け‐りょう ‥リャウ【仮令】
[1] 〘副〙 「たとい」「たとえ」などと訓読される、「仮令」という字の
音読。
多く、言い出し、書き出しに用いる。
①
条件句の冒頭に用いて、順接・逆接の
接続助詞と呼応する。たとい。
かりに。よしんば。
※小右記‐長和三年(1014)四月二一日「市女笠非
二禁制物
一。仮令雖
二禁物
一、
看督長・
放免・別当下人破却、太奇恠也」
② 物事を説明するために、具体的な例を提示するのに用いる。たとえば。たとえてみると。
※三代格‐一・貞観一〇年(868)六月二八日「或為
レ農祷
レ歳、或為
レ旱祈
レ雨、至
レ排
二災害
一荐有
二徴応
一。仮令大和、
大神、
広瀬、龍田、
賀茂、穴師等大神是也」
③ 物事の全体を大きくつかみ、概観するのに用いる。およそ。たいがい。一体。
※
吾妻鏡‐治承四年(1180)九月二九日「参加者、仮令可
レ及
二五万騎
一」
※
吾妻問答(1467頃)「仮令
(ケリャウ)、その所に詠みて体ある物をば取りて付くべし」
④ (下に「…ばこそ」を伴うことが多い) 偶然。さいわいにして。都合よく。
※三体詩素隠抄(1622)一「仮令(ケリャウ)赦に、あふて、帰でこそあれ、いそぎ洛へ帰りたりとも、何の益も、あるまいぞ」
[2] 〘名〙 (形動) かりそめのこと。いいかげんなこと。また、そのさま。
※
東大寺文書‐四ノ一・保元二年(1157)五月日・東大寺三綱陳状案「以
二仮令算術
一注
二載巨多未進
一之条、亀毛空花事歟」
[
補注]読みとしては、一三世紀後半頃から音読「ケリャウ」が増加したと推測されており、それまでは①は「タトヒ」、②は「タトヘバ」「タトヒ」が有力であったと考えられている。③④並びに名詞用法の読みは音読説が有力である。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「仮令」の意味・読み・例文・類語
け‐りょう〔‐リヤウ〕【仮▽令】
《たとえば、たといの意の漢語「仮令」を音読みにした語》
[副]
1 たとえば。
「―郭公などは、山野を尋ね歩きて聞く心を詠む」〈無名抄〉
2 たとい。かりに。
「―仏といふは…と知りたりとも」〈正法眼蔵随聞記・二〉
3 およそ。
「―案じ候ふに、内裏に参り集まる兵ども、その数候ふといふとも」〈保元・中〉
4 (多くあとに「ばこそ」を伴って)たまたま。さいわい。
「―わしがここに居たればこそ」〈伎・韓人漢文〉
[名・形動ナリ]かりそめのこと。いいかげんなこと。また、そのさま。
「商ひは―にして、明け暮れ男自慢」〈浄・盛衰記〉
たとえ〔たとへ〕【仮=令/縦=令/▽縦え】
[副]《「たとい」の音変化か》「たとい(仮令)1」に同じ。「―親友でも許せない」「―むだになってもやってみよう」
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普及版 字通
「仮令」の読み・字形・画数・意味
【仮令】たとい(ひ)
かりに。〔史記、張儀伝〕張儀曰く、~臣、王の
を奉じて楚に
す。楚、何ぞ敢て誅を加へん。假令(たとひ)臣を誅すとも、秦の爲に黔中(けんちゅう)の地を得ば、臣の上願なり。字通「仮」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報