仕込(読み)しこみ

精選版 日本国語大辞典 「仕込」の意味・読み・例文・類語

し‐こみ【仕込】

〘名〙 (動詞「しこむ(仕込)」の連用形の名詞化)
① 教えて、身につくようにすること。しつけ。教育。
※評判記・満散利久佐(1656)浮船「道しれる者には、よくしみやすきかたぎ也、男のしこみよし」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「叔母さんの仕込みだけ有って、縹致は好くっても品行は方正で」
② 内部に装置すること。中に込めてつくること。また、そのもの。多く、刀身を杖の中に装置すること、また、その杖のことをいう。
※浮世草子・諸国心中女(1686)五「あしもとに九平かつきししこみの杖の有しを取持て」
歌舞伎幼稚子敵討(1753)四「トお町仕込の刀を抜いて、きっと身構へする」
③ 商店、飲食店などで、商品や材料などをあらかじめ買い入れたり手を加えととのえたりして、すぐ売りに出せるように準備すること。また、その準備、用意。一般的に、用意、準備の意にも用いる。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)四「小紅屋といふ人大分仕込(シコミ)して世の自由をたしぬ」
※歌舞伎・彩入御伽草(1808)蛍ケ沼の場「薬の仕込(シコ)みはしっかりだ」
④ 遊里で、客と遊女が深い仲になるようにしむけていくこと。
※評判記・色道大鏡(1678)一「仕込(シコミ) 男女共に、あひそめて以後、懇志なるやうに手だてを尽すを、しこみといふ」
⑤ 酒、みそしょうゆなどの原料を調合して、醸造するように桶(おけ)などにつめこんでおくこと。また、鮨(すし)などを、味が出るように漬けておくこと。ならすこと。
浄瑠璃・義経千本桜(1747)三「折悪ふ彌助殿も方々から鮓の誂(あつらへ)。仕込(シコミ)の桶がたるまいと明き桶取りにいかれました」
⑥ 子どもをつくること。懐妊させること。
※歌舞伎・偽織大和錦(お峰慶十郎)(1876)大詰「親類共や此伯父に安心させると思ふなら、どうぞ仲よく一つに寝て、早く仕込(シコ)みをしてくりゃれ」
読本・南総里見八犬伝(1814‐42)九「唐山元明の才子等が稗史には、おのづから法則あり〈略〉襯染は下染にて、此間にいふしこみの事也」
花柳界で、将来、芸妓になるために諸芸を教え込まれている少女。仕込っ子。
※評判記・色道大鏡(1678)二「たけ過たる仕込(シコミ)には約束し、初てあふべき日、俄に隙入よしにてゆかざるもおもしろし」
⑨ (場所などを示す名詞に付いて接尾語的に用いる。多く「じこみ」の形をとる) その場所で身につけたこと、得たこと、作られたこと、また、そのものの意を表わす。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一〇「独逸歟さてはまた仏蘭西製造(ジコミ)歟」
芝居開演の準備。また、その費用。芝居のもとで。
落語で、話の初めにしておく説明、または伏線
地方巡業などに際して編成する一座をいう。
⑬ 相場で、清算市場に新規に売建てまたは買建てをすること。

し‐こ・む【仕込】

(「し」はサ変動詞「する」の連用形)
[1] 〘他マ五(四)〙
① 教えて身につけさせる。教え込む。しつける。
※評判記・色道大鏡(1678)一五「跳らしてみんとすれど、もとよりしこまぬ芸なれば、少(すこし)もはたらかず」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「一子文三に学問を仕込む」
② 工夫して中に入れてつくる。内部に装置する。多く、刀身を杖の中にはめ込む場合に用いる。
※浄瑠璃・出世景清(1685)一「になひぼうにしこみたるくだんのあざ丸するりとぬいてさしかざし」
③ 商店などで、すぐ売りに出せるように品物を買い入れておく。仕入れる。また、飲食店などで、原料、材料などにあらかじめ手を加えととのえて、すぐ商品として使えるように準備する。物をあらかじめ配置したり、すぐ使えるように用意したりしておく意にもいう。
※南方録(17C後)台子「さて仕込たる茶碗を風炉前へをろし」
※滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)一二「こりゃはあやすいもんでござらあ。かういうことならまっとしこんでくればよかったあもし」
④ 酒、みそ、しょうゆなどを醸造するために、原料を調合して、桶(おけ)などにつめこむ。
※合巻・金儲花盛場(1830)上「甘酒 しこみしは三石一斗あまざけの買人はいつも富士の山ほど」
⑤ 事にそなえて計画や準備をととのえる。
(イ) 考えを練って手段をたてる。
※浮世草子・風流西海硯(1735)三「賤しき太鼓持にやつし、是迄仕込みし所に、謀(はかりごと)顕はれ」
(ロ) 知識などを身につける。また、後のことにそなえ身につけておく。
※読本・南総里見八犬伝(1814‐42)九「こは後に大関目の、妙趣向を出さんとて、数回前より、その事の、起本来歴をしこみ措(おく)也」
⑥ 内側へはいり込む。侵入する。
※浮世草子・男色大鑑(1687)二「中井玄番が敵うち、同名勝彌なるぞ、新五右衛門出合(いであへ)と、寝間口まで仕込(シコミ)
[2] 〘他マ下二〙
① まわりを取り囲んで構えつくる。垣などをまわりにめぐらす。
※竹取(9C末‐10C初)「人寄り来まじき家を作りて、かまどを三重にしこめて、たくらを入れ給ひつつ」
② 外側を物でおおう。
※日葡辞書(1603‐04)「Xicometayumi(シコメタユミ)〈訳〉うるしを塗り、糸を捲いた弓」

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