亜鉛欠乏症

内科学 第10版 「亜鉛欠乏症」の解説

亜鉛欠乏症(微量元素欠乏症)

(1)亜鉛欠乏症(zinc deficiency)
 亜鉛の体内量は約2.5 gであり,その85~90%が筋肉と骨に含まれている.亜鉛の生体内での必要量は1日2.5 mgと考えられるので,吸収率や安全率を見込んで8~16 mgを摂取することが必要である.臓器内の亜鉛は細胞内の金属酵素の構成成分として,炭酸デヒドラターゼカルボキシペプチダーゼアルカリホスファターゼアルコールデヒドロゲナーゼなど現在は70種以上の亜鉛の金属酵素が知られている.また,酵素類とゆるく結びついてその安定化,活性化に関与している.
 亜鉛欠乏症では,成長ホルモンの低下により成長の遅延,味蕾細胞の代謝を障害し味覚障害,急性欠乏状態でみられる四肢末端部,口,鼻,耳の周り,眼瞼,外陰部や肛門周囲にびらん,水疱あるいは膿化疹様皮疹,性腺の発育不全,機能不全,胸腺脾臓,リンパ節の萎縮を伴う免疫機能低下,胎児の発育遅延,奇形の増加,分娩障害,膵臓β細胞のインスリン含量の低下,血中インスリン量の低下による耐糖能低下,神経精神症状,行動異常がみられる.経静脈高カロリー輸液時に,亜鉛欠乏による皮疹,創傷治癒遅延,免疫能低下,うつ状態,味覚障害,食欲不振などの障害がみられる.腸性肢端皮膚炎(acrodermatitis enteropathica)は,先天性亜鉛吸収障害で,難治性下痢,皮疹,脱毛を主徴とし,血液,尿,毛髪の亜鉛濃度の低下や,血清アルカリホスファターゼ活性の低下がみられる.亜鉛の大量投与で症状は改善する.
 亜鉛はカキ(貝)に多く,100 gあたり40~70 mgが含まれている.また,小魚抹茶ココア,ゴマ,アーモンドなどの種実類,海草玄米,そば,麸,きな粉卵黄肝臓,しいたけなどにも多く含まれている.軽症では食事指導で治るが,約半数の患者が,硫酸亜鉛やグルコン酸亜鉛の内服療法が必要になる.[武田英二・山本浩範]

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栄養・生化学辞典 「亜鉛欠乏症」の解説

亜鉛欠乏症

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