国民の基本的人権の侵犯を監視,救済し,人権思想の普及高揚に努めることを使命とする者。人権擁護委員法(1949公布)に基づいて設けられた。人権擁護委員は市町村(特別区を含む)ごとに置かれ,法務大臣が,市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ)が推薦した者の中から,弁護士会や都道府県人権擁護委員連合会の意見を聞いて,委嘱する。その任期は3年で再選も可能であるが,当該区域に選挙権を有する住民で,人格識見高く,広く社会の実情に通じ,人権擁護について理解のある者でなければならない。その定数は全国を通じて2万人を超えないものとされ,1983年現在,1万1500人の人権擁護委員がおり,農林漁業関係者(約3000人),無職(その多くは停年退職者,約2900人),宗教関係者(約1100人),商業(約750人),団体役員(約450人),その他となっている。その職務は,人権思想の普及高揚に努め,人権侵犯事件については,その救済のために調査と情報の収集をし,法務大臣への報告,関係機関への勧告などの処置を講ずることにある。しかし現実には,住民からの〈よろず相談〉的性格が強く,民生委員や弁護士などとの協力のもと,相談内容をより分けた後に,人権上の問題についての調査に入っていくことが多い。それは,国家権力による人権の侵犯だけでなく,私人間における人権侵犯問題(顔役や雇用主が住民や被雇用者の人権を犯す場合やいわゆる村八分など)と広くかかわっているからである。
また,人権の擁護に関する事項を管掌する法務省の内局に人権擁護局がある。その所掌事務は,人権侵犯事件の調査や情報収集に関する事項,民間における人権擁護運動の助長に関する事項,人権擁護委員に関する事項,人身保護に関する事項,貧困者の訴訟援助に関する事項,その他人権擁護に関する事項である。とくに人権侵犯事件の調査は重要で,人権侵犯事件処理規程(1961)に従って,人権擁護局の指揮のもとに法務局人権擁護部(東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松)および地方法務局の人権擁護課がつかさどる。人権擁護局の内部組織としては,総務課,調査救済課,人権啓発課がある。
執筆者:黒田 満
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国民の基本的人権が侵犯されることのないよう監視し、もし侵犯された場合その救済のための処置をとり、あわせて人権思想の普及高揚に努めることを使命として、人権擁護委員法(昭和24年法律139号)に基づいて設けられ、各市町村(特別区を含む)に置かれている。国家権力による人権侵犯については、人身保護法や刑事訴訟法がその防止や救済を図っているが、法的手続によらない事実上の救済を求める場合とか、とくに私人間における人権侵犯については、その救済機関として法務省に人権擁護局を、その管理下に人権擁護委員を置いて、「太陽の下でおこりうるあらゆる人権問題」に対処しようとしている。たとえば、いわゆるボスや雇用主が市民や被雇用者の人権を侵犯した場合とか、村ハチブが行われた場合などに、被侵犯者救済の求めに応じて、人権擁護の任にあたることが期待されている。法務大臣が、市町村長の推薦した者のなかから、知事・弁護士会などの意見を聞いて、市町村ごとに人選し委嘱する。任期は3年で、人権侵犯事件について、調査と情報の収集をし、法務大臣に報告し、関係機関への勧告などの処置を講ずる。区域ごとに協議会を組織し、都道府県ごとに連合会を設けて、職務の連絡調整を図る。また、都道府県の連合会は全国人権擁護委員連合会を組織することになっている。
[池田政章]
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