井上流(京舞)(読み)いのうえりゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「井上流(京舞)」の意味・わかりやすい解説

井上流(京舞)
いのうえりゅう

上方舞(かみがたまい)のうちの一つ、京舞とよばれる。近衛(このえ)家に仕え、舞を身につけた井上サト(初世井上八千代。1767―1854)を流祖とする。芸、人ともに優れた者が家元を継ぐ習わしであり、5世を数える。その舞の系列には、おもに御所風の上品な立居振舞(たちいふるまい)や白拍子舞(しらびょうしまい)の流れをくむもの、能の金剛(こんごう)流に学ぶもの、人形浄瑠璃(じょうるり)の人形の動きを加味したもの、地唄(じうた)による座敷舞などがあげられ、さらにまたこれらの技法が渾然(こんぜん)一体となって趣(おもむき)を深めている。「都をどり」の振付けから祇園(ぎおん)との結び付きが強固になったことも知られている。歌舞伎(かぶき)畑の作品もあり、地の音楽も地唄のほか義太夫(ぎだゆう)、長唄、常磐津(ときわず)、清元、一中節(いっちゅうぶし)など多種にわたる。特色ある独特の曲も多く、『信乃(しの)』『小栗曲馬(おぐりきょくば)物語』『意見曽我(そが)』などもその一例

[如月青子]

『後藤勝一写真『京舞 井上流』(1984・歩書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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