伊勢暴動(読み)いせぼうどう

精選版 日本国語大辞典 「伊勢暴動」の意味・読み・例文・類語

いせ‐ぼうどう【伊勢暴動】

明治九年(一八七六)に起こった、地租改正反対の一揆中、最大の一揆。三重県中心愛知岐阜などに広がり、翌年政府は地租地価の三パーセントから二・五パーセントに引き下げた。

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デジタル大辞泉 「伊勢暴動」の意味・読み・例文・類語

いせ‐ぼうどう【伊勢暴動】

明治9年(1876)に起こった、地租改正反対一揆いっき中、最大の一揆。三重県を中心に愛知・岐阜などに広がり、処罰された者は5万人以上に及んだ。翌年政府は地租を地価の3パーセントから2.5パーセントに下げた。

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改訂新版 世界大百科事典 「伊勢暴動」の意味・わかりやすい解説

伊勢暴動 (いせぼうどう)

1876年11月石代相場の引下げ要求から端を発し,地租改正事業に反対した明治期最大の農民一揆で,三重県を中心に愛知・岐阜・堺各県に及んだ。同年末,三重県山田の米価は1石3円50銭内外であったが,県の示した石代相場は1石5円19銭であった。同年の大雨で被害を受けていた櫛田川デルタ地帯の農民は正米納か,年々の相場で上納するよう嘆願したが区長はこれを県庁に上達しなかった。また,県は地租の一部分の米納を認める方針を示したがこれも正しく農民に伝えられなかった。12月18日租税取立て開始とともに櫛田川デルタ地帯の農民が集合し,これに西岸上流の村々の農民も結集し松阪をめざし行動を開始した。農民たちは村々の戸長宅や三井銀行などを襲撃し,42ヵ村総百姓の名で,地価の2等引下げ,米納の許可,県税の廃止の3ヵ条よりなる嘆願書を県に提出して解散した。一方,同日夕方から松阪以北の農民が蜂起し,一揆は一志・安濃両郡などにひろまった。県は数千人の士族を急募して津の市街を守った。このころから農民の行動は嘆願から打毀(うちこわし),焼払いの暴動に転化した。山田・伊賀方面でも一揆の攻撃が続いた。20日から21日にかけて,当時地租改正事業が最も重要な段階にあった北勢(北伊勢)が一揆の中心地となる。一揆は北勢4郡を荒らし,木曾川揖斐川を越えて愛知・岐阜両県にも及んだ。しかし21日から23日にかけて巡査,士族徴募隊,鎮台兵などによって鎮圧される。一揆鎮圧後,一揆によって焼かれ,県から手当の出た者652人,処刑された者5万人余を数えた。この一揆は規模と伝播力の大きさで政府を震撼(しんかん)させ,翌年1月の減租の詔を引き出す大きな力となった。その結果,地租は地価3%から2.5%へ減租となった。〈竹槍でどんと突き出す2分5厘〉とは当時のことを歌ったものである。
地租改正 →地租改正反対一揆
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊勢暴動」の意味・わかりやすい解説

伊勢暴動
いせぼうどう

1876年(明治9)12月、三重県を中心に愛知、岐阜、堺(さかい)(現奈良)県へも波及した明治期最大規模の地租改正反対一揆(いっき)。この年11月より、三重県飯野(いいの)郡魚見(うおみ)村(松阪市)ほかの農民が、米価下落のもとで、地租改正を不満として地位等級の引下げ、石代納(こくだいのう)米価の改訂などを要求する嘆願を繰り返していたが、12月19日ついに蜂起(ほうき)した。この動きはただちに三重県下ほぼ全域に拡大し、さらに隣接県へも波及した。この過程で、嘆願は激烈な打毀(うちこわし)、焼打ちに転化し、とくに四日市、桑名を中心に北勢一帯(三重、朝明(あさけ)、桑名、員弁(いなべ)4郡)では、官と名のつくいっさいのものが徹底した攻撃対象となった。県、政府は、士族を徴募し鎮台兵をも出動させて鎮圧にあたり、12月24日には完全に終息させた。処刑者は絞首刑1人を含め5万人を超えた。

 この一揆は、茨城県の一揆とともに、政府に衝撃を与え、翌77年から地租率は100分の3から100分の2.5に引き下げられた。

[近藤哲生]

『『伊勢暴動(明治九年)顛末記』(1934・三重県内務部/復刻版・1981・三重県図書館協会)』『土屋喬雄・小野道雄編著『明治初年農民騒擾録』(1953・勁草書房)』『大江志乃夫著『明治国家の成立』(1959・ミネルヴァ書房)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「伊勢暴動」の解説

伊勢暴動
いせぼうどう

三重大一揆とも。1876年(明治9)12月,三重県飯野郡(現,松阪市の一部)でおこった農民闘争史上最大の一揆。地租改正実施に際し,石代納(こくだいのう)米価の引下げ,米納の是認,地租改正入費の官費負担などを要求して農民が蜂起し,愛知・岐阜両県にまで拡大し,処罰者5万人を数えた。旧度会(わたらい)県域の一揆が戸長層も参加する惣百姓強訴(ごうそ)による地租改正反対一揆であったのに対し,旧三重県,岐阜・愛知県域に展開した一揆は,官有施設と区・戸長層に対する徹底した攻撃と,諸帳簿の破棄を中心とした新政反対一揆としての性格を強めた。

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