熊本県中南部、球磨郡(くまぐん)にある村。1815年(文化12)の村絵図にみられた村域を現在も保っている。「五木の子守唄(うた)」で知られるこの村は、村央を北東から南西に延びる石灰岩帯で二分され、北半は古生代堆積(たいせき)岩(秩父(ちちぶ)系)、南半は中生代堆積岩(四万十(しまんと)群)からなるが、地形的には1000~1500メートルの峰々からなる九州山地で占められている。人吉(ひとよし)市からバスの便があるが、道路網の整備(国道445号、県道宮原五木線)に伴って熊本市から乗用車で1時間半の位置にある。人吉(相良(さがら))藩確立以前から、五木谷の地頭家(三十三人衆)支配があり、山地斜面の焼畑農業(麦、アワ、アズキ、サツマイモ、サトイモ、大豆、陸稲)を中心に展開した旦那(だんな)・名子(なご)関係は昭和20年代後半まで続いた。面積252.92平方キロメートル、人口931(2020)。
[山口守人]
漢方などで薬用にする5種類の木。「ごもく」ともいう。文献によりその種類は一定せず、(1)ウメ、ヤナギ、モモ、クワ、スギ、(2)クワ、エンジュ、モモ、コウゾ、ヤナギなどさまざまである。これらを煎(せん)じて薬用とし、五木湯(ごもくゆ)という。一説に、脚気(かっけ)に効くという。また、江戸時代、藩主が伐採を禁じた5種類の木、すなわち停止木(ちょうじぼく)、留木(とめぎ)をいい、多くは常緑樹や有用材であったが、藩によってその種類は異なることがあり、また七木、九木のところもあった。また、賭博(とばく)の一種をいうが、これは古く中国の博打(ばくち)の樗蒱(ちょぼ)で、5個の木製の賽(さい)を用いたところからといい、また、賭博の賽を五木でつくったところからともいう。
[藁科勝之]
熊本県中南部,人吉盆地の北部に位置する球磨(くま)郡の村。人口1205(2010)。全域が急峻な九州山地に含まれ,平地はきわめて少ない。五木川が南流し,西部山地に発する小川と合流して川辺川になる。頭地を中心とした山村で,村の起源は木地屋集団の定着によるとも,平家の落人が住みついたともいわれる。江戸時代は相良藩領で,33人の地頭が村を支配した。昭和20年代までは焼畑農業が盛んであったが,昭和30年代の高度成長期に植林が進み,今はほとんどみられなくなった。山林が村域の9割以上を占めるため林業が基幹産業で,材木,たけのこ,シイタケ,雑穀,茶などを産する。《五木の子守唄》の発祥の地として全国に知られ,太鼓踊,棒踊などの民俗芸能も行われる。縄文時代の頭地遺跡などがある。
執筆者:松橋 公治
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…人吉盆地の中心にある人吉市は鎌倉時代以来の古い城下町で,焼酎,木材,茶,栗を産するほか,近年電気機器などの進出がみられる。奥地に平家落人伝説をもつ五家荘や九州第2の規模の川辺川ダム建設計画のある五木村がある。球磨川下りは人吉温泉,球泉洞とともに人吉観光の中心をなしている。…
※「五木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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