人間関係管理(読み)にんげんかんけいかんり(英語表記)human relations management

日本大百科全書(ニッポニカ) 「人間関係管理」の意味・わかりやすい解説

人間関係管理
にんげんかんけいかんり
human relations management

人間関係論を基礎にした経営管理の諸施策の総称人間関係論によれば、組織の有効性を左右する鍵(かぎ)は心情sentiment(満足・不満足のような心的態度)であり、それは個人の来歴と職場の人間関係によって規定され、モラールmorale(勤労意欲)となって現れるから、人間関係の改善ないしモラール向上が人間関係管理の中心になる。その具体策は、(1)好意的な態度を形成させるように人間を扱う社会的技能を重視した監督者・管理者の教育訓練、(2)職場のコミュニケーションをよくするための職場懇談会の設置、(3)下からの問題提起によって組織構成員の自己発現欲を満たす提案制度の採用、(4)全組織的なコミュニケーションのための手段としての社内報の発行、(5)上司部下の対面的コミュニケーションをよくするための面接制度の実施、(6)悩みごとの解消によって仕事に専念できる心的態度を形成させるための、専門家(ケース・ワーカーなど)による従業員カウンセリング制度の設置、(7)人間関係を円滑にするための各種レクリエーション施設の充実などである。全体に共通する特色は、さまざまな方向(上向、下向、水平的など)と手段によるコミュニケーションの重視であり、相互の全体状況的理解が好意的心情の形成に有益であるとの人間関係論の理論内容が生かされている。

 人間関係管理に対しては、温室のような過保護状態をつくりだす甘やかし管理であるとの批判がある。これは基本的には、受動的人間像を仮定する人間関係論そのものへの批判である。しかし、人間の一面に受動的社会性がある限り、人間関係管理は必要であるといわなければならない。

[森本三男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人間関係管理」の意味・わかりやすい解説

人間関係管理
にんげんかんけいかんり
human relationship management

経営体の従業員を疎外や「歯車の意識」から解放することによって,彼らの労働意欲を高め,みずから進んで経営体に協力するようにその人間関係を民主的に創出していこうとする管理方法。この方法は経営学者の E.メーヨーや F.J.レスリスバーガーらが 1927~32年に行なったホーソン実験の成果に基づいて案出したものであり,従来テーラー・システムに代表される科学的管理法に代る新しい管理方法であった。彼らはホーソン実験を通じて,労働生産性を規定する要因には,作業環境や労働条件のほかに,労働者の労働意欲や感情のような主体的な態度,つまりモラールがあること,しかもこのモラールは,技術的,経済的目的を達成するために論理的,合理的に構成されたフォーマルな組織の背後にあって,非合理的な人間感情に基づいて自発的,自然発生的に形づくられるインフォーマルな諸集団によって大きく左右されることを明らかにした。したがって,この管理方法は,能率の論理に基づくフォーマルな組織と,感情の論理に従うインフォーマルな組織とを区別し,こうした組織上の区別を前提として生産性の増大と人間関係の安定とをはかろうとするものである。この方法の発見以降,小集団の再発見としてアメリカにおける社会集団論や組織論に多くの影響を与えるとともに,産業社会学においては,W.L.ウォーナー,W.F.ホワイト,T.モーア,P.F.ドラッカーなどによって一層発展させられていった。

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