丸山千里が発見したヒト型結核菌から作られたワクチン。その有効性については未確認だが,有償治験薬として癌患者に投与されてきた。 90年6月,製造元ゼリア新薬工業は,その濃厚溶液を癌の放射線療法による白血球減少副作用に対する抑制剤として発売した。 89年 12月には,中央薬事審議会抗癌剤クレスチン」と「ピシバニール」を他の抗癌剤との併用による使用に限定する答申を出している。

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