仮令(読み)タトイ

デジタル大辞泉 「仮令」の意味・読み・例文・類語

たとい〔たとひ〕【仮令/縦令/縦い】

[副]
(あとに逆接条件を表す「ても」「でも」「とも」などを伴って)仮にある事柄を想定しながら、結果はそれに影響されないことを表す。もし…だとしても。仮に。よしんば。たとえ。「―失敗しようとも悔いはない」
多く、あとに「ば」を伴って)もし。仮に。
「―汝此の国をらば、必ずそこなひやぶる所多けむとおもふ」〈神代紀・上〉
[補説]語源はハ行四段活用の動詞「たとふ」の連用形と推測されるが、「たとふ」の確かな例は見当たらない。漢文訓読系の語とされる。
[類語]たとえもし仮にもしかよしんばよしやもしも万一まんいち万一ばんいち万が一万万一もしやもしかしたらもしかするとひょっとするとひょっとしたらひょっとしてあるいはもしかしてどうかすると下手すると一つ間違えばことによるとあわよくばまかり間違うよもやまさか万万ばんばん夢かうつつ図らずもはしなくはしなくも思いがけず思いも寄らない思いのほか心外突然唐突案に相違する意表を突く意表予想外意想外ゆくりなくまぐれひょんなひょっとゆくりなし我にもなく期せずして悪くすると事と次第による事によるとともするとややもすれば何かにつけ何かと言えば折に触れてもしくははたまたないし偶然たまさか時としてかも知れない思わず思わず知らず我知らず知らず知らず折もあろうに折悪しく慮外存外望外

け‐りょう〔‐リヤウ〕【仮令】

《たとえば、たといの意の漢語「仮令」を音読みにした語》
[副]
たとえば。
「―郭公ほととぎすなどは、山野を尋ね歩きて聞く心を詠む」〈無名抄
たとい。かりに。
「―仏といふは…と知りたりとも」〈正法眼蔵随聞記・二〉
およそ。
「―案じ候ふに、内裏に参り集まる兵ども、その数候ふといふとも」〈保元・中〉
(多くあとに「ばこそ」を伴って)たまたま。さいわい。
「―わしがここに居たればこそ」〈伎・韓人漢文〉
[名・形動ナリ]かりそめのこと。いいかげんなこと。また、そのさま。
「商ひは―にして、明け暮れ男自慢」〈浄・盛衰記

たとえ〔たとへ〕【仮令/縦令/縦え】

[副]《「たとい」の音変化か》「たとい(仮令)1」に同じ。「―親友でも許せない」「―むだになってもやってみよう」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「仮令」の意味・読み・例文・類語

け‐りょう‥リャウ【仮令】

  1. ( 「け」「りょう」はそれぞれ「仮」「令」の呉音 )
  2. [ 1 ] 〘 副詞 〙 「たとい」「たとえ」などと訓読される、「仮令」という字の音読。多く、言い出し、書き出しに用いる。
    1. 条件句の冒頭に用いて、順接・逆接の接続助詞と呼応する。たとい。かりに。よしんば。
      1. [初出の実例]「市女笠非禁制物。仮令雖禁物看督長放免・別当下人破却、太奇恠也」(出典:小右記‐長和三年(1014)四月二一日)
    2. 物事を説明するために、具体的な例を提示するのに用いる。たとえば。たとえてみると。
      1. [初出の実例]「或為農祷歳、或為旱祈雨、至災害荐有徴応。仮令大和、大神広瀬、龍田、賀茂、穴師等大神是也」(出典:類聚三代格‐一・貞観一〇年(868)六月二八日)
    3. 物事の全体を大きくつかみ、概観するのに用いる。およそ。たいがい。一体。
      1. [初出の実例]「参加者、仮令可五万騎」(出典:吾妻鏡‐治承四年(1180)九月二九日)
      2. 「仮令(ケリャウ)、その所に詠みて体ある物をば取りて付くべし」(出典:吾妻問答(1467頃))
    4. ( 下に「…ばこそ」を伴うことが多い ) 偶然。さいわいにして。都合よく。
      1. [初出の実例]「仮令(ケリャウ)赦に、あふて、帰でこそあれ、いそぎ洛へ帰りたりとも、何の益も、あるまいぞ」(出典:三体詩素隠抄(1622)一)
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 ) かりそめのこと。いいかげんなこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「以仮令算術載巨多未進之条、亀毛空花事歟」(出典:東大寺文書‐四ノ一・保元二年(1157)五月日・東大寺三綱陳状案)

仮令の補助注記

読みとしては、一三世紀後半頃から音読「ケリャウ」が増加したと推測されており、それまではは「タトヒ」、は「タトヘバ」「タトヒ」が有力であったと考えられている。並びに名詞用法の読みは音読説が有力である。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「仮令」の読み・字形・画数・意味

【仮令】たとい(ひ)

かりに。〔史記、張儀伝〕張儀曰く、~臣、王のを奉じて楚にす。楚、何ぞ敢て誅を加へん。假令(たとひ)臣を誅すとも、秦の爲に黔中(けんちゅう)の地を得ば、臣の上願なり。

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