五木(読み)ゴボク

デジタル大辞泉 「五木」の意味・読み・例文・類語

ご‐ぼく【五木】

5種の木。特に江戸時代、用材の確保のために藩の領主によって伐採を禁じられた木。梅・桃・柳・桑・杉、また、えんじゅ・柳・桃・桑・梶の木など、種々の説がある。ごもく。

ご‐もく【五木】

ごぼく(五木)

いつき【五木】

熊本県南部、球磨くま郡の地名。九州山地中にある。

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精選版 日本国語大辞典 「五木」の意味・読み・例文・類語

ご‐ぼく【五木】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 五種の木。特に江戸時代、領主が伐採を禁じた有用樹(保護樹)。七木、九木を禁木に指定した藩もあるが、尾張藩の木曾山では、檜(ひのき)、椹(さわら)、明檜(あすひ)、𣜌子(ねずこ)高野槇(こうやまき)の五木を停止木(ちょうじぼく)として厳しく取締った。「県令須知」には、桑、槐(えんじゅ)、楡(にれ)、柳、楮(こうぞ)を五木としているが、これは木性に毒のない樹木を指す。ごもく。
    1. [初出の実例]「五木八草之湯治」(出典:庭訓往来(1394‐1428頃))
    2. 「許可なしに村民が五木を伐採することは禁じられてあった」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部)
    3. [その他の文献]〔孔子家語‐刑政〕
  3. 博打(ばくち)の一つ。樗蒲(かりうち)で用いる五子(ごし)。転じて、ばくちをいう。〔李白‐贈別従甥高五詩〕

ご‐もく【五木】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「もく」は「木」の呉音 )
  2. ごぼく(五木)〔運歩色葉(1548)〕
  3. ごもくゆ(五木湯)」の略。
    1. [初出の実例]「湯治始、〈非湯山湯、只五木也。〉七ケ日可沐浴也」(出典:看聞御記‐永享一〇年(1438)一〇月二一日)

いつき【五木】

  1. 熊本県南部、球磨川(くまがわ)支流川辺川上流の地名。平家の落人伝説や「五木の子守唄」で知られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五木」の意味・わかりやすい解説

五木(村)
いつき

熊本県中南部、球磨郡(くまぐん)にある村。1815年(文化12)の村絵図にみられた村域を現在も保っている。「五木の子守唄(うた)」で知られるこの村は、村央を北東から南西に延びる石灰岩帯で二分され、北半は古生代堆積(たいせき)岩(秩父(ちちぶ)系)、南半は中生代堆積岩(四万十(しまんと)群)からなるが、地形的には1000~1500メートルの峰々からなる九州山地で占められている。人吉(ひとよし)市からバスの便があるが、道路網の整備(国道445号、県道宮原五木線)に伴って熊本市から乗用車で1時間半の位置にある。人吉(相良(さがら))藩確立以前から、五木谷の地頭家(三十三人衆)支配があり、山地斜面の焼畑農業(麦、アワ、アズキサツマイモサトイモ、大豆、陸稲)を中心に展開した旦那(だんな)・名子(なご)関係は昭和20年代後半まで続いた。面積252.92平方キロメートル、人口931(2020)。

[山口守人]



五木
ごぼく

漢方などで薬用にする5種類の木。「ごもく」ともいう。文献によりその種類は一定せず、(1)ウメヤナギ、モモ、クワスギ、(2)クワ、エンジュ、モモ、コウゾ、ヤナギなどさまざまである。これらを煎(せん)じて薬用とし、五木湯(ごもくゆ)という。一説に、脚気(かっけ)に効くという。また、江戸時代、藩主が伐採を禁じた5種類の木、すなわち停止木(ちょうじぼく)、留木(とめぎ)をいい、多くは常緑樹や有用材であったが、藩によってその種類は異なることがあり、また七木、九木のところもあった。また、賭博(とばく)の一種をいうが、これは古く中国の博打(ばくち)の樗蒱(ちょぼ)で、5個の木製の賽(さい)を用いたところからといい、また、賭博の賽を五木でつくったところからともいう。

[藁科勝之]

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改訂新版 世界大百科事典 「五木」の意味・わかりやすい解説

五木[村] (いつき)

熊本県中南部,人吉盆地の北部に位置する球磨(くま)郡の村。人口1205(2010)。全域が急峻な九州山地に含まれ,平地はきわめて少ない。五木川が南流し,西部山地に発する小川と合流して川辺川になる。頭地を中心とした山村で,村の起源は木地屋集団の定着によるとも,平家の落人が住みついたともいわれる。江戸時代は相良藩領で,33人の地頭が村を支配した。昭和20年代までは焼畑農業が盛んであったが,昭和30年代の高度成長期に植林が進み,今はほとんどみられなくなった。山林が村域の9割以上を占めるため林業が基幹産業で,材木,たけのこ,シイタケ,雑穀,茶などを産する。《五木の子守唄》の発祥の地として全国に知られ,太鼓踊,棒踊などの民俗芸能も行われる。縄文時代の頭地遺跡などがある。
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百科事典マイペディア 「五木」の意味・わかりやすい解説

五木[村]【いつき】

熊本県球磨(くま)郡,球磨川の支流川辺川上流の九州山地中にある村。藩政時代地頭が支配,隔絶された山村のため封建制度が根強く続き,哀切な《五木の子守歌》は名子・被官制への諦(てい)観から生まれた歌という。茶,クリ,シイタケを産するが,かつての焼畑農業はなくなった。近年発電・林業・観光・道路開発が進み著しく変容した。252.92km2。1205人(2010)。
→関連項目川辺川ダム九州中央山地国定公園

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世界大百科事典(旧版)内の五木の言及

【熊本[県]】より

…人吉盆地の中心にある人吉市は鎌倉時代以来の古い城下町で,焼酎,木材,茶,栗を産するほか,近年電気機器などの進出がみられる。奥地に平家落人伝説をもつ五家荘や九州第2の規模の川辺川ダム建設計画のある五木村がある。球磨川下りは人吉温泉,球泉洞とともに人吉観光の中心をなしている。…

※「五木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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