仮装売買,仮装離婚などのように,当事者が通謀して,内心の意思と合致しないある具体的な法律効果を発生させるための法律行為をする場合に,その法律行為を仮装行為という。虚偽表示が法律行為の構成要素である意思表示に関するものであるのに対して,仮装行為は法律行為そのものに関するものである。仮装売買は売買する意思がないのに当事者が通謀して売買があったような外形を作出することである。虚偽表示に関する民法94条が適用される代表的な事例である。同条によれば,仮装売買の当事者間では売買の効果を生じない。しかし,買主を真の所有者と誤信して,その者から譲り受けた者のように,善意の第三者に対して,仮装売買の無効を主張することはできない。婚姻や離婚のような身分行為についても仮装行為があるが,とくに問題となるのは仮装離婚である。すなわち,真実離婚する意思がないにもかかわらず,夫婦が合意のうえで離婚届を出す場合である。配偶者の一方の債権者からの強制執行を免れることなどを目的として行われる。離婚の目的が消滅すれば,再び婚姻届を出す合意が背後にあるのが通例であるが,その前に一方の当事者が第三者との婚姻届を出した場合などに,紛争が発生する。多くの学説は,実質的な離婚の意思を欠くから仮装離婚は無効であると解しているが,離婚届を提出する意思がある以上離婚は有効であると解する見解もある。
執筆者:野村 豊弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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