改訂新版 世界大百科事典 「五ヶ所湾」の意味・わかりやすい解説
五ヶ所湾 (ごかしょわん)
三重県志摩半島南部にあるリアス式の湾入。楓江(ふうこう)湾とも称され,緑の山に囲まれた紺碧の湾入は雄大な太平洋と相まって伊勢志摩国立公園の一部をなしている。沿岸は南伊勢町の旧南勢町で,田曾浦,宿浦,下津浦,五ヶ所浦,迫間浦,礫(さざら)浦,相賀(おうか)浦などの漁村が発達し,田曾浦,宿浦は遠洋漁業の基地となっている。北に山を負い,南は黒潮が洗うため温暖で,真珠養殖に母貝として用いるアコヤガイの養殖が行われる。アコヤガイを金網の籠に入れて海中につるす,いわゆる真珠いかだ(タンポ)の点綴する湾の風景はこの地方を代表する景観である。真珠養殖には水温15~25℃,比重1.018~1.024の塩分,干潮時の水深8m以浅,礫の多い海底,淡水の流入の少ないことなどを必要とするが,五ヶ所湾ではこれらを満たし良好な養殖場となっている。また近年はノリ,タイ,ハマチの養殖が増えている。湾内には御所島,獅子島などの小島がある。
執筆者:藤本 利治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報