交換力(読み)こうかんりょく(英語表記)exchange force

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

交換力
こうかんりょく
exchange force

2個の粒子に働くで,位置,スピン荷電などの交換効果を伴うものをいう。古典力学にはなく,量子力学に特有な力である。たとえば,原子核の中で陽子中性子を結びつける核力は,π中間子などの交換によって生じる複雑な力であり,単に2核子間の距離だけの関数として表わすことはできない。核力を媒介する中間子は,2核子の間で荷電や角運動量を選ぶことができるから,種々の交換力が重要な役割を果す。位置交換力をマジョナラ型,スピン交換力をバートレット型,荷電交換力をハイゼンベルク型という。また化学結合の量子力学的理論でも,交換力は重要である。

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デジタル大辞泉の解説

こうかん‐りょく〔カウクワン‐〕【交換力】

素粒子間で、粒子をやりとりする形で及ぼしあう力。素粒子の位置・スピン・荷電が交換される。

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世界大百科事典 第2版の解説

こうかんりょく【交換力 exchange force】

量子力学に現れる特殊な力。核子(陽子と中性子の総称)と核子の間に働く核力は,単に引き合ったり,あるいは退け合うだけでなく,両者のスピンアイソスピン(荷電状態)を取り替えるという作用も含む。このようなスピンやアイソスピンなどの交換効果を伴う力を交換力という。例えば陽子と中性子が衝突するとき,進路が曲げられるだけでなく,陽子が中性子に変わり,中性子が陽子となって散乱されることがある。これは荷電交換型の力が働いたためである。

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大辞林 第三版の解説

こうかんりょく【交換力】

二個の核子が互いに位置座標・スピン・電荷を交換する形をとって作用しあうような、量子力学に特有な力。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

交換力
こうかんりょく
exchange force

原子・分子、原子核、素粒子などの微視的世界において、相互作用をしている2粒子間で荷電、スピン、位置の交換をもたらす力。相互作用している粒子の状態によって変わる力で、古典理論では現れない量子論に特有の力である。たとえば、陽子と中性子の間に荷電π(パイ)中間子π+とπ-が交換されて生ずる核力では、陽子pと中性子nの間で荷電の交換がおこる。核子(pとnの総称)間にπ中間子が交換されると、π中間子は角運動量を運ぶので、核子のスピン(固有角運動量)の向きを変化させうる。生じる核力ポテンシャルは、2核子間の相対距離の関数に、荷電やスピンの交換を与える演算子を乗じた形となる。これはまた、位置交換の演算子を含む形でも表すことができる。素粒子間の相互作用で、荷電やスピンのような粒子固有の量子状態の変化をもたらすものは、広い意味で交換力ともいえる。原子や分子の間の力については、構成粒子間の力は相対距離のみによるクーロン力であるが、電子はパウリの原理(パウリの排他律ともいう。一つの量子状態には1個の電子しか入れないという性質で、電子系の全波動関数は電子の入れ替えに対して反対称でなければならない)に従うので、原子間に働く力は電子系の状態によって変化する。たとえば、水素分子では、二つの電子の合成スピンが0(一重状態)なら引力的だが、1(三重状態)では斥力的となる。このような力は、スピン交換演算子を用いて記述できる交換力である。[玉垣良三]

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