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企業意識 キギョウイシキ

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デジタル大辞泉の解説

きぎょう‐いしき〔キゲフ‐〕【企業意識】

労働者の生活の向上は自分の属する企業の繁栄によるのであり、企業あっての労働者であるとする考え方

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世界大百科事典 第2版の解説

きぎょういしき【企業意識】

労働者が就業先の企業に対してもつ一体感,企業忠誠心などの企業帰属意識をいう。企業意識が強ければ離職・転職も少なく定着性があり,企業の経営方針に協力的で,勤労意欲(モラール)も高い。また労使関係も協調的でかつ安定化する傾向がある。企業意識の状態は労働者の態度調査(モラール・サーベイ)などで明らかにされるが,その指標には企業の経営方針や労働条件に対する満足度,経営幹部や職場の上役に対する信頼性,企業の経営実績や会社に対する評価などが用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

企業意識
きぎょういしき

おもに本工・正社員などの常用労働者が勤務先の企業に対してもつ一体意識。企業帰属意識ともいわれ、労働者の階級意識や組合意識に対比される用語。狭義に、労働者の企業に対する忠誠心や、労働者の雇用と生活は企業の存続と繁栄によって確保されるという考え方をさす場合もある。
 労働者にとって企業とは、雇用契約を結んで労働に従事し、給与その他の所得を得て生活を維持する場である。したがって企業における経営状態は、労働者における労働条件や雇用それ自体と直結する場合が多く、「会社あっての労働者」「会社あっての組合」など、なんらかの程度で労働者が企業との関係において自己の存在を一体的に意識するか、企業活動を自らの生活や組合に優先させて行う態度がみられる。「企業戦士」とか「会社人間」などのことばは、このことを典型的に示すものである。
 こうした企業意識は、個人主義が徹底し、産業別組合や職種別の組合など企業の枠を超えた横断組合が支配的な欧米諸国においては少なく、企業別組合が支配的な日本において顕著にみられる。とくに日本の大企業の労働者においては、企業への一体感と組合への一体感の両者が並存して調和する「二重帰属型」の意識が強く出ていて、一つの特徴をなしている。
 日本の労働者にこのような企業意識が醸成される理由としては、
(1) 終身雇用の慣行、年功賃金・昇進など日本的雇用制度(年功的労使関係)の存在、
(2) 第一次世界大戦以来の経営家族主義的なイデオロギーや、第二次世界大戦中における「労資一体」「労働報国」を理念とした産業報国運動の展開、
(3) 日本では労働市場が企業ごとに封鎖され、労働組合も企業別組合として事実上、経営組織と癒着ないし一体化していて労働者と組合の独立性が保持しにくい、
(4) 企業福祉の充実や、労務政策の一環として使用者側からのヒューマン・リレーションズ(人間関係論)における帰属意識の重視と企業忠誠意識の鼓舞、
などがあげられる。
 とくにヒューマン・リレーションズの導入においては、使用者側は、先端技術導入の受け入れや労働スキル(技術)の向上だけでなく、精神因子までも包摂することを求め、生産性の向上を内発させ、促すものとして、「愛社心」「企業防衛」「労使一体」「経営参加」などのスローガンをたてて、労働者に企業意識の浸透を図ってきた。
 企業意識の問題をどう理解するかについては多方面からのアプローチがあるが、企業意識の醸成が、企業に対する労働者の忠誠心を高め、生産性向上に労働者を動員し、労使関係においても長期にわたって安定要因になるという点では、使用者にとって好ましい心理である。他方、労働組合の視点で理解した場合、労働者の階級意識を弱め、その統一を妨げることに作用するだけでなく、組合分裂や御用組合化のきっかけとなる。
 このような労使の「運命共同体」的な心理を基礎とする企業意識の克服は、久しく日本労働運動における大きな課題とされ、労働組合サイドからは、産業別組合への脱皮のなかで解決されるとか、労働者の資本・経営からの独立とか、労働者自らの権利意識の向上に努めるべきである、などの課題が指摘されてきた。
 ところで、労働者の企業意識や愛社精神を支えていたのは基本的に日本的雇用制度にほかならない。労働者に終身雇用という安心感があり、企業内において年功賃金・昇進=立身出世が保障ないし期待されるからこそ、労働者は「企業人間」になりえたのである。ところが1990年代以降、経済におけるグローバル化の時代を迎えて、アメリカが唱導する「市場主義」が展開されると、企業は生き残りをかけた激しい競争にさらされた。このため企業は、経営資源の集中を図って効率・収益体質の構築に努め、いわゆる「リストラ」の名による解雇や賃金カットの一方で、派遣労働者など非正規労働者を雇い、賃金も成果主義や総量労働制の賃金制度への移行を打ち出している。
 このような企業における合理化政策の実施は事実上、日本的雇用制度を崩すものとなっていて、労働者の会社に対する期待と信頼が薄れるなかで、企業意識も大きく揺らいでいる。
 同時に、労働者の側においても、近年はとくに30~40歳代の中堅の労働者に企業意識からの脱皮を目ざす動きがみられる。彼らは、いわゆる「結果平等」に異を唱えるだけでなく、成果主義や実力主義を肯定してこれに見合う賃金を要求する一方、自立的にキャリア開発に努め、あるいはより高い処遇を求めて転身を図る傾向が強まっている。たとえば日本労働研究機構の調査によれば、よりよい条件や適性を重視して転職を考えている労働者は、男性で43.7%、女性では54.9%にも及んでいる(『構造調整下の人事処遇制度と職業意識に関する調査』1998年)。
 グローバル経済下における企業間の熾烈(しれつ)な「市場競争」のもと、企業における日本的雇用制度の事実上の崩壊、政府による雇用流動化政策や雇用形態の多様化、解雇に伴う労働組合員の減少、さらには企業別組合に対する信頼感の減退などと重なって、企業意識は急速に薄れており、企業において使用者と労働者の対等で自立的な関係をどう構築するかは労使双方の課題となっている。[吉田健二]
『全日本能率連盟人間能力開発センター編・刊『企業帰属意識論の研究』(1978) ▽猪木武徳・連合総合生活研究所編『「転職」の経済学』(2001・東洋経済新報社)』

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